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コラム

グローバル原価編

第2回『原価低減目的での「グローバル原価」』【本気で連結業績を向上するための経営管理】

グローバル原価編

グローバルでの=拠点横断での原価低減

今や各生産拠点個別での原価改善活動にも「やりつくし感」があり、QCサークル活動が停滞又は形骸化している例も少なくありません。また、生産現場の改善活動のために各生産拠点にすべて日本の管理者を送り込んでいては、そのために却って現地のコストが増加してしまい、本末転倒になりかねません。筆者の経験では、現地人材と日本からの出向者との人数比が250:4なのに対し、人件費の比は1:1という工場もありました。これではとても現地企業とコスト面で戦えないということになってしまいます。

そこで、グローバルに各生産拠点のコスト情報、その基になっている生産性情報を共有し、生産性向上・原価低減に対する生産拠点間の競争を促すとともに、改善効果のあった生産拠点のナレッジを収集し他生産拠点に展開するという動きが活発化してきています。例えば、下記のような情報をスコアカードの形でグローバル横並びで比較するとともに、時系列で改善が進んでいる生産拠点の活動を調査・共有するという取組です。

スコアカード見本

グローバル原価低減のための整備要件

上記のような取組を行おうとした場合、当然のことながら一定の条件が必要になります。

(1)定義が統一されていること
横並びで比較しようとした場合、工程やラインといった区分や、原価費目の固変分解、指標の定義などがグローバルで統一されていなければなりません。

(2)比較可能な指標を選定すること
横並びで比較する訳ですから、比較可能な指標でなければ意味がありません。例えば、工場毎に規模が著しく異なる場合は、「金額」ではなく「率」等のような、規模に依存しない指標を選定する必要があります。

また、工場によって特性が大きく異なる場合には、そのような特性に依存しない指標を選定するか、特性に応じてグルーピングを行うことも必要になってきます。例えば、人件費水準が高い工場では作業者は増やさずに設備投資によって増産対応し、人件費水準が著しく低い工場の場合は設備投資するよりも人数を増やして増産対応するという違いが生じます。このような場合、一人当り売上高を単純に比較しても意味がありませんので、所得水準の高い国の工場と低い国の工場とをそれぞれグルーピングして比較する等の工夫が必要です。

(3)各生産拠点で改善活動が行われていること
拠点間比較が各生産拠点の原価低減に結びつくためには、各生産拠点で比較情報を活用するための原価管理活動が行われていなければなりません。すなわち、目標が設定され、実績が記録・集計され、差異を把握して分析し対策が検討されている状態になっていなければ成果にはつながりません。そのため、原価低減を目的としてグローバルで原価情報・生産性情報を共有する場合には、各生産拠点でそれを活用する業務基盤が整備されているかどうかを下記の例のようなチェックリストを用いてチェックし、不十分な場合はまず業務運用の改善を促すことが必要になります。

チェックリスト

第3回コラム『製品原価を正しく把握するための連結原価計算【本気で連結業績を向上するための経営管理】』に続く

原価管理導入編
森本 朋敦 氏
森本 朋敦 氏
株式会社ディーバ 取締役 管理会計事業本部長 1988年京都大学法学部卒。日本電信電話株式会社、朝日監査法人(現あずさ監査法人)を経て、1995年からアーサーアンダーセン、アットストリームにてグローバル経営管理・原価管理のコンサルティングを実施。2013年1月に(株)ディーバに参画。公認会計士。 主な著書:「四半期開示時代の連結経営管理と実践手法」(税務研究会)、「高収益を生む原価マネジメント」(JIPMソリューション)など。 「四半期開示に対応した連結経営管理マニュアル」や「四半期開示時代の連結経営管理と実践手法―グローバル製造業のための3軸管理」(いずれも税務研究会出版局)等、連結経営管理関連の著作多数。 http://www.diva.co.jp/