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生産海外移管戦略編

第8回 『生産移管戦略の進め方 ~後編~』

2010/12/16 10時24分
杉原健史(株式会社アットストリームマネジャー)
渡邉亘(株式会社アットストリームマネジャー)
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今回のコラムでは、工場移管を進める7つのステップのうち、Step3からStep7についてお話しいたします。

STEP3 ケース毎に各工場の姿を描く:全体最適のプランによって工場間の役割が明確になる

工場ごとの役割の明確化とか各工場のミッションを明確にして、どこで何を作るかを決めていくというのは、理屈としてよくわかります。しかし実際にはそのように美しくはまとまりません。

現在、日本と中国に自社の工場があるとします。コストダウンのために日本で生産している製品を中国に移す場合、いろいろなケースが考えられます。すでに述べてきたようにAグループ品のみに着目するのではなく、人手がかかるCグループ品の見直しを積極的に行うことによって思いがけない効果が生まれます。その場合、多品種少量品を移管したらどうなるかなど様々な仮説を立ててすすめます。思いがけず中国での多品種品の生産が効果をもたらすことがわかると、中国工場の性格が変わります。中国工場にCグループ品を移し、国内工場ではAグループ品のみを生産しようとすると、間接部門の費用が一挙に減る計算になり、コスト構造が変わります。様々なケースを試行する中で各工場の性格、すなわち役割、強み弱みが明確になってきます。そして最終的に新しい各工場のミッションができてきます。それは美しいものではなく、実に現実的なものになります。つまり、製品移管のケースの検討の中で、全体最適なプラン作りによって新しい工場間の役割が明確になり、それぞれの工場のミッションが具体化されるのです。

STEP4 会社全体の姿を描く:工場間を統括するグローバル生産管理体制が利益の源泉になる

このようにして、いくつかのケースを検討することによって、いわゆる本社工場の役割が変わります。今までは各地の工場は本社工場の分工場として機能してきました。たとえば本社工場内に国内外の生産配分機能があったりします。管理会計上は中国の工場の売上が本社工場の売上になっている企業があります。本社工場が見かけ上小さくなっていくのを防ぐために行われた制度であり、今では全く意味のない形態です。これからは本社工場もいくつかの工場の一つに過ぎなくなります。

様々なケースで生産移管を検討していると、現在の生産管理体制の抜本的な改革の機会を発見します。基本は国内外のすべての工場間を統括する生産統括・生産管理体制の構築です。概念が一変することによって、工場間と顧客へのサプライチェーンマネジメントの姿が明確になり、さらに多くの利益獲得機会を見つけることができます。この国内外の統括機能をもった新たな組織が、原価と生産にかかわる業績評価指標を管理しながら、常に合理的な工場間の移管作業を指揮します。各工場間の特性を活かし、固有技術と生産管理技術の移管、人材育成を工場間で推進します。

STEP5 移管の費用を計算する:
      効果はあるが、生産移管費用が大きすぎる製品は積極的に廃止せよ

生産移管費用を見積もると、以下のような様々な「できない理由」がたくさん出てきます。

  1. 金型が古くなっており、修理に出さないと海外には移管できないが、取引先は金型修正費を出してくれない。
  2. 外注先で長年の経験で生産しており、標準化できない。
  3. 生産数が少なく、取引先からいつ受注がくるかわからない。受注が来ると即納を要求される。
  4. 今の外注先は零細企業なので、安い単価で生産してもらっている。動かすと再びもとにはかえられない。
  5. 環境問題があり、現状の設備は大丈夫だが、新しく設備を設置しようとすると許可がおりない。

このような製品は、Cグループ品であることが多いです。多くの場合、Cグループ品は取引先との長い付き合いの中で非合理的な取引になっています。最も効果的な方法はこのような製品を廃止することです。今は生産できても、数年後も同じように生産できるとは限らないし、何よりも儲けさせてくれない取引であることが多いです。これを積極的に廃止することができれば、大きな利益創出につながる可能性があります。ほとんどの企業が取り組んでいないだけであって、真剣に取り組むことによって、生産の構造が変わる場合があります。

効果はあるが生産移管の費用が大きすぎる製品は、対応次第で大きな効果を生みます。積極的な廃止戦略を立案・実行することによって大きな効果が生まれます。

STEP6 効果を計算する:効果と実現性はともにお金に換算し、評価できる

移管に伴う意思決定は、効果と実現性で判断します。効果は、金額的に評価できるコストダウン金額です。実現性の最も大きな判断基準もお金に換算できます。生産移管するために必要な金型の修正費用、設備の移設費用、採用・教育費用などのほか、ボトルネックになる貴重な生産技術員の作業量もすべて費用として計算します。

ある製品を海外に移管しようとすると、「移管のためには生産技術者2名を3ヶ月にわたってアサインすることが必要だが、今そのような人は忙しくてムリだ」という発言が出てきます。どのような貴重な人材であろうと、金額に換算することができます。貴重な生産技術者2名を3ヶ月確保することの費用を計算します。コストダウン金額が大きくて(つまり効果がある)、実現性が高い(つまり費用がかからない)ならば即実施です。効果が高く実現性の低い製品なら、さらに実現性を高める検討が必要となります。

STEP7 目標を設定し、行動計画を作る:
      製品、工場、顧客の三位一体の改革が、生産移管による利益を獲得する

Aグループ製品の移管は、引き受ける方よりも出す方に問題を残します。一方、Cグループ製品の移管は出す方よりも引き受ける方に問題をもたらします。つまりCグループ製品の扱いによって、全社レベルでの生産移管の成果が大きくもなるし小さくもなるのです。

そこでCグループ製品から大きな成果を得ようとしたら、工場だけでなく、顧客対応の戦略が必要となります。製造部門と営業部門が一体になってCグループ製品の見直しを行い、生産移管の行動計画を作ります。双方で目標を設定し成果を獲得する全社レベルの活動にすることによって、単なる生産移管活動と思われていた活動が戦略的な位置付けになります。

営業部門が取引先と交渉するにあたり、工場部門は交渉に必要な十分な情報を提供します。当初大量生産品であった製品が、時間とともに少量化していることを示すデータ、それに伴い現在はコスト割れしていることを説明するデータ、取引先の発注条件によってコストが変わることの提案など、営業部門の交渉を支援することが重要です。このときに必要になる原価計算がロット別原価です。負担能力主義の原価では交渉力は全くありません。交渉を論理的・合理的に運ぶ基本的な情報はロット別原価からもたらされます。ロット別原価で段取時間の比率が増えていることを示せば、どのように原価が高まっているかを説明することができるのです。

   

これまで、計8回にわたって海外生産移管に潜むワナとその対応戦略について解説をしてまいりました。

現在のような厳しい時流の中で、グローバルでの競争に勝ち抜く「儲けるものづくり」体制の構築に向けて、本コラムが少しでも皆様のお役に立てば幸いでございます。

最後になりましたが、ここまでお読みくださりまして、ありがとうございました。

また、私共アットストリームは、本コラム執筆内容に限らず、生産、SCM、会計、マーケティング、ITなどの各分野にて様々なクライアント様改革事例がございます。各方面の実績や知見に関してご質問やご関心がおありになりましたら、ぜひ弊社ホームページからお問い合わせ下さい。読者各位からのご意見をお待ち申し上げております。

末筆ながら読者各位の改革推進成功を祈念しております。

このコラムの著者
杉原健史
杉原健史
株式会社アットストリーム マネジャー

(株)第一勧業銀行、キーエンス、アーサーアンダーセンビジネスコンサルティング等を経て、現在に至る。
KPIマネジメントによる経営改革の推進、各種SCM改革の企画・立案・実行支援などの各種プロジェクトに従事。
主な著書に『SCP入門』(共著)工業調査会、『e生産革命』(共著)東洋経済新報社。


渡邉亘
渡邉亘
株式会社アットストリーム マネジャー

TIS株式会社を経て、現在に至る。製造業における業務改革の推進、生産ならびに収益管理システム構築の企画・立案・実行支援、情報システム運営の構造改革立案・実行支援など、各種プロジェクトに従事。

このコラムの著者に聞く:

(※(株)アットストリームの杉原氏、渡邉氏に、直接メールで連絡を取ることができます。)


(株)アットストリーム
株式会社アットストリーム
http://www.atstream.co.jp/

最もクライアントに信頼されるブティックコンサルティングファームを目指し、2001年に設立。
現在、東京・大阪・名古屋・上海・米国に拠点を置き、グローバル製造業を対象としたサービスを本格展開。
実践力を持つ専門人材(生産系・会計系・ IT系・マーケティング系)が融合してプロジェクトを編成し経営課題の解決を推進する。
特に、数多くの企業で実践、成果を上げている生産分野の業務改革支援は、現場での根気強い取り組みと豊富な実績で定評がある。


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株式会社アットストリーム 代表E-mail: (広報:山本)


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