製造業向けのパッケージ製品として30年の歴史を積み重ねてきたmcframe。その長期ユーザーが口を揃えて言うのは、「投資の本当の価値は、システムの外にある」ということだ。2026年3月12日、mcframe Day 2026では、会員社数が250社を超え、年間30回以上の研究会を開催するmcframeユーザ会(MCUG)のリーダーたちが登壇。基幹業務を支えるSCMシステム導入のもたらす「真の価値」と、20年以上続くユーザーコミュニティが企業と人材の成長に果たす役割について、語り合った。
講演者:
足代 隆 氏
株式会社タツノ 生産本部 工場DX改革担当 主幹/mcframeユーザ会 会長
大坪 吟 氏
小林製薬株式会社 製造本部 製造管理部 製造DX推進グループ/mcframeユーザ会 前副会長
石田 哲也 氏
古野電気株式会社 舶用機器事業部 三木工場 生産革新推進室長/mcframeユーザ会 役員・幹事
伊与田 克宏(モデレーター)
ビジネスエンジニアリング株式会社 プロダクト事業本部 カスタマーサクセス推進部 部長/mcframeユーザ会 事務局
講演タイトル:
「mcframeとユーザ会(MCUG)を通じてわかった『SCMシステム導入の真の価値と効果的な活用』」
mcframeの導入と利用、そしてmcframeユーザ会(MCUG)の研究会活動を通じてわかった、SCM基幹システムにおける本当の価値と効果的な活用のエッセンスを紹介する。各社が実感したユーザ会の魅力についても触れる。
まず3名が語ったのは、mcframe導入によって自社に何が起きたかという実体験だ。
商船レーダーでグローバルシェア41%を誇るグローバルニッチ企業の古野電気 舶用機器事業部三木工場の石田哲也氏は、2015年以降のmcframe導入で得た最大の成果として「モノと情報の一致」を挙げた。入荷検収・倉庫入庫・倉庫出庫・生産活動・製品出荷という全プロセスをmcframeへのリアルタイム入力でつなぐことで、在庫の所在と数量が常に正確に把握できる状態を実現した。
「一番威力があったのは、モノと情報の一致という原則を守れる仕組みを作れたことです。隠れた立役者はラベルプリンターであり、百数十台を使ってバーコードで全管理を達成しています」と石田氏は語る。場所ごとの責任区分を明確にしてmcframeに集約したことで棚卸差異が大幅に縮小し、実地棚卸も大きく効率化した。
1996年からmcframeを使い続ける小林製薬・大坪吟氏は、30年にわたる3回のリプレースを時代ごとに振り返った。1998年の初回導入では、260種類あった帳票を100種類に削減し、実際原価の当月決算への活用と決算の早期化を実現。2008年のリプレースではM&Aに対応したマルチカンパニー機能とWeb-EDI連携を導入した。そして2023年に実施した直近の刷新では、「Fit to Standard」を合言葉にカスタマイズを無くし、mcframe 7パッケージをそのまま活用する方針に転換した。維持メンテナンスの負荷を下げ、最新テクノロジー(製造DX)へとメンバーをシフトした。
「データを扱えるようになって、SQLなども覚えてきましたし、最近は生成AIでSQLを作ってもらって抽出もできます。それもデータベースが公開されているからこそだと思っています」と足代氏は振り返る。
足代氏は、mcframeの本番稼働(カットオーバー)前にユーザ会へ参加した。プロジェクトを進める中で課題が出るたびにベンダーへ相談していたところ、ユーザ会の存在を知ったが、最初の研究会は、想像をはるかに超えるレベルの高さだったという。
足代氏は当初、飛び交う専門用語に圧倒され、研究会中も手元のデバイスで検索し続けるのが精一杯で議論に参加できていなかったと振り返る。それでも、コミュニティの温かさに支えられながら猛勉強を重ね、「自分の技術・知識の不足に気づいたことが、勉強するきっかけになりました。会社に帰っても、『知識が大切だから勉強しよう』と皆へ展開するようになりました」と足代氏は語る。
モデレーターの伊与田克宏によると、ユーザ会でBCPが議題として最初に上がったのは2006年のことで、さらにランサムウェアへの備えが議論されたのも社会全体の認知より早い2017年のことだ。会員サイトの議事録検索ではBCP関連の議題が53件蓄積されており、現在は議事録検索のAI対応も進んでいる。業界でまだ一般的でなかった時期からリスクに備える議論がなされ、また様々な長年の議論の蓄積をいつでも検索・参照できる。つまり、単なる情報交換の場を超えた知識インフラとしても、ユーザ会は機能してきた。
「mcframe導入による効果で期待した1つは棚卸の課題解決でした。それぞれの人が自分の担当範囲の数を数えて報告するという当たり前のことができるようになった取り組みを研究会でレポートさせていただき、会員の皆様に見学に来ていただけるようになり、新たな交流も生まれました」(石田氏)
大坪氏も3回目のリプレースの際、会員サイトの過去の膨大な棚卸議論の記録を参考にした。「おかげさまで非常に役に立ちました」と大坪氏は当時を振り返る。研究会での積み重ねが、別の企業の実践に生きるという好例だ。
研究会のテーマはシステム運用にとどまらない。石田氏がファシリテーターを務めた「マネージャーズ研究会」では、DXを進める上での主要課題をテーマに参加18社全員が発表資料を持ち寄り、正味39ページに及ぶ資料を議論する濃密な場となった。「それぞれ全員が参加できたという達成感を感じることができた、非常にいい経験でした」と石田氏は振り返る。
またPLM意見交換会では、「資料1〜2枚で」という依頼にもかかわらず各社が力作を提出。正味50ページの資料で15社が互いのPLM活用の現状と課題をさらけ出し議論した。こうした全員参加型の研究会は参加者から高い評価を受けており、研究会後のアンケートでは満足度95%を記録している。
さらに、研究会の「休憩時間」と「懇親会」の価値についても触れられた。研究会は情報のインデックスのようなもので、「あの人は何を知っている」というつながりが生まれる場だと伊与田は言う。「本音の話は、終わってからの懇親会が一番聞けます」と足代氏も重ねた。会員間では工場見学訪問や個別のLINEグループなど、研究会外での交流も広がっている。
ユーザ会が育てるのは、情報やノウハウだけではない。人の成長と、知見の継承もまた、ユーザ会が果たしてきた役割だ。石田氏が最も印象に残った研究会として語ったのは、現在は名誉会員となっている方の引退講演だ。長年ユーザ会の関西グループをリードしてきた人物が、入社から定年に至るまでの経験を集大成として発表した際、打ち出したキーワードが「IT目利き力」だった。
石田氏は「ITを使いこなすために、勉強して理解して、適切なものをつかんでこないと自分たちが本当に望む結果は得られない。そのための社内コンサルティングを担うべきだという気づきと、実行する勇気をいただきました」と語る。
こうした知見継承は、ユーザ会が制作・配布している「mcframeを新たに採用される方へのメッセージ」にも結実している。10年以上mcframeを活用しているユーザーが「導入時には想定していなかった、後から振り返ってわかる反省点、改善点」という経験をまとめたもので、mcframe新規ユーザーに最初に手渡される文書だ。
大坪氏は、ユーザ会の研究会で生産管理システムのリプレースに本腰を入れるというテーマで議論した際、定年までの期限の中で、次のシステムと業務の全体を理解して継承できる人材を育てたいという切実な思いが、3回目のリプレースをFit to Standardで挑む原動力となった。
「10年経つと人が変わり、業務の中身を知らないまま入力するだけになってしまう。今回の刷新で業務を見直したことで、みんなが本当に自分たちのシステムと業務の内容を理解できたと思っています」と大坪氏は語る。
「実際に、システム導入を機に新しい事業を担うリーダーが育まれていく、そういうきっかけになっています」と伊与田は指摘する。
伊与田はユーザ会のメンバー企業である明治薬品株式会社の事例を紹介した。同社ではmcframe導入後に運用を抜本的に見直したことで、MRP(資材所要量計画)による発注率が18.6%から96.1%へと飛躍的に向上した。
「前のシステムでもできたかもしれないけれど、現場の意識を変えるためには、システム導入がきっかけになった。会社の方向性に沿わないことは、新システムではできないと言い切ることが大事だったとおっしゃっていました。現場の意識を変え、飛躍を実現した組織の役割・権限の見直しも、システム導入を機に大きく進んだ事例です」と伊与田は語る。
こうした事例を踏まえ、伊与田はmcframe導入の意義を次のように総括した。mcframeの導入は「製造・経営のデータを正確に統合して可視化する基盤」を手に入れると同時に、「他社の知見や経験を共有し合い、自社と担当者を成長させ続けるコミュニティ」に参加できることを意味する。その2つが合わさることで、人材育成と業務文化の変革につながる「組織力強化への投資」となるのだ。
また、ユーザ会はユーザー側のコミュニティにとどまらず、B-EN-Gへの製品要望を届ける窓口としても機能してきた。ユーザ会が収集した要望をB-EN-Gの開発部門が整理し、mcframeの機能改善に反映するワーキンググループが設けられている。「ユーザーの皆さんにmcframeを育てていただき、強くしていただいた」という伊与田の言葉は、ユーザーとベンダーが共にプロダクトを育ててきた30年の関係を端的に示している。
「私が参加したのは50歳を過ぎてからですが、そこからでも気づいて成長できた。これがもっと若い時に来ていたら、社会人人生がもっと変わったかもしれないと思うくらいです。もし現在ユーザ会にご入会いただいているなら、ぜひ若い人をどんどん積極的に研究会に出してください。まだご入会されていないなら、ぜひこの機会にコミュニティに加わっていただいて、共に成長していきましょう」(足代氏)
若手からベテランまで、世代を超えて学び合い、ともに成長できる場がある。それこそが、20年にわたりユーザ会が培ってきた最も大切な価値といえるだろう。
本講演では時間の制約もあり、DX改革の全体像とフレームワークの提示に留まりましたが、アンケートを通じまして「より詳細な実例や、現場での運用ノウハウを深く知りたい」との熱心なご要望を多数頂戴いたしました。
講演では語り尽くせなかった「実務の深淵」や、試行錯誤のプロセスこそが、我々が主催する研究会の本領です。今回の概要編では飽き足らなかった皆様、ぜひ研究会へ足をお運びください。皆様の現場に即した、より実践的な議論ができることを楽しみにしております。