顧客ニーズの急激な変化に対応して、商品のライフサイクルはどんどん短くなってきています。また、顧客ニーズの多様化が進み、製品の種類もますます増える傾向にあります。その結果、企業における新製品発売数は増加の一途をたどっています。企業にとって新製品は特別な存在ではなく、売上げのかなりな部分を占める重要な要素となっているのです。今回は、ますます重要性が高まっている新製品の需要予測についてお話したいと思います。
従来の新製品需要予測のアプローチは大きく3つに分類することができます。
予算やマーケティングリサーチの結果、これまでの経験などに基づいて、担当者が予測値をはじき出すやり方です。多くの企業で採用されている方法ですが、担当者のスキルに大きく依存するという問題点があります。
需要をいくつかの要因の関数としてモデル化(定式化)して予測する方法です。何が製品の需要に影響を与える要因であるかを見つけ出すこと自体が難しく、また運よく見つけられたとしても要因と需要との関係を定式化することは更に難しい課題です。非常に限られた分野でしか成果があがっていないように思います。
過去に発売した類似製品の販売実績をもとに予測する方法です。例えば「今年の年末に発売されるA4 インクジェットプリンターの販売予測量は、去年の年末に発売した同タイプのインクジェットプリンターの販売実績の1.2倍」といった考え方です。現時点では、最も現実的かつ有効な方法ではないかと思います。しかし、全く新しいコンセプトの製品の場合、
といった問題点があります。
従来の新製品予測方法には様々な問題点があり、これらの延長線上のアプローチでは劇的な精度の改善は期待できないのが現状です。そこに颯爽と現れたのが「予測市場システム」という全く新しいアプローチです。予測市場システムは、架空の証券市場で参加者が予測証券を売買し、その証券の価格によって将来の出来事を予測する仕組みです。例えば、サッカーワールドカップの優勝国を予測する市場を考えてみましょう(図1)。
<図1 予測市場システムの概念図>
(出典)京都大学 水山元氏 作成資料(一部改変)
予測市場システムは、選挙予想、映画の興行収入予想などで多くの成功例があり、海外においては企業での活用も進みつつあります。
予測市場システムを新製品の需要予測に活用しようという試みもなされています。発売される新製品の需要量に対応した証券を発行し、営業担当者が営業活動で得られた情報などをもとに、証券を売買することによって需要予測を行います。
<図2 予測市場システムの新製品予測への適用イメージ>
予測市場システムを新製品予測に適用する試みはまだ始まったばかりですが、大きな可能性を秘めているのではないかと思っています。
[ ご参考] キヤノンIT ソリューションズでは「予測市場システムによる新製品需要予測」をご試用いただけるモニター企業を募集しています。
[ お問合せ先] キヤノンIT ソリューションズ株式会社 R&D センター 数理技術部 06-7635-3011(担当:多ヶ谷)
業務に役立つコラム(需要予測編)も今回で最終回となりました。ご愛読いただきありがとうございました。本コラムが読者の皆様の課題解決のヒントとなりましたら幸いでございます。
また、キヤノンITソリューションズ株式会社では需要予測・在庫発注補充計画ソリューション『FOREMAST(フォーマスト)』をご提供しています。現状分析から需要予測システム導入まで幅広くご支援することが可能です。需要予測についてお困りのことがございましたら、ぜひご相談下さい。