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{{ group.name }} | 第1回 『世界経済不況下での売上と原価と利益』 | {{ site_settings.logo_alt }}

作成者: ビジネスエンジニアリング|2009/04/28 4:49:00

皆さん、はじめまして。今回から「原価コラム」を担当することになったビジネスエンジニアリングの小磯です。今このコラムに目を通していただいているのは、弊社のMCFrameに興味を持たれているお客様だったり、MCFrameを取り扱っていただいているパートナー様だったりと様々な立場の方々だと思います。

この「原価コラム」では弊社の基幹業務システム MCFrame CS 原価管理機能の枠内に囚われず、実はすごく身近で、しかしながら何故か縁遠いと感じてしまう"原価"というものを、いろんな見地から考えてみたいと思います。

"原価"は変革が求めらる時代にこそふさわしいキーワード

さて、昨今加速の一途をたどるグローバリゼーションの荒波に飲み込まれて、世界は未曾有の経済危機の真っ只中です。昨年のリーマンショックにはじまり、派遣切りの問題、世界最強企業トヨタ自動車の赤字転落と、これほど世界経済が日本に与える影響を目の当たりにするのは我々にとっても初めての経験です。

100年に1度と言われる経済危機だからこそ、荒波が治まるのをじっと待つのではなく、今まさに"変革"(CHANGE)が求められています。モノが売れないこの時代、変わるために何を考え、どのように行動すべきか......そのキーワードは、そう"原価"です。

企業経営の目的は継続的な利益の追求です。改めて言うまでもありませんが、利益は売上から原価を引いたものです。つまり利益を獲得するためには、売上を増やすか原価を減らすかのいずれかになります。現在の不況下でモノが売れなくなり、企業は存続をかけて今までにないほどシビアに原価を低減することを余儀なくされています。もちろんこれまでも企業は原価を下げるための努力を怠ってきた訳ではなく、各社独自の手法によって企業文化と呼ばれるまでに発展し根付いてきました。しかしながらそこには"規模の経済"という強い味方が常に日本企業を後押ししてくれていました。

"規模の経済"つまり世界経済の好調な消費に支えられて作れば作るだけ売れる環境において、生産量の増大は製品単位あたりの原価を下げることに大きく寄与し、各社の原価低減活動との相乗効果で日本企業に莫大な利益をもたらしてくれました。しかしながら世界的に消費が冷え込んでしまった現在、量産効果によって製品単価を下げることは難しくなってきています。そしてさらに深刻なのは、製品単価が下がらないと、販売数の減少によって売上高が落ち込む以上に利益はもっと悪化してしまうという事実です。一見連動しているように見える売上と利益ですが、実は"原価"を介在して非常に危うい関係にあります。

"原価"を介在した売上と利益の危うい関係?

トヨタ自動車を例に取ってみると、皆さんよくご存知のように08年3月期の連結決算では売上高26兆2892億円、累計販売台数891万台、営業利益2兆2703億という記録的な数字を計上しました。891万台で2兆2703億ということは1台あたりの営業利益は約255千円になります。単純に考えると、09年3月期は累計販売台数が732万台になる見通しですので、販売台数に255千円を乗算すると、営業利益は約1兆8650億円となります。為替変動による損失額は約8,900億円と言われていますが、それでも約9,750億円の営業利益は確保できる計算になります。

しかしながら09年3月期決算の見通しでは、営業利益△4,500億円となりトヨタ創業以来初の赤字を計上すると発表されています。売上高、販売数ともに対前年比△18%に留まったとしても、利益は対前年比△120% (為替変動の影響を除くと対前年比△81%) にもなってしまうのです。もちろん実際はいろいろな変動要素が複雑に絡み合うので事はそんなに単純ではありませんが、売上と利益の減少率が一律ではないことはイメージしていただけると思います。

"原価"を構成する要素を分解することで見えてくるもの

では、なぜ売上と利益が連動しない上記のような事象が発生するのでしょうか? それは売上-原価=利益であることを考えると自ずと答えが見えてきます。売上と利益が連動していないということは、つまり売上と原価が連動していないということなのです。勘のいい皆様はもうお気づきだと思いますが、"原価"を構 成する要素を分解すると、売上の変動に応じて増減する「変動費」と、売上の変動に連動しない「固定費」に分かれます。この固定費の影響により売上と利益が連動していないように見えてしまうのです。

しかしながら一見変動しないように見える固定費も製品単位あたりで考えると、量産効果により単位あたりの単価を下げることができます。もちろん固定費単価が下がればそれだけ製品単位あたりの利益も増えるので、固定費単価が下がれば下がるほど売上高に応じて利益が連動するようになってきます。製品単位あたりの固定費単価を下げることが量産効果による最大のメリットになります。

しかしながらモノが売れないと量産効果によって製品単位あたりの固定費単価が下がることはほとんど期待できません。このような状況下で「固定費」をどのように管理すべきかについては次回(第2回)のコラムで述べてみたいと思います。次回をお楽しみに......

第2回コラム『固定費を征するものは原価を征する』に続く