日系企業のグローバル化、海外事業拡大の必要性が高まる中で、在外子会社管理の強化を経営課題として挙げる企業が増えています。例えば、国内偏重であったオペレーション体制が急激に海外へとシフトしたことで、在外子会社の管理体制やガバナンスの強化が必要になるケースや、クロスボーダーでの事業提携やM&Aを契機として、違った企業文化や仕事の進め方を行っている在外子会社の管理体制整備が必要となるケース等があるでしょう。
本コラムでは、そのような課題を抱える企業に対し、グリップの効いた在外子会社管理を行うためのポイント、形骸化したグループガバナンスに魂を吹き込むための方策について概説します。
まず、在外子会社管理を機能させるためには「在外子会社におけるビジネス状況が可視化され、PDCAのサイクルが有機的に回っている」状態を作る必要があります。しかし、業績管理として実施される定期的な財務報告において、子会社からの報告数値の中身が本社で理解できていないケースや、予算との差異が出た理由がわからない、その対処について検討がされていないというケースが見受けられます。
その原因は、実質的にPDCAサイクルを回すための仕組み、海外特性を加味した実効性のある管理ルールやプロセスがないという基礎的な課題による場合が往々にしてあります。その背景には、日系企業がローカライズという名の下に全般的にオペレーションを子会社任せにしてきたことや、日本では当然の事が、物理的な距離や言葉の壁、法制度や商慣習が違う、専任の要員がいないからという諦めによって、そもそもグループとして十分に検討・実践されていないということがあります。
筆者の考える、在外子会社管理強化において検討するべきポイントは、次の通りです。