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{{ group.name }} | 第1回 現場起点のIoT(後編) | {{ site_settings.logo_alt }}

作成者: 沼田 俊介 氏|2018/04/25 2:00:33

※本記事は「IGPIものづくり戦略レポート」2016新春号からの転載です。

現場起点② 助走

次に、IoTを活用出来るポテンシャルのある企業と無い企業とが存在します。なぜならIoTはデータ収集の粒度と頻度を飛躍的に上げて、これまで取れなかったデータも取得できるようになりますが、これがそのまま“データ活用能力"を強化するわけではないからです。

IoTで製品の付加価値や生産性を向上するためには、データ活用能力を組織として持っていることが不可欠です。皆様の会社でも、今現在、活用し切れていないデータが散在していませんでしょうか?そこにIoTで新たなデータが集められてもデータの洪水に溺れるだけです。投資対効果が割に合いません。

ではデータ活用能力とは何か?ものづくりの上流から下流まで様々な局面でデータ活用能力は間われますが、ここでは製造に注目しましょう。

製造における品質改善局面では、間題があったら原因仮説を抽出し、その仮説を検証するパラメータを明確にする必要があります。だからこそ、「取得出来ないデータは類推で進めて仮説検証し、それ以外は必要性を見極めつつ、今後、改めて新たに取得範囲を広げていく」といった考察に進めます。そしてこのデータ活用能力の土台となる事象と原因を整理する力は今も現場にあり、ここに企業によって強い、弱いがあるのです。この差は、地味に思うかもしれませんが如何に作業を標準化できているかどうかで決まります。

作業標準がしっかり徹底されている現場では不具合が発生した際、加工手順、マシン設定等で標準と実際とで何が異なったのかを軸に整理します。IoTはこの整理を飛躍的に助けてくれますが、この“現場の整理力”そのものを創り出してはくれません。このプロセスの標準化が未成熟な状態は、特に海外工場で顕著です。外国人労働者の増加や、ミドル不在でベテランと若年層しかいない傾向の国内でも見かけます。標準化がされてないとIoTでデータ収集能力のみが向上しても活用出来ないのです。IoTを活用するための助走とは、標準化の再徹底と言えるでしょう。

例えば、こう使う

作業標準が徹底され、データ活用の整理力が向上した(あるいは既に整理力がある)場合は、例えばこんな中期的な活かし方があります。IoTにより高度化する領域の一つが原価計算です。原価計算上はこれまでブラックボックスになりがちだった設備・ヒトの稼働実績が精緻に取得出来るようになるのです。どの製品ロットに対してどのような加工作業を行ったのか、といった情報をリアルタイムで取得するのです。

これまで作業実績の収集に限界があり、生産数量などで加工費等も配賦されていました。しかし、設備については稼働実績が精緻に取得できるようになると原価計算が配賦から直課に変わります。言い換えれば、活動基準原価計算(ABC)が可能になることを意味します。

ABCでは同じものを作っている複数の拠点の作る力の比較が出来ます。これによりSCMの全体設計や内外製方針を製造原価の観点から精緻に見直すことが出来るようになり、また現場改善のPDCAを促進します。正にIoTの導人を生産戦略の補佐的位置づけにする使い方です(図2)。

しかし、大前提は、ゴール設定と助走であることを改めて強調させて頂きます。本編では今更ながら大切さを認識頂きたい、作業標準について詳述します。

図2 現場起点でのloT 活かし方例

※「本記事はIGPIものづくり戦略レポート」2016新春号からの転載です。
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