1回目のコラムでは「SPCとは何か?」を中心に、SPCでよく使われる管理図の基本や、これらのSPC機能を搭載した当社の現場帳票電子化システム「mcframe RAKU-PAD」について簡単に触れました。今回のコラムでは、そもそもDXへの第一歩を踏み出すために、なぜRAKU-PADの導入が効果的なのか、SPC機能も含めて、そのメリットと特長について解説しましょう。
いま日本の製造業では現場のデジタル化、工場DXの推進が叫ばれています。とはいえ、まだまだ中小・中堅企業では、工程管理や品質管理を紙の帳票で行っている現場が多いのが実情でしょう。一般論になりますが、現場では日々の作業に追われており、すでに慣れ親しんだ現行のやり方をあまり大きく変更したくないという気持ちが働いてしまいます。
たとえば、いま使っている紙帳票にしても、その項目や順番などは、これまで現場で培ってきたノウハウが詰め込まれているものなので、それらを捨ててまでデジタル化したくないという思いがあります。それが日本でDXがあまり進まない原因の一つになっています。
データ収集についても同様です。IoTでセンサーからラインや設備の情報を収集すれば効率的になるのですが、やはりコストや手間の問題があり、現場の作業員が動いたほうが速いといった意見もあります。日本の場合は、その場しのぎの運用でも現場が優秀であるため、何とか回っていたのですが、それが今後も続くという保証はありません。
最も大きな問題は、日本では少子高齢化が進んでおり、労働人口が減少の一途をたどっていることです。将来的に現場の作業員が減っていく中で、少人数であっても生産性を維持しながら、いかに効率を上げていくか、そのためにはデジタル化、まさにDXの推進は必要不可欠になっているといっても過言ではないでしょう。
また高齢化で年配のベテラン技術者がリタイアしていくなかで、これまで彼ら自身が長年にわたって蓄積してきた技術や技能が、若手技術者にしっかりと継承されていないことも問題です。いまも現場では専任担当者が自分のやり方で上手く回していますが、彼らが辞めたあとに混乱が起きるケースが多いようです。
たとえ手書きのマニュアルが残っていたとしても、すでに本人が去ったあとでは、その内容を読み取って本質的な意味を理解できないかもしれません。そのため品質管理や設備の保守保全にも影響が及んでしまうのです。実際に設備のトラブルにより頻繁に生産ラインがストップしたり、製品の欠陥が発覚したりとして、ビジネスに大きな損害を与えるリスクも高まっています。
このようなリスクを回避するために、当社では工場DXの第一歩を踏み出すことをオススメしています。工場をデジタル化することで、正確なデータに基づいて現場の稼働状況や予実を可視化したり、製品の品質を管理したり、何かトラブルが発生したときに迅速に対応する仕組みを構築できるからです。
とはいえ、実際にDXを進めたくても「どこから着手すればよいのかわからない」といった現場の声もよく聞かれます。そこで「まずは紙の帳票類をなくしていくこと」から始めてはいかがでしょうか。一般的なペーパーレス化の大きなメリットは、現場の工数やコストを削減することにあります。
従来のように作業実績などを用紙に記録する場合は、それだけでも手間がかかってしまいます。また人が現場で記載するため、「書いた文字や数字の判別がつかない」「記載ミスが発生する」「用語が統一されていない」といった問題も起きます。さらに紙に記録したデータを持ち帰って集計作業をする際に、またExcelで再入力する作業が発生するので二度手間となり、ここでも無駄な工数が発生します。入力ミスや意図的な改ざんが起きる可能性もあるでしょう。
そもそも集計作業に時間がかかると、情報自体が共有された時点で、すでに古い情報になってしまい、せっかく取ったデータが役に立たないものになってしまいます。これは報告書類でも同様です。紙の場合には何かトラブルが発生したときに、膨大な書庫の中からファイリングされた帳票類を探し出す必要があります。それでも必要な資料が見つかればよいのですが、日頃から管理があまり行き届いていない場合には、目的の書類を見つけ出せないことがあるかもしれません。
しかし、事前に紙データのデジタル化を進めておけば、こういった「現場にあふれている困った!」を解決できるようになります。データについては、現場でタブレットから一度だけ入力するだけで、あとは集計も自動的に算出され、見やすい表やグラフで多角的に結果を出力してくれます。もちろん検索もスムーズになり、データから分析した結果や、属人的だったノウハウも関係者に情報共有されるようになります。
このようにペーパーレス化のメリットは、単に紙を電子化することだけに留まらず、その後の作業にも大きな効果をもたらすため、当社ではRAKU-PADの導入を「工場DXの第一歩」として捉えているわけです【写真1】。
いま工場現場のDXを推進するソリューションは世の中で数多く出回っています。その中でも、なぜRAKU-PADが優れているのでしょうか? 少し手前味噌になりますが、ここからは他社製品との違いや差別化のポイントについて触れたいと思います。
前出のようにRAKU-PADのメリットは、紙データの電子化はもちろんのこと、その先の作業の自動化や、システムとの連携も見据えて、DXの布石を打てることです。データの記録からデータ活用・見える化まで、RAKU-PADを導入するだけでワンストップで対応でき、その結果をダッシュボード上で一元的に管理することが可能になります。これにより最新情報が集約され、いつでも、どこでも、手軽にデータをチェックして、タイムリーに工程の異常やトラブルを把握しながら、情報の共有も容易になるわけです。
他社製品と比べてみると、中小・中堅企業でも導入しやすい手ごろな価格帯も魅力の1つです。もちろん使い勝手を重視しているため、現場での評判も上々です。というのもRAKU-PADは、現場にタブレットなどを持ち込んでデータを入力する際に、できるだけ簡単に操作できるように細やかな工夫を凝らしているからです。前に少し触れましたが、紙からデジタルに移行するときに、紙の帳票フォーマットを変えたくないという現場の声が数多くありました。
そこでRAKU-PADでは、入出力画面のカスタマイズ性を高めています。従来の使い慣れた紙の帳票と同じ形式になるように、担当者がノーコードで簡単に入力フォ―ムを作れるため、現場でも違和感なく紙からデジタルに移行できるのです。
データ入力時には、iPad/iPhone/Windowsのタブレッドから画面をタップし、ドロップダウンメニューやテンキーを選んで入力できるため、記述ミスを防げますし、表記の統一や標準化も進みます。また手作業が難しい現場では、便利な音声入力機能を使ってデータ入力に対応します。
いったん入力が済めば、そのあとはExcelにデータ類を再転記する必要もなく、データをダイレクトに活用できるようになります。対象データは条件でフィルタをかけて抽出し、一覧表示することが可能です【★写真3】。抽出条件をお気に入りに登録しておけば、すぐに一覧を呼び出せます。さらに、さまざまな種類のデータを集計し、その結果を3ステップでグラフィカルかつ多角的に可視化し、ダッシュボード上で分析結果を一元的に表示・管理していけます。このように当社のRAKU-PADを導入することで、いままで現場で困っていた多くの課題を一挙に解決できるようになります。
もう1つ、RAKU-PADには見逃がせない大事な機能があります。第一回目の最後で少し触れましたが、RAKU-PADには、SPC機能が搭載されています。RAKU-PADプラスSPC機能ということで、コストパフォーマンスに優れていることはもちろん、SPC導入時の課題も同時に解決してくれます。つまり、現行の入力業務の手間や、転記・集計作業の無駄な工数、分析結果が出るまでのラグ発生といった課題の解決に加え、製品の品質をチェックする管理図まで、ほぼリアルタイムで出せるようになります。
品質を管理するための高価なBIツールも他社にはいくつか存在しますが、どちらかというとオーバースペック気味であり、あまり機能がありすぎると逆に使いこなすものも一苦労することがあります。実際のところ、必ずしも現場では高度な分析が求められているわけでなく、いわゆる「QC7つ道具」が表現できれば事が足りるケースも多いのです。
ただし、従来のように現場担当者が工程ごとに、Excelなどからデータをいちいち集計・計算して、個々に管理図を作ると、どうしても数日間のリードタイムがかかってしまい、管理図が出来上がったころには、すでに不良品が発生してしまうことにもなりかねません。
せっかく、すべての管理図のExcelファイルをウォッチして異常を発見しようとしても、不良品が発生した後ではまったく意味がなくなってしまいます。そこでRAKU-PADで素早く結果を出せれば、こういった心配もなくなります【写真4】。
また管理図も複数の工程のなかで、それぞれの担当者が作っていると、他の人が見たときにチェックしづらく大変ですが、RAKU-PADであれば統一感があり、検索したり管理したりすることも容易になります。
さらにRAKU-PADのSPC機能には、何か異常が起きた場合に、タイムリーにアラートを投げてくれる機能も用意されています。例えばExcelの管理図の場合は「全ての管理図に目を通さないとアラート状態の有無がわからない」つまり、担当者が能動的にチェックしないといけません。チェックを忘れてしまったり、時間が取れなかったりすると、ムダなリードタイムが発生します。当然、チェックするための工数もかかります。
ですが、このアラート機能を使うことによって、アラート状態をタイムリーに自動でチェックし、アラート状態が発生しているとお知らせしてくれます。こまめに管理図を開かなくても常時監視してくれますので、アラートが飛んで来たら該当箇所の管理図を開いて、何が起きているのかをチェックしたうえで、関係者に情報を共有したり、現場に行って原因を調査したりすることができます。担当者はアラートチェック作業から解放されるだけでなく、作業忘れや、遅れなどもなくなります。
今回は、DXへの第一歩としてRAKU-PADでペーパーレス化を実現し、さらにSPC機能で品質面での効果を加速させる話をしました。次回は、さらに具体的にRAKU-PADのSPC機能を掘り下げてみたいと思います。