自社製品の品質を効率的にコスパよく向上しよう!【第4回】他社のSPCツールから「RAKU-PAD」にリプレイスする本質的な理由とは?

これまでRAKU-PADが工場DXの第一歩につながること、タブレットで入力した電子データをダイレクトに蓄積・視覚化し、SPC機能によって品質のトレンド分析に役立つことなどをご紹介しました。第4回目は、他社のSPCツールから「RAKU-PAD」にリプレイスする本質的な理由と、RAKU-PADのSPC機能における「管理図の8つの異常判定ルール」を中心として、その詳細について解説してみたいと思います。
目次
- 現場に寄り添ったRAKU-PADのSPC機能で事後対応からの脱却を!
- 異常発生! 迅速に情報を関係各所に知らせるアラート機能は必須
- SPCの役割に関する振り返り~いかに良品判定を行えば良いのか?
- 管理図の8つの異常判定ルールの定義から読み取れることは?
現場に寄り添ったSPC機能で、品質トラブルの事後対応から脱却を!
RAKU-PADのSPC機能を活用すれば、紙による記録から転記、管理図作成、膨大なデータ管理といった手間のかかる作業が不要になり、管理もラクに行えることは、以前のコラムで解説したとおりです。まさにRAKU-PADは、「アナログ的なSPC」から「デジタル的なSPC」への移行を手助けしてくれるツールといえるでしょう。これがズバリ、他社のSPCツールからRAKU-PADにリプレイスする本質的な理由と言ってよいと思います。
もちろんRAKU-PADだけでなく、他社でもSPCツールがいくつか発売されています。こういったツールは、RAKU-PADよりも品質データ分析に関する多くの機能を有しています。しかし、いざ現場で利用しようとすると、あまりにも高機能すぎるため、使いこせないこともあります。
我々がRAKU-PADをオススメしているのは、実現場での「使い勝手」と「コストパフォーマンス」の良さに優位性があるからです。高額になる余計な機能を省き、現場に寄り添いながら、誰もが運用管理できることをコンセプトに開発しています。
また他社ツールではExcelライクなスプレッドシートにデータを入力し、その都度、ひとつずつ管理図を作成して分析していくようなツールも少なくありません。このようなツールの場合、検査担当者が直接スプレッドシートに記録していくことは難しいため、紙の検査記録用紙に検査結果を記入、その後、品質管理担当者が紙の検査結果からスプレッドシートに転記し、やっと管理図が作成できるという事となり、手間と時間がかかってしまいます。
管理図を作る本来の目的に立ち返ったとき、最も大事なことは「工程を安定状態に保ち、不良品の発生を未然に防ぐこと」です。そのためには、タイムリーな管理図作成と異常判定が必須です。
つまりRAKU-PADにより、タイムリーに品質を管理できる体制を整えておけば、工程異常への迅速対応が可能になるだけでなく、品質の傾向を分析することで不良品発生が起こりそうな工程に当たりを付けられ、不良品発生の防止につながります。このように事前予測を行うことで、何かあってから慌てて対処する「事後対応」からの脱却が図れるのです。
異常発生! 迅速に情報を関係各所に知らせるアラート機能は必須
もう1つ、他社のSPCツールからRAKU-PADにリプレイスする本質的な理由として挙げられるのは、鮮度の高いデータを使って管理図を素早く作成し、その品質を分析・把握できるからです。繰り返しになりますが、いくら高機能なツールでデータを緻密に分析できたとしても、不良品を出してしまえば、まったく意味がないのです。タイムリーに品質の変化をとらまえて、その情報をフィードバックし、素早く対処することが大切です。
そこでRAKU-PADのSPC機能では管理図を迅速に作成し、もし何か異常が見つかった場合に関係各所にメールやTeams(チャット)でアラートを通知してくれる機能があります。高価なMESパッケージであれば、SPC機能にアラート機能も実装されていますが、BIツールや品質管理パッケージではこういった「肝心かなめ」のアラート機能が実装されていないこともあります。【写真1】。
【写真1】管理図の一例。管理図内の3σの範囲外となった値は赤点で表示。アラート機能でメールで通知。
「そんな機能なら、管理図を見れば異常を把握できるから要らない」と思われる方もいるかもしれません。確かに管理図を見れば異常はチェックできます。しかし担当者がPCに張り付いて、数多くの管理図をいちいち開いてチェックするのは非効率ですし、すぐに異常を発見することも難しいでしょう。
そこで、自動で管理図を作成する機能、アラート状態も自動で検知してメールで通知が飛んでくるアラート機能は必須と言えるのです。またRAKU-PADのSPC機能は、単に3σを越える外れ値を検出するだけでなく、後述する多くの異常判定ルールで監視してくれる点も見逃せないところです。
SPCの役割に関する振り返り~いかに良品判定を行うのか?
以下、具体的な異常判定ルールを詳しく見る前に、もう一度だけSPCの役割について簡単におさらいしておきます。そもそもSPCの導入は、製造工程を統計的に分析して工程を管理することで品質の異常を検出し、不具合の発生を防ぐことが目的でした。SPCには多くの手法がありますが、RAKU-PADのSPC機能では、新JISの管理図(IATF16949にも対応)と、規格範囲内で製品を生産できる能力を数値化した「工程能力指数」のCP/Cpkを用いて、製造工程が「統計的管理状態」であるかどうかを判断します。
ここでいう統計的管理状態とは、製品の特性データのバラツキ(中心線、幅、形状など)が一定であることを指しますが、その状態であれば後から特性分布(バラツキ)や製品の良品判定が行えるようになります。事後対応な品質管理では、製品が完成したあとに品質の検査を行い、そこで発生した不良品を除外することとなり、時間もコストもかかってしまいます。
一方で、SPCでは各製造工程ごとに重要な特性データを計測しながら監視していきます。ここで使われるのが、QC7つ道具の1つである管理図というわけです。RAKU-PADでは、もしSPC機能の管理図で何か規格外の異常が発見されたり、CP/Cpkが規格値以下(1.33)になったとき、すぐに各工程の担当者にアラートを投げて対処できます。たとえば、Xbar-R管理図の1つの測定データが管理限界3σを超えた場合には、正規分布から発生確率は0.27%以下となるため、普段なら起こり得ない事象が起きていることとなります。その製造工程において何か変動要因が潜んでいることが疑われます【写真2】。
【写真2】正規分布とXbar-R管理図の関係性。平均値(μ)から標準偏差×3倍の3σを外れるデータは通常では0.27%以下の発生確率なので異常と見なせる。
ここまでの振り返りの通り、SPCは検査の時間やコストの削減のみならず、品質管理を事後対応から事前対応へシフトさせ、製品の不良を未然に抑えて不良率を低減させる効果が期待できます。以上を踏まえたうえで、新JISに対応した異常判定ルールについて次セクションから詳しく見ていきましょう。
●管理図の8つの異常判定ルールの定義から読み取れることは?
さて、管理図の縦軸には、【写真3】のように平均値(μ)である「中心線」(CL)と、バラツキの度合いを示す標準偏差(σ)を用いて、CLから+3σぶん上に上方管理限界(UCL)、逆に-3σぶんに下方管理原価(LCL)を引きます。
新JISの管理図では、このUCL-CLの間と、CL-LCLの間を、それぞれ1σずつ3分割して、6つの領域に分け、UCL-LCLにかけて順番にA、B、C、(中心線)、C、B、Aという領域で表現します【写真3】。
【写真3】新JISの管理図における各領域。UCL~中心線~LCLにかけて、「A」「B」「C」「C」「B」「A」で区分する。
RAKU-PADのSPC機能は、この新JIS規格で定められている「8つの異常判定ルール」をベースにして、製品の品質を常時監視することが可能です。ここからは、この管理図の異常判定ルールの定義と、そのデータから一体何が読み取れるのか? という点について簡単に解説していきましょう。
■ルール① 1つの点が管理限界線(領域A)を超えている場合
管理図の区分において、UCLあるいはLCLを超えるデータは、3σ以上のバラツキがあることになります。正規分布に従うならば、その発生確率は0.27%以下で出現します。前述のとおり、こういったデータは明らかに何らかの原因がある場合なので異常と判定します。
ルール② 9つの点が中心線に対して同じ側にある場合
中心線の一方の領域に連続して現れるデータの並びを「連」と呼び、そのデータの数を「連の長さ」と呼びます。中心線より上側、あるいは下側の領域において、この連の長さが9つある場合には異常と見なします。バラツキ自体が明らかに偏って現れているため、そこに何か異常要因、たとえば装置の不良などが隠れていると考えるわけです。
ルール③ 6つの点が増加傾向、あるいは減少傾向がある場合
データが徐々に増加していく、あるいは減少していく状態のことを「傾向がある」と表現します。ここでは連続的な増加、または連続的な減少のデータが6点ほど続いた場合に異常と見なします。管理図で見ると、連続する6つのデータを結ぶ5つの線がすべて増加している、あるいは減少しており、5回連続で増加・減少となった場合に異常と判断します。この場合には、原材料や製造条件、測定系の変化(装置の異常、測定者の変化)など、工程における変動要因があると考えられるため調査が求められます、
ルール④ 14の点が交互に連続して振れる(増減する)場合
連続する14点が交互に増減している状態が現れた場合ですが、これは異常と見なすというよりも「さらに分析が必要である」という意味で考えましょう。これらの点の動きから、上下しているときに波の周期性を調べてみます。同じ周期や振幅で変動要因を探すことで、たとえば装置固有の問題など、技術的な発見が得られることがあります。
ルール⑤ 連続する5点中のうち4点が領域B、またはそれ以上の場合
連続する5点中、4点が領域B、またはそれ以上の領域にある場合に異常が生じていると判断します。限界線までの距離の1/3の線となるため、±1σ以上のバラツキがあることを意味します。これはデータのサンプリング方法が不適切であることが原因の可能性として考えられるため、データ取得の方法を検討しましょう。
ルール⑥ 連続する3点のうち2点が領域A、またはそれ以上の場合
連続する3点の中で2点が同じ側の領域A、あるいはそれ以上の場合、限界線に接近しているため、異常と判定します。限界線までの距離から2/3の線となるため、±2σ以上のバラツキがあることになります。これはデータのサンプリング方法が不適切であることが原因の可能性として考えられるため、データ取得の方法を検討しましょう。
ルール⑦ 中心線の近くに点が集まり過ぎている場合
連続する15点が、すべて領域Cに存在する場合や、多くの点が中心線の近くに集まり過ぎている場合、すなわち中心化の傾向が見られる管理図は、そもそも群分けの仕方が良くなくて、バラツキがしっかり把握できない状態になっている可能性があります。これでは異常を発見できないため、群分けの方法を見直すなどの検討が必要です。
ルール⑧ 連続する8点が領域C、またはそれ以上の場合
連続する8点が領域Cを超えた領域に現れた場合は、工程において何らかの異常が生じていると判断します。限界線までの距離の1/3の線となるため、±1σ以上のバラツキがある点が8つ出現していることを意味します。これらは新JISのルールに則った異常判定になりますが、RAKU-PADのSPC機能では、すべての判定をカバーしています。
ただし最終的に現場でルールを適用する場合には、自社において独自に定義した判定ルールが必要になるケースも多々あります。たとえばルール4のように、データに周期性(再現性)がある場合など、その工程だけでなくて、工程外にも予期せぬ要因が含まれている可能性もあります。
これ以外にも、顧客先からの要求で「仕様的に異常と判定するルール」であったり、何かトラブルや故障が発生した際に「是正措置としてルールを追加する」といったこともあるでしょう。そこでRAKU-PADのSPC機能では、ルールの設定値を任意に設定できるように配慮されています。
いよいよ次回は本連載コラムの最後になります。RAKU-PADによるSPC機能の異常判定ルールは、ここでご紹介した新JISだけでなく、いま自動車業界で求められている「IATF16949の異常判定ルール」にも対応しています。その詳細について解説する予定です。