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{{ group.name }} | 第8回:見積もり業務を効率化する方法はあるか | {{ site_settings.logo_alt }}

作成者: 若林 賢|2022/09/28 10:31:25

迅速な見積もりは死活問題

個別受注型製造業に、課題の多い業務は何ですか?と質問すれば、ほとんどのお客様から「見積もり業務」と答えが返ってきます。引き合いをもらった営業担当者は、設計・製造部門に確認して調達、製造コストなどから原価を算出して見積もりを作成するわけですが、この対応の遅さが理由で失注または悪い条件で取引させられてしまうことを嘆くお客様のいかに多いことか。とはいえ、検討不足のまま、スピード重視で作成した「どんぶり勘定」の見積もりでは、蓋を開けたら赤字プロジェクトに転落してしまうリスクから逃れることができません。

迅速な見積作成を支援する仕組みに、CPQ(Configure/Price/ Quote)や見積コンフィグレータがあります。顧客が提示する性能要求を満たす仕様値(パラメータ、諸元値)を選択肢から選んで設定することで、自動的にコスト積算が行える便利なものも存在します。

しかし、見積もり業務の迅速化はツールの利用で、すべてが解決するほど単純な話ではありません。例えば、コストの自動算出(見積積算の高速化)には、コストデータ採取、収集、集計におけるプロセス標準化が不可欠です。加えて、機能・仕様・型番・品番・図番、機能と仕様の関係、仕様と品番の関係、BOM、BOPなどさまざまなマスタ情報を整備することはもちろん、それらが陳腐化しないよう維持管理にも注力しなくてはなりません。

見積もり業務を変えるプラットフォームの存在

新規部品・新規設計が多い場合、妥当性のあるコストをどのように算出すればよいのでしょうか。

ここで役立つのが「ものづくりデータプラットフォーム」の存在です。単一のシステムではなく、実際原価を持つERPと、標準原価をはじめ、様々な標準値をマスタBOMとして管理するPLMとが連携し、コスト積算、シミュレーションに必要な「新鮮かつ信頼できるデータ」を誰でも直ちに収集し集計できるようにしておくこと、すなわち、膨大に蓄積した過去の実績データを適時にマスタBOMへフィードバックすることで、経験や勘に依存しない妥当性のあるコスト算出が可能になるのです。

営業スタイルの見直しも必要

ここまで、見積もり積算業務における「ものづくりデータプラットフォーム」の有効性を述べましたが、プラットフォームに蓄積されたデータを有効活用するためには、営業スタイルの変革が必要であることも忘れてはいけません。

顧客の要望を何でも受け入れてしまう「御用聞き営業」スタイルを見直し、「ものづくりデータプラットフォーム」に格納されたデータを活用した複数の選択肢から顧客要求に近い提案をするなど、「自由すぎる特注仕様」を減らす工夫も必要です。

見積もり業務の変革は、簡単なことではありません。しかし、マスタの整備、標準化、業務プロセスの見直しなど、一つひとつを地道に取り組むことで、業務改革は着実に進んでいくはずです。

「第9回:見積もり業務を効率化する方法はあるか」に続く