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{{ group.name }} | 第3回 設計モジュール化技法の手順とポイント① | {{ site_settings.logo_alt }}

作成者: 江見 祥一 氏|2020/10/05 1:38:24

設計モジュール化技法の手順

前回までは、設計モジュール化技法の概要と目的についてご説明してきました。ここからは実際に設計モジュール化技法を導入する際のステップとその進め方について少々具体的に説明していきます。標準的に設計モジュール化技法の導入ステップについては、以下の6ステップになります。(図1参照)

(図1)

正確には、1~5の5ステップなのですが、事前準備として、「0.対象機種の選定」が必要になります。これからは、それぞれのステップで何をどうしていくのかをお話していきます。

対象機種の選定

まずは準備ステップである「対象機種の選定」から説明していきます。

設計モジュール化技法を業務として導入するのであれば、対象業務で関わるすべての機種が対象になりますが、実際には、まずは効果判定とモジュール化するにあたって、どれぐらいの工数が必要か判断するために、機種を1つ決めてトライアルを行うことになります。そのための適用機種の選定を準備段階として実施いたします。選定の基準として、以下の4パターンが考えられます。(図2参照)

(図2)

多くの企業で、みずから標準化を行おうとする場合、①の新製品機種で、実施することが多いように見受けられます。これは、既存のしがらみを受けないことから着手することが多いのですが、やりやすいように見えて、図面が十分に揃っていないことや、製品仕様が未定義なこともあって実態としては、逆に工数もかかるし、進まなく頓挫することが多いです。

おすすめとしては、②のパターンになりますが、われわれがコンサルティングしたお客様の場合、③のパターンの場合が多かったです。このあたりは、よく自社内で検討して進めていただければと思います。

製品モジュール構成の定義

対象機種が決まれば、次にモジュールの定義を行います。前回でもお話しましたがモジュールの単位をどうするかは、非常に重要な要素になります。また、今回は前回紹介しました「組合せ型」のモジュール化を前提にお話を進めさせていただきます。

前回もお話したように、図面構成の標準化を図り、機能単位・部位単位でモジュールを決定することになります。ただ、この段階で図面の精査を行うことは非常に手間のかかることになりますから、まずは「暫定モジュール」の設定を行います。つまり、モジュールの単位を仮定義して標準化を進めていき、標準化を行う中で、再度見直しを行うようにするのです。

暫定モジュールは、ある程度標準化されている場合であれば、図面構成上の部分組立品を、標準化されていない場合には、BOM(Bill of Material)でいう最下層の部品の1レベル上の部分組立品を、仮定義すればいいかと思います。大型・中型の装置等、ある程度部品点数があるような機種であれば、部分組立図単位、ポンプやバルブなどの部品点数が50も満たないような機種であれば、1部品=1モジュールでいいです。(図3参照)

(図3)

ちなみに図面構成の標準化とは、必ず誰が設計しても同一の単位で図面が描かれるように定義してある状態を指します。

例えば、簡単な箱と扉の図面があったとして、箱と扉の取り合い部分の部品の記載を、人によって扉側の図面に描いたり、箱側の図面に描いたりすることがないように、必ず取り合い部品は、どちらかの図面に描く、といったように図面の描く単位を決めて、それが守られている状態になっているか、ということです。当たり前のようですが、個別受注型製造業の場合、意外とこれが守られていない場合が多いです。

機能バリエーションの整備

暫定モジュールが決まれば、そのモジュールが有する機能のバリエーションを洗い出します。

どのように洗い出すかというと、実際に暫定モジュールの部分組立図を並べて、その図面の差異を抽出します。つまり、この図面は、どこが変わると図面が新たに発生するのか、を明確にしていきます。具体例を以下に示します。次の図は、レストランの厨房等で使う業務用冷蔵庫の装置構成を整理した図になります。(図4参照)

(図4)

業務用冷蔵庫が、大きく「キャビネット部」等の本体の冷蔵機部と「冷凍機部」に分かれ、「冷凍機部」の中でも「コンデンシング」「冷凍機ユニットケーシング」「操作機」等に分かれています。この図4の表のピンク色の項目がモジュールとして定義した部位になります。

そして、ひとつ「冷凍機ユニットケーシング」というモジュールに着目します。これを整理すると、20枚ほどの部分組立図があることがわかりました。図4の表の黄色の部分がそれにあたります。これらの図面の差異を見比べて、何をもって、図面が変化しているのかを整理した表が、図4の表の右部になります。下にその部分を拡大した表を示します。(図5参照)

(図5)

これが何を表しているかというと、この「冷凍機ユニットケーシング」というモジュールは、「冷凍機室幅」と「冷凍機冷却方式」「冷凍機取付位置」「冷凍機室奥行き」によって図面が変化しており、それぞれの範囲も「冷凍機室幅」が「240mm」「300mm」「350mm」の3パターン、「冷凍機冷却方式」が「空冷」「水冷」の2パターンといったように、それぞれ、どの範囲で変化しているかがわかります。この図面が変化する要因の項目を「機能項目」、その機能項目に対するパターン値を「機能条件」と呼びます。

そして、この機能項目条件の組合せがモジュールのバリエーションになります。つまり、このモジュールは、3×2×2×2=24バリエーションと想定されます。しかし、24バリエーション数あるはずなのに、実際には図面として20種類しかありません。これは残り4バリエーションが、ありえない組合せなのか、ありえるがまだ実績のない組合せということが考えられます。

また、このようにモジュールの定義と機能項目条件の整理を進めていくと、モジュールのバリエーション数が200を超えるような、かなりなバリエーション数が想定されるような場合もおきます。本来、モジュールのバリエーション数としては、その後の管理も含めると、30~100の範囲におさまるぐらいが適正です。もし、どうしてもバリエーション数が多くなるようであれば、モジュールの単位が大きい、もしくは、モノとして分割できない単位であっても機能的な範囲が大きい場合が考えられます。この場合は、機能的なモジュール分割が必要になります。ただ、モジュール分割の話は複雑になるため、このコラムでは割愛させていただきます。

さて、今回は、設計モジュール化技法のステップと、各ステップの具体的な考え方について、お話しさせていただきました。次回も、引き続き残りのステップとその具体的な考え方について、ご説明していきます。

第4回「設計モジュール化技法の手順とポイント②」 へ続く

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