ハイブリッド生産方式への転換は、その過程において否応なく設計プロセスを改革の方向へ後押しします。調達LTの短縮は、モノの共通化・標準化を前提としていました。しかしその共通化・標準化は、どこが行うのでしょう?
そうです。言わずもがな、設計開発部門が実施することになります。しかも方式転換に先行(並行)して。ハイブリッド生産方式を生かすも殺すも、モノの共通化・標準化次第と言えます。
しかし、そもそも「標準化をどのように進めるべきか」について、個別受注生産企業の多くが悩まれているのではないでしょうか。
個別受注生産は、顧客に寄り添って要望に細やかに応えることで要求品質に対する満足度を高めています。そのため、下手に標準化や汎用化を進めてしまえば、顧客の要望に沿うことができなかったり、設計の自由度、柔軟性を損なうことで品質低下を招いたり、といったことが起こり得ます。また、標準化をすることで、これまでとは業務の進め方を大きく変えなければならないケースも出てくるので、これは特に経験年数が長いベテランにとって少なからずストレスになることでもあります。
標準化には、多くの部門・利害関係者を跨ぐ難しさがあり、ともすると感情的な問題も引き起こしかねないことから、関係メンバーのモチベーション維持やマインド醸成をいかにうまく行うか、検討着手前から十分に考慮しておくことが重要です。メンバー同士で丁寧にコミュニケーションを取りながら目的や期待する効果を共有する機会を作り、ひとつひとつ階段を上るように取り組みを進めていくしか道はありません。
標準化の進め方としては、まず以下のように部門ごとにブレイクダウンして、手順整理やドキュメント化などを地道に進めていきます。
設計を2Dから3Dへシフトするのは、設計プロセス標準化の加速に加え、部品標準化、ユニットモジュール化実現の強力かつ有効な手段になります。3D設計は2D設計と比べその自由度が著しく制限されます。CADオペレーションの難易度も上がりますが、扱う次元が増えることで制約がシビアになり、曖昧性に対する許容が厳しいものになるのです。一見、デメリットのようにも感じるこれら制約ですが、実はこれこそがプロセスおよびモデル(部品やユニット)標準化を否応なしに加速させる鍵になっています。
下図は、3Dモデルのジオメトリ情報を使い、タグ付けの手間を掛けずに共通部品やユニットを抽出・分類する仕組みの実現例を示しています。共通化は3D+PLMで楽をして実現できる時代になっています。
ハイブリッド生産方式への転換に対する先行要件として、モデル標準化の流れをご紹介いたしました。本シリーズでは、プロセス標準化技法(モジュラー化メソッド)については詳しく触れておりません。そちらにご関心ある皆様は弊社別コラム『設計部門効率化を目指す設計モジュール化技法の基礎と実践』が参考になると思います。ぜひご一読下さい。
次回は、品番とBOMについてお話します。