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コラム

3分で紐解く!設計と製造を繋ぐプロセスの作り方

第3回:部品表と図面だけでも業務は回る、しかしそれは勿体ない

モノづくり大国「日本」の復権

かつてMicroCADAM(2DCAD)のカスタムエンジニアをしていた30年ほど前の話、とある個別受注生産企業の設計室に入ると、まず目につくのが整然と並ぶドラフターとブラウン管に映る2DCAD。耳に響くのは、ペンプロッタの動作音や、図面を広げた大きなテーブルを囲み、闊達に意見を交わす各部門の識者たちの声。アナログながらフロントローディングの実践、技術継承や新技術の創造を支えてきた所謂”ワイガヤ“、モノづくり大国と言われた頃の風物詩でした。

今、先進的な個別受注生産企業は、かつての“強さ”を取り戻そうと、図面を3Dモデルに、大きなテーブルをPLM(Product Lifecycle Management)基盤に、物理コミュニケーションを仮想コミュニケーションに置き換え、古き良き“ワイガヤ”をデジタルスレッドによる“デジタルワイガヤ”へ進化させる試みを始めています。今回コラムでは、私が提案に係わったお客様の事例から、取り組みのポイントを掻い摘んでご紹介してみたいと思います。

図面と部品表での業務運用はダメなんですか?

“デジタルワイガヤ”を実施するに至った先進企業にも、プロジェクト開始前は、「図面と部品表での業務運用はダメなんですか?」と、変革に否定的な発言をする方が少なからずいらっしゃいました。ここで、何が問題となるのかを示す具体例を3つご紹介します。

  • 問合せ対応の手間が減らない
    「図番」を使う設計に対し、購買では「型式」を使い、資材や生産管理は「品番」で業務を廻している。キーとなる共通番号が無い状態が、伝達時の誤解・齟齬の温床となります。
  • 新規部品の発生を抑止できない
    一物一価(同じモノを同じモノと認識できる状態)ではない状態が、資材・購買部門からの部品レコメンドを阻害し、安易な新規部品(新図)発生を助長します。
  • 何をするにも人による解釈が不可欠
    図面や部品表は、帳票として素晴らしい機能を持っている反面、情報伝達(部門連携・システム連携)の観点では、人の介在(解釈・判断)無くしてプロセスが繋がらない大きな欠点を持ちます。
これら問題に対策をしない限り、デジタル化が進む先進企業との間に広がるQCD格差が縮まることはありません。これら問題は現象として表出していますが、原因は『長年の慣習』や『組織文化を変える』、いわゆる厄介ごとへの抵抗であることが多く、冒頭質問の心理的背景になっていると考えれば、否定的な発言も腹落ちします。心持ちに係わる問題は一筋縄で解消できず、パワーバランスや既得権の影響も大きい難題と言えます。必要なら外部の力(コンサルタント、SIer)を上手に利用することも、意識改革とデジタル化の成果“デジタルワイガヤ”の実現には、有効な選択の一つです。

“デジタルワイガヤ“を支えるBOMの役割

“デジタルワイガヤ”の実践と、それに先立つ組織改革の必要性に続き、本節ではデジタルスレッドの核となるBOMについて、その役割と機能を改めて解説します。

BOMは、デジタルスレッドの構成要素の一つであり、全データの中心でもあり、デジタルスレッド本体でもある、特別な役割を持つデータモデルです。PLM基盤もBOMによって、データの一元化、バージョン保証、アクセス制限を実現しています。また、複数のエンタープライズシステムの相互連携も、BOMを介したSOA(Service Oriented Architecture)インターフェースが実現しています。ここで、BOMの役割と機能を3つに整理しておきます。

  • エンタープライズシステムのマスタデータ
    CPQ、PDM、PLM、ERP、APS、MESなど各エンタープライズシステムが動作するためのマスタデータとしての役割を持ちます。デジタルスレッドの構成要素の一つです。
  • アプリ(ツール)データのインデックス
    CAD・CAM・CAEデータ、技術計算ツール、Excelなど、様々なアプリからのアウトプットデータを一元化するためのインデックスとしての役割を持ちます。
  • エンタープライズシステムの相互・疎結合インターフェース
    図面や部品表によるデータ連携は、人の関与が必須なことが問題でした。デジタルスレッド・BOMは、システム連携から人の介在を排する役割を荷っています。

さて、少し視点を変えてみましょう。
BOMと言えば・・・の頻出テーマ、『役割別BOM』と『統合BOM』について少し触れておきたいと思います。2000年ころを皮切りに、どちらが良いのかベンダー間で激しい論争がありました。現在は、良いとこどり『ハイブリッドBOM』が正解と言う所に落ち着いていると思います。

B-EN-Gが提供するmcframe PLMは、図にあるように『ハイブリッドBOM』運用を実現するPLM基盤として2015年に誕生しました。

終わりに

デジタルスレッドによるデータ高度利用がデータドリブン経営の実現に欠かせません。モノづくりに関わる全ての情報をBOMに関連づけて蓄積すれば、部門横断の知識・知恵が全社に共有されて、これまでにない気づきや洞察を得ることが現実的に、身近になってきます。いわゆるデジタライゼーション、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に繋がっていくわけです。未来を見据えたDX戦略の土台、デジタルスレッドの主役として“BOM”が大きな役割を果たすことになります。

次回はE-BOMとM-BOMの違いについて説明したいと思います

「第4回:似て非なる2つのBOM・・・E-BOMとM-BOMの違いとは」に続く

https://info.mcframe.com/078
若林 賢
若林 賢
ビジネスエンジニアリング株式会社 デジタルソリューション推進部 副部長
2019年にB-EN-G入社。製造業一筋30年。20代はCADエンジニアとして活動、その後、部品表やBOMに関する知識を活かし設計・生産管理システムの導入コンサルを経験。現在は、mcframe PLMのお客様提案、セミナー講師などプロモーションを中心に精力的に活動中。経営と現場・設計と製造など、簡単には交わらない関係を繋ぐことに喜びとやりがいを感じている。