当社のmcframe MOTION VR-learning(以下、VR-learning)を用いた業務課題の解決方法をご紹介する本コラム。今回はVR-learningを安全マニュアルなど適切な作業を示す教材として用いる例を紹介します。どういった課題にどのような形で効果をもたらすのでしょうか。
製造業などの現場で働く作業者の安全を担保することは、企業にとって重要な責務です。現場をより安全な環境にすべく、企業はさまざまな取り組みを行っており、その1つに安全教育があります。
安全教育にはさまざまな内容が含まれますが、以前紹介した「危険疑似体験」のほか、安全マニュアルを用いた指導も重要です。現場で行うさまざまな作業について、作業者が危険な状況に陥らないように、また危険な状況を自主的に回避できるように適切な手順を指導することが、安全マニュアルの主な目的です。
労働安全に関しては企業を問わず共通する内容が多いこともあって、安全マニュアルそのものや、安全教育の講義や実習指導がサービスとして提供されており、これらを活用している企業も多いでしょう。
一方で、自社の事業に特化した内容の安全マニュアルを作成し、社内の人材が安全教育を行っている企業もあります。手間がかかる一方、自社の安全文化や安全ノウハウを継承する、あるいは自社特有のプロセスに合わせた内容の安全教育を実施するなど、多くのメリットが期待できます。
この安全マニュアルは多くが紙(あるいはPDF)資料ですが、一部には実写やCGの動画も使われています。自社制作の場合もやはり紙資料が主流でしょう。
とはいえ、これまでにも触れてきたように、紙の教材を用いた指導は学習効率、効果改善などの課題がつきものです。例えば新人など経験の浅い人材に安全教育を行う場合、文章や図版での指導ではイメージがつかみづらく、内容がきちんと身につかない可能性があります。実習を行うことで、この課題を補うことはできますが、指導する側も受講する側も相当な時間を費やさねばなりません。
そこで、安全マニュアルにまつわる課題を、VR-learningの活用で解決しようとする企業もあります。実写VR映像を元に制作した安全マニュアルは、未経験の新人でも現場の雰囲気をリアルに体感できるため、高い学習効果が得られます。
また、VRゴーグルで安全マニュアルを視聴すれば周囲の状況も把握でき、作業を開始する前に周囲の状況を確認する必要性などの指導もできます。一般的な動画や紙の教材では難しい新しい形の安全マニュアルを実現できるでしょう。
さらに、VR-learningでは簡単な操作で、インタラクティブな教材を制作することができます。例えば動画の途中で選択肢を示し、安全な手順に沿った行動かどうかを新人に判断させたり、周囲のさまざまな箇所に注意すべきポイントの情報を埋め込み、視聴する人が自分で選んで確認する、といった教材も容易に作れます。
安全マニュアルの作り分けも簡単で、安全マニュアルの手順に沿ったVR動画をそのまま視聴させる教材と、インタラクティブな教材の両方を容易に作り分けることができます。もちろん、選択肢の内容を変更・追加するといった改訂版の制作も容易です。
しかもVR-learningは選択肢の回答内容や正答率などのデータも取得できるため、受講者の達成率を集計するなど、教育効果を定量的に把握することも可能です。こうした分析結果は、その後の安全マニュアル制作に活かすなどして、教育効果をさらに高めていくことができます。
VR-learningは高い教育効果が得られるだけでなく、制作する側の負担もさほど高くないことも特徴です。VR動画の撮影から編集、教材作成までを、安全教育の担当者2~3名で行っている事例が多くあります。無理なく教材を内製化できることから、自社の標準VR教材として計画的に制作し、拡充していこうとする企業もあります。
以上のように、安全マニュアルにVR-learningを活用することで、数々の効果が期待できます。安全教育担当者も、それを受講する人たちも、それぞれメリットを得られます。また、安全マニュアルの内容が現場で徹底されるようになれば、労災事故の軽減や、それに伴う業務中断時間の短縮、つまり製造現場の稼働率向上にもつながります。
もちろん、VR-learningは安全マニュアル以外にもさまざまな目的の教材制作に使うことができます。例えば、品質や作業効率を向上するためのマニュアルの制作にもVR-learningを使えます。安全教育担当だけでなく、生産技術担当など他の部署でも、その効果は多いに期待できることでしょう。