【業務のVR活用例】教育機関での現場実習の補助教材をVRで作成 現場の雰囲気や留意事項を先取り
本活用例のポイント
- 実習現場の雰囲気や留意事項を事前に学ぶ「実習の先取り」で限られた実習機会の効果を最大化
- 実習前に得られた気づきをより互いに共有しやすくなるなどの効果も
- 教員自身がVR教材を簡単に制作し、学習効果を検証可能
当社のmcframe MOTION VR-learning(以下、VR-learning)を業務課題解決に生かすユースケースを紹介する本コラム。今回は、教育機関におけるVRの活用例を紹介します。教員たちが制作したVR教材を実習の先取りに用いることで実習本番の学習効果を補うのが目的です。教育機関特有の課題に対して、VR教材がもたらす効果を紹介します。
専門職育成などで欠かせない実習体験を受けられる機会は限られる
教育機関、とりわけ専門職を養成する大学・専門学校などの教育現場では、知識と技能両方の観点から学生たちを指導しています。このうち技能を身につけさせることを目的として行われる「実習」は、ほぼ経験のない学生たちにとって大きな課題となります。特に初めて現場実習に出る際には、緊張していたり、不慣れであったりするために、なかなか実力を発揮できないことがあります。
また、体験した内容を定着させるため、教育現場では実習の前後などに学生たちの間でグループディスカッションを行わせることもあります。このとき、より多彩な体験を経てからの方が討議も深まるものですが、限られた実習時間の中では体験させられる内容も限定的になりがちです。
そもそも、学生たちが実習に臨む機会には限りがあります。実務現場で実習をする場合、その現場で何度も学生を受け入れることは難しい場合がありますし、さまざまな事情から実習そのものが困難になる可能性もあります。例えば、コロナ禍で現場の人の出入りを厳しく制限せざるを得ず、やむなく実習の時間枠を減らした現場もあることでしょう。
実習用の環境を教育施設内に用意してある場合でも、やはり環境を使える時間は限られます。実習の受講者数が一度の実習に参加できる人数を上回る場合、交替で実習させるなどの必要があり、受け入れる現場側にも教員たちの側にも負担が増えてしまいます。
そこで教員たちの間では、こうした実習につきものの課題に対し、座学の講義と実習の中間のような役割を果たす指導ツールを研究・検討している例もあります。具体的には、本格的な道具や環境を使った実習に臨む前に、例えば模擬的な道具を使って実習の内容を体験させるといった方法です。ただ、専門性の高い技能を学ぶには、模擬的な道具そのものが非常に高価であるなどの理由から、学生が体験する機会を増やすことは容易ではありません。
臨場感あるVR教材を教員たち自身が制作、学習効果の検証と修正も可能
そこで、「実習の先取り」にVR教材を活用しようとする動きが出てきています。例えば、ある大学の看護学科では、教員たち自身がVR-learningを使って教材を制作し、既存の実習を補おうと取り組んでいます。
教員たちは、まず実習先現場の協力を得て、例えば母子のいる病室での対応といった実習内容に沿ったシナリオを作り、360度のVR動画を撮影。学生の理解を深めるために、動画内にVR-learningで選択肢を設けるなどして、独自のVR教材を制作しています。
学生たちは1人ずつVRゴーグルで教材を視聴した上で、数人ごとにグループを作り、グループディスカッションを行って各自が得た気付きを共有し合います。このVR教材を用いた学習を通じて、現場での実習本番に向けた心構えなどを得られるというわけです。
なお、同大学の教員たちは、学生たちに同じ教材を2回体験させることで、より確実な定着を図っているそうです。また、VR-learningに記録された学生たちの回答結果を集計して学習効果を検証。教材を修正して学習効果の向上を目指しています。VR-learningでは教員自身の手で、教材の制作から編集まで容易に行えるため、改善を繰り返すにも適しています。
実習での危険行動と不安を減らし、実りある体験を得られるようになる
VR教材の活用は、実習を控えた学生たちに対して、事前に現場の雰囲気を体感する貴重な機会をもたらします。また、教員たちが作成した質問への回答や、視聴後のグループ討議などを通じて、現場の心構えや留意すべき箇所などを事前に把握できるようになります。VR教材での体験は、現場実習に臨む学生の不安を軽減し、実習での危険な行動を減らし、より実りある実習体験を得るための下地を整えることにつながるのです。
教員たちにとっても、多大な手間をかけることなくVR教材の制作や修正ができ、加えて自分たちの工夫次第で、学生たちがより高い学習効果を得られるというメリットがあります。VR教材という新たな指導方法が定着すれば、それを前提とした、より効率的なカリキュラムを作り上げていくことも可能になるでしょう。
このような、VR-learningによる実習の先取りには、医学や看護学のほか、工業系などさまざまな分野の技能講習に応用できると考えられます。また教育機関のみならず、資格指導などの場面でも活用できる場面があるでしょう。優秀な人材をより多く現場に送り出すためにも、VR教材の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
業務のVR活用例 記事一覧
- 労災事故をリアルに再現して危機意識向上
- 参加者の能動的な体験を促す危険予知訓練(KYT)が可能に
- 作業標準書への活用で、標準作業の習得、非定常作業にも対応できる人材を育成
- 新人教育や安全教育に活用し、手順書より優れた効果を発揮
- 熟練作業者の手順と視線を可視化。技能伝承にも活用
- 危険疑似体験のVR教材を制作して従業員の危険回避能力を向上
- 安全を担保する作業マニュアルをVRで自社制作して効率的な安全教育を実現
- 教育機関での現場実習の補助教材をVRで作成 現場の雰囲気や留意事項を先取り
- 職場見学へのVR活用で労働力確保と求職者とのミスマッチ防止に貢献
- 業務にまつわる技能資格などのVR教材を内製化 学習効率を高めて合格率アップ
- 実務に直結する技能講習や資格試験の内容をVR教材で予習 効率的な学習が可能に