スマートファクトリーの実現に向け自動入力の仕組みを構築し業務効率の向上を実現
導入製品
クレハグループの生産拠点、呉羽(常熟)フッ素材料有限公司は、リチウムイオン電池の部材などに使われるフッ化ビニリデン樹脂を中心に高性能フッ素樹脂を生産する企業だ。同社では、プラントの制御・管理システムがカバーしていない領域で、紙ベースの記録を行う場面が多く、それによってデータの精度・鮮度に問題があり、そのままではデータを活用しづらいことが課題にあがっていた。その対策として2021年からビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の現場のためのデータ記録・分析・活用ツール「mcframe RAKU-PAD」(以下、RAKU-PAD)を導入。部署によっては、QRコードを利用した担当者名やロット番号の自動入力、電子天秤とのインターフェースによる自動入力など先進的な活用もみられ、現場主導でのスマートファクトリー化が進んでいる。
化学プラントの現場で必要な紙帳票への情報記入・Excel転記の手間やミスを減らすべく、現場が使いやすいツールとしてmcframe RAKU-PADを採用。現場の社員がさまざまな使い方を工夫し、それを他部署にも横展開することで利用範囲を拡大している。
フッ素樹脂の一種であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を生産する呉羽(常熟)フッ素材料有限公司(以下、KFPC)は、クレハグループにおけるグローバル供給体制の一翼を担うPVDF生産拠点として、2012年に設立された中国拠点だ。そんなKFPCの立ち上げに際しては、福島県いわき市にあるクレハのPVDF生産拠点をマザー工場とし、日本の管理方法をそのまま取り入れたが、次第に改善すべき点も見えてきていたと、同社 総経理 齊藤 太氏は説明する。
「プラントの制御・管理など重要な部分はDCS(分散制御システム)が担っているものの、それ以外のさまざまなデータや情報を紙ベースで記録する場面が多くありました。さらに、作業の手順表やチェックリストなどもデジタル化しづらい状況でした。こうした紙での記録をExcelに入力する作業は、大きな負担となっていました」(齊藤氏)
まず、KFPCが着手したのは、現場での紙での記録をデジタル化していく取り組みだ。プロジェクト推進室 室長 大平 剛志氏は、紙帳票のデジタル化ツールの選定理由について、以下のように語る。
「業務効率化の一環として、紙業務のデジタル化に取り組むことになり、かねてから取引のある機械商社でB-EN-GのIoTソリューション販売も手掛ける浜正機電貿易(蘇州)有限公司に相談したところ、RAKU-PADを紹介してもらいました。プラント運転員の作業とも親和性があると感じられたことから、実際に使ってみることにしました」(大平氏)
RAKU-PADではExcelや紙の帳票からほぼそのままのフォーマットで、PCやタブレット端末の入力画面が作成できる。さらに、入力されたデータをシームレスに共有・集計・分析につなげられると、幅広い活用を期待していたという。
「RAKU-PADの Recording機能による入力作業の効率化はもちろんのこと、専門のIT部門でなくても簡単な設定だけで品質の傾向分析を行える環境を整えたいと考えていました。そこで、製造業の品質管理に必要な管理図やパレート図などのQC7つ道具が揃っているRAKU-PAD Analysis Dashboardも採用することにしました」(大平氏)
・Excelや紙の帳票からほぼそのままに、PCやタブレット端末の入力画面として作成できる(Recording機能)
・品質管理や生産管理に必要な管理図やパレート図などのQC7つ道具が揃っている(Analysis Dashboard機能)
・入力されたデータをシームレスに共有、集計・分析につなげられる
※RAKU-PAD Recordingはシムトップス社製品“i-Reporter”のOEM版
RAKU-PAD活用が最も進んでいる品質管理部では、製品をロットごとに分析し、その結果をRAKU-PADに入力、必要に応じて関数も駆使して自動で合否を判定させる、といった使い方をしている。
技術管理部 粕谷 侑紀氏は、「Excelへ転記する手間や入力ミスの懸念が減るなど、運用面で導入効果が出ています。QRコードによる担当者名やロット番号の自動入力、USBで接続した電子天秤からの自動入力など、RAKU-PADの活用を進めているところです」と説明する。
これらの作業の手間やミスの削減は、品質管理部の中で工夫していったと品質管理部 部長 殷 兴奇氏は話す。
「RAKU-PADを導入した当初はロット番号などもキーボードで入力していましたが、QRコードで入力できると知ってから、シールを作るなどして段階的に切り替えていきました。おかげでミスもなくなりましたし、いったん入力すれば後は自動的に保存したり、計算したりしてくれるため、データの連続性が保たれています」(殷氏)
入力作業の削減だけにとどまらず、RAKU-PAD により品質管理部門の総帳票種類の75%がすでにデジタル化され、大幅な業務効率化とペーパーレス化も実現している。なお、現場におけるRAKU-PADの運用では、B-EN-G上海と一緒に試行錯誤しながら進めたという。
「帳票作成のトレーニングや、一部帳票の作成支援など、B-EN-G上海の親身なサポートに満足しています。B-EN-G上海は運用支援のほか、製品の保守にも積極的で、不具合があった場合にも、後日にバージョンアップで修正するなどの対応をしてくれるので助かります」(粕谷氏)
品質管理部でのRAKU-PAD活用は、KFPCの他の部署で利用を広げていくためのモデルケース的な位置付けにもなっている。特に展開を加速させようとしているのが、プラントの現場で働く製造部と設備管理部だ。製造部 副工場長・部長 黄 科成氏は次のように構想を語る。
「当社のプラント内は防爆エリアとなっているため、使用するデバイスも防爆対応モデルでなければなりません。また、プラント内ではオンラインでの利用も必須となります。そのため、非防爆エリアである品質管理部門のRAKU-PAD利用は進んでいますが、防爆エリアでの作業がメインとなる製造部門と保全部門における、リアルタイムにデータ連携したいというニーズには対応できていませんでした。しかし、RAKU-PADはこれまでiOSとWindows OSしか対応していませんでしたが、現在は一部Webブラウザでの入力が可能となったことで、Android OSの安価な防爆対応のタブレットを選べるようになったと聞いています。このように端末とネットワークの課題がクリアされてRAKU-PADを使えるようになれば、現場で気付いた設備の不具合を保全業務を担当する設備管理部に伝える帳票などもデジタル化でき、より円滑な操業が可能になると期待しています」(黄氏)
KFPCでは、RAKU-PADによって得られたデータを新たなイノベーションの手段として利用していく方針だ。
「KFPCでは、『KFPCバージョン2.0』として、スマートファクトリーやスマートオフィスの実現に向けた改革に取り組んでいく方針です。まずはデータを蓄積できる環境を整え、そしてそのデータを広く活用することで、新たなイノベーションを生み出していけたらと思います」(齊藤氏)
中国・江蘇省常熟新材料産業園区に拠点を構える。呉羽(中国)投資有限公司の投資により、クレハグループの生産拠点として、登録資本6000万米ドルで設立された。2014年4月に正式竣工した第一期プロジェクトでは年産5000トンのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を生産しており、需要の増加を受けて新プラントの増設に向け検討中。
画像:ロット番号や担当者のQRコードを読み取り、mcframe RAKU-PADへデータ連携している
商号 | 呉羽(常熟)フッ素材料有限公司 |
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設立 | 2012年 |
従業員数 | 117名 |
※本事例は2023年3月現在の内容です。
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