コロナ禍の中国で新工場を建設
日本と現地の連携とタイ拠点での導入ノウハウで生産管理システム導入を円滑に遂行
導入製品
美容室向けヘア化粧品メーカーのミルボンは、成長著しい中国市場でのビジネスを強化するために、2021年に中国・浙江省に工場を建設した。タイに続く国外2拠点目の新工場の生産管理システムには、すでにタイ工場で導入していた実績からビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の製造業向けパッケージ「mcframe」を採用。コロナ禍でリモート対応を含む導入作業を強いられる中、ミルボンとB-EN-G双方の本社と海外拠点がうまく連携することで、スムーズな導入を実現した。
タイ拠点に導入したmcframeの要件や仕様などをベースに、B-EN-G本社はB-EN-Gタイと連携した上で、ミルボンの情報企画部と日本国内で要件定義を実行。B-EN-G上海はミルボンの中国拠点と連携し、導入・構築作業やトレーニングを遂行。海外拠点の導入において、B-EN-Gの現地法人と本社が連携することで、ユーザーの負担や工数を最小限に留めながら、コロナ禍でスムーズな導入を実現している。
グローバルで事業を展開するミルボンは、美容市場が急速に拡大する中国での製品販売強化を目的として、2021年に中国・浙江省に同国初の工場を建設した。これまで欧米や日本のスタイルを取り入れることが多かった中国の美容シーンだが、昨今では独自のファッション文化を構築するようになり、美容製品に対する要求も高くなっているという。中国工場で工場長を務める今石大輔氏は、工場を新設した経緯について次のように語る。
「中国は、将来的に世界一の市場になる可能性があります。これまでのように日本・タイで生産したものを輸入する形態では、この先ビジネス機会の損失が考えられます。そこで現地のニーズに対応可能なR&D機能を併設した工場を新設しました」
また、ミルボンの新工場建設とともに選ばれた生産・原価管理システムが「mcframe」であった。情報企画部マネジャーの澤田健氏は「すでにタイ工場で導入しており、導入時の対応はもちろん運用段階でもB-EN-Gタイで日本語のサポートを得られた実績と安心感は大きく、B-EN-Gをパートナーに選択しました」とその選定理由を振り返る。
導入は2020年初頭から開始されたが、新型コロナウイルスが世界中で拡大し、中国への入国がままならない状態が続いた。そこで同プロジェクトでは、開発の進め方として国内拠点同士、および国内と海外拠点が連携して行う“リモーカル(リモート+ローカル)”の形をとった。
ミルボンでは、タイ工場への導入経験者が同社の中国拠点システム導入プロジェクトメンバーにmcframeのシステム構築ノウハウを引き継いだ。一方のB-EN-GではB-EN-Gタイと本社が連携して、タイ工場での要件・仕様などをベースに事前に要件定義の仮まとめをし、両社が日本で本格的に要件定義を開始した。
「このような開発スタイルは初めてでしたが、最初に準備を十分に行えたため、リモート中心でも開発を進めることができました。プロジェクトメンバーのうち、タイのシステム導入を経験しているのは私だけでしたが、ドキュメント化作業に力を入れ、社内メンバーへシステムの理解を徹底させたことで、必要なスキルトランスファーを完了させることができました」(澤田氏)
基本設計フェーズ以降は中国側にシステム導入を委ねた。2021年2月からミルボンの現地システム担当者とB-EN-G上海が連携し、中国向けの機能などを実装。プロジェクト終盤には、中国への入国制限がかかる中で情報企画部の中川真吾氏が現地に赴き、受入テストを含めて細部を詰めていった。
「私自身、生産管理システム導入は初めてでしたが、B-EN-G上海の担当者が私の理解に併せる形で話を進めてくれました。中国工場のメンバーと本社の橋渡しもしてくれて、都度発生する仕様変更にも丁寧に対応していただき、予定通りリリースすることができました」(中川氏)
2022年8月から同工場での生産が始まったが、生産許可証取得のためのテスト生産のフェーズからmcframeを段階的に稼働させ、現地のスタッフに操作方法のトレーニングを進めていった。B-EN-G上海のメンバーが主導し、工場スタッフは本格的な生産の開始までに操作方法を習得。工場の各担当者は、使いやすいシステムであるとしてmcframeを高く評価する。
倉庫管理課長の王遠棟氏は、「最初は何もわからないところから使い始めましたが、今は化粧品メーカーにとって使い勝手がとても良いシステムだと感じています。特に入荷予定一覧機能が便利です」と話す。生産管理機能については「各システムと連携して倉庫の在庫情報や生産に関するオーダーもスムーズに伝わり、原材料もMRP(資材所要量計画)によって無駄が発生しません」と生産管理課長の王弘博氏は話す。総務・製造事務を担当する曹春妹氏も、「生産指示などを管理するために役立つ便利な機能が多く備わっており、操作しやすい」と語る。
一連のB-EN-G上海スタッフの対応に関しても、購買担当の黄晨露氏は、「ちょっとした質問にもSNSのチャットですぐ答えてもらえました。運用にあたってはWebで操作マニュアルを用意してもらったので、それをベースに新たな質疑応答項目が発生した時には自分たちでスクリーンショットを取って都度追加し効率化を図っています」と語る。
基本的な機能要件以外にも、中国国内に工場を建設するとなれば法律や政府の監査への対応という要件が必須になる。品質や原材料・資材の情報を適切に管理・報告でき、また、それらをトレースできるようにしなければならない。「実際に、当日連絡で政府の監査が行われたことがあったのですが、mcframeで購買から生産、出荷までの工程を全て包括的に管理できているので難なく対応できました」と、品質管理部長の上井大知氏は話す。
今後は、システム面では工場内でmcframeと他のシステムを連携させて工場のスマート化を図るという。「中国では工場を丸ごとシステム化しているケースが多いので、当社でも品質管理システムやWMS(倉庫管理システム)など、他のシステムの導入・連動も検討していく予定です」(上井氏)
その結果としてビジネス面でも、「中国での生産体制構築を成功させるとともに、一般的なブランドのように都市や産地でブランディングするのではなく、働く人・つくる人の想いを基に価値を生み出していく『Made by Milbon』という当社のモノづくり思想を体現していきます」と、今石氏は抱負を語る。
商号 | 株式会社ミルボン (玫丽盼(浙江)化妆品有限公司) |
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設立 | 1960年 |
資本金 | 20億円 |
従業員数 | 810名(連結1038名)(2021年4月現在) |
事業内容 | ヘアカラー剤、ヘアスタイリング剤、パーマ剤、シャンプー、ヘアトリートメント、薬用発毛促進剤、スキンケア・メイクアップ化粧品の製造および販売(国内・輸出)など |
※本事例は2022年11月現在の内容です。
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