グローバル市場強化の一環としてタイ、米国、中国にA.S.I.A.を導入
現地スタッフの会計スキルを向上し、会計の透明化や決算の早期化を実現
導入製品
日本国内の自動車販売台数が伸び悩む現在、自動車メーカーはグローバル市場に向けた事業戦略を強化している。そこで自動車部品メーカーにとって重要になるのが、海外拠点の状況を迅速かつ正確に把握し、最適な戦略を遂行することだ。 そのためには各拠点の会計情報を本社と同じレベルで把握することが必要になる。ポイントは、本社はもちろん、現地のスタッフにも使いやすく、ローカルの会計基準や多言語、多通貨に対応した会計パッケージの選定である。その好事例を紹介したい。
「国内の自動車販売台数は伸びていません。
そのため日本市場だけでビジネスをするには難しい状況です。それでは、自動車部品メーカーがどこでビジネスを拡大しているかといえば海外市場です。このとき日本で作って輸出するのではなく、海外拠点で製品を製造し、直接販売することが重要になります」と語るのは、三ツ知の執行役員で管理部長と管理部 情報システム課長を兼務する浅井好彦氏である。
日本の自動車メーカーは、世界でトップレベルのシェア争いを繰り広げる強力な分野ではあるが、現在ではグローバル展開を視野に入れなければ成長を維持することが困難な状況である。そこで自動車部品メーカーも、既存の海外拠点を拡充したり、新たに拠点を増やしたりすることで、競争力の強化に取り組んでいる。三ツ知も例外ではなく、海外拠点の拡充が必要と考えていた。
その一環として、本社において海外拠点の会計情報を、より迅速かつ正確に把握することが必要だった。浅井氏は、「会計業務の果たす役割は、ビジネスの全体像を見える化することです。しかし3つの海外拠点では、それぞれの方法で会計処理を行っており、月次報告は届いていたものの、勘定科目の並びや定義などがばらばらで、正確な状況を把握することが困難でした」と当時を振り返る。
三ツ知では、2007年の上場にあわせ、ビジネスの見える化に関する状況は改善されたが、その後のビジネス拡大に伴い、開示情報の量も増え、より一層の情報の正確性が求められるようになっていた。特に昨今、企業における会計処理の問題が取りざたされているが、その多くは海外拠点における会計処理の問題であり、海外拠点の会計処理を本社で十分にチェックできる仕組みが必要であった。
そこでグローバル対応の会計パッケージを導入することを決定する。会計パッケージに求められる機能としては、まず現地スタッフが快適に操作できることが必要だった。また、既存の会計システムを移行することから、タイ投資委員会(BOI)対応の財務諸表など、既存システムの機能が網羅されていることや、米国、中国への展開の計画もあることから、多言語対応、多通貨対応も必須条件だった。
さらに、決算財務に関する内部統制上のチェック機能や決算早期化と決算数値の精度向上のための機能も要件の1つ。Excelで作成された勘定科目分析帳票に自動転記する機能や勘定科目をキーに検索・分類する機能、グループ会社取引を自動抽出する機能、四半期決算仕訳を月次通常仕訳と分離して管理できる機能、ローカルベースの決算書とIFRS対応の両方の決算書を自動生成できる機能なども選定のポイントだった。
一方、システム面では、現地に設置されたサーバーでセキュリティが確保され、本社からも安全にアクセスできること、入力や修正、削除などの履歴をログで管理できること、パスワードなどのセキュリティを職務や役職に応じて設定できることなどが必要だった。「これらの機能にグローバルで対応している会計パッケージは多くありませんでした」と浅井氏。検討の結果、グローバルERP・会計システム「A.S.I.A.」が採用された。
グローバル対応の会計パッケージを導入するためには、本社スタッフはもちろん、現地スタッフに受け入れられるシステムの導入が必要であり、どのようなシステムを選定するかは重要だった。2013年7月にタイの拠点にA.S.I.A.を導入したことで、以前は経理スタッフが6名必要だったタイの拠点では、現在4名で対応できるようになっている。
三ツ知の管理部 次長で経理課長を兼務する小澤一士氏は「当初は、少し抵抗もありましたが、B-EN-Gのサポートのもとで、現地スタッフの要望に丁寧に応えることで、A.S.I.A.のメリットを理解してもらえました。以前は、ある勘定科目が前月や前年に比べて大きく増減した際、この理由を聞いても『売上が上がったから』という回答しかありませんでしたが、勘定科目の明細レベルでの増減や、その構成仕訳までを追えるようになり、増減要因の把握が可能になりました。現在では、現地スタッフのスキルも向上し、決算の早期化も可能になりました。実際に、3月末が決算期であるタイでは、毎年タイの正月(4月)であるソンクラーンには出社して年度締めの作業を行う必要がありましたが、締め作業が早くなったので、出社せずにすむようになりました。今後は各現地法人で、会計データのセルフチェックが行えるような仕組み作りを展開していきたいです」と話す。
タイの拠点の決算処理は、以前は20日程度かかっていたが、現在では原価計算も含め15日程度で終わるようになっている。
2015年4月には、タイの拠点に続き、米国の拠点でもA.S.I.A.が稼働。米国のITインフラ整備や生産管理システム検討を担当していた三ツ知の管理部 情報システム部 課長補佐である川内智和氏は、「現地任せのITシステムでは、ITインフラへの接続やセキュリティ上の問題などがあり、その対応が必要でした。タイでの導入経験を活かし、現地法人、本社、B-EN-Gでコミュニケーションを密に行いながら進めることで、米国導入はスムーズに進みました。2016年中には、中国でもA.S.I.A.を稼働する計画ですが、これによりグローバル連結会計が実現できます。さらに、A.S.I.A.と生産管理システムの連携にも取り組んでいます」と今後の展望を語っている。
1963年創業の自動車部品メーカー。「技術力×組織力」という企業理念に基づき、三ツ知春日井、三ツ知製作所、三ツ知部品工業の国内製造3拠点と、タイ、米国、中国の製造・販売拠点で事業を展開している。 最大の特長は、製造拠点のコア技術として、鋼材をほとんど削ることなく、金型で成型する技術である「冷間鍛造技術」を採用していること。鋼材のロスが少なく、大量の部品を効率的かつ低コストで提供することができる。
商号 | 株式会社三ツ知 |
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設立 | 1963年6月17日 |
従業員数 | 70名 |
資本金 | 4億590万円 |
事業内容 | 自動車部品に係るカスタムファスナーの製造・販売 |
※本事例は2016年6月現在の内容です。
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