精密測定機器において国内外で高いシェアを誇る株式会社ミツトヨ(以下、ミツトヨ)では、中国・蘇州のショールームのリニューアルに伴い、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の製造業向けIoTパッケージ「mcframe SIGNAL CHAIN」を導入。機器の稼働率を可視化できるようにすることで「モノ売り」から「コト売り」のビジネスを強化し、さらなる付加価値を顧客に提供しようとしている。
デジタル技術による製造革新の機運が世界的に高まっており、中でもその取り組みを積極的に進めるのが中国だ。2015年より国家戦略として定めた「中国製造2025」は、AIやIoT、クラウド、ビッグデータなどの最新技術と製造技術を融合させることでスマート化された工場を実現し「製造大国」という地位から「製造強国」の仲間入りを目指すという産業政策である。
そうした中国の製造業を顧客に抱え、高度化するニーズに応えて販売強化を進める企業がある。精密測定機器の製品で高いシェアを誇るミツトヨだ。世界30カ国以上に研究開発や販売の拠点を置く同社は中国市場における高精度、自動化、データ管理に重点を置いた取り組みを推進。その一環として製品の展示やエンジニアによる実演、実技指導、システム導入の相談など、顧客の課題解決のための最適なソリューションを提案する場であるショールームを展開している。
ミツトヨの中国法人である三丰精密量仪(上海)有限公司にて営業技術部 部長を務める松田慎也氏は「近年、中国でも工場のスマート化のニーズが増えています。蘇州のオフィスへの問い合わせも、機器そのものに対するものだけでなく、最近では機器の稼働率の把握や予防保全など、データ管理に関するものが増えています」と話す。
2019年には蘇州のショールーム「M3 Solution Center China(Suzhou)」がリニューアルされた。新しいショールームは、「高精度」「自動化」「IoT」「精密測定」「測定工具」いう5つのコンセプトのゾーンで構成され、ミツトヨが考えるスマート化された工場を実現するためのソリューションが紹介されている。
この中で自動化ゾーンに導入されたのが、B-EN-Gのmcframe SIGNAL CHAIN(以下、SIGNAL CHAIN)だ。三次元測定機を含め、合計で4つの測定機を展示しており、それぞれに装着したパトライト社の信号灯から稼働率のデータを収集し、60インチのモニターに4分割で表示する仕組みが構築されている。
「導入においては、B-EN-Gの担当者からリモートでの環境セットアップや技術サポートを提供いただいたので、大きなトラブルもなく導入できました。当初は4台の測定器の稼働率を1つの画面上で可視化する仕組みがなかったのですが、そのことをB-EN-Gの担当者に伝えると、画面を4分割にして表示できるようカスタマイズをしてもらえたので本当に感謝しています」(松田氏)
また、営業技術部 次長で蘇州地区のエリアマネージャーを務める李斌氏は次のように話す。
「蘇州のショールームは、ミツトヨの製品を直感的に感じていただける場所です。測定機とSIGNAL CHAINを連携することで機械の稼働率や稼働状況など、さまざまなデータを可視化できます。最大の目的は、お客様の工場のデジタル化を推進すること。すでに実際にショールームを見てもらい導入に至ったお客様の成功事例もあります」
中国のある企業の工場では、4台の三次元測定機が稼働していたが、かねてから稼働状況の見える化をしたいという要望があった。そこでショールームを見学してもらい、紙の資料や言葉だけでは伝わりにくかった見える化の仕組みを実際に自動化ゾーンで体感してもらい、最終的に導入が決まったという。パトライト社の信号灯やSIGNAL CHAINなどの必要な機器は、大手機械商社でB-EN-GのIoTソリューション販売も手掛ける山善の上海拠点が調達し、セットアップは山善とミツトヨの両社で実施している。
「中国でも、生産性や品質を高めたいという要望が増えていたので、SIGNAL CHAINの導入は非常に良いタイミングでした。ショールームでの見せ方も良く、お客様のニーズとも合致し、山善との共同の提案で成功事例につながりました。同様のソリューションを必要としているお客様はきっとたくさんいると思うので、どんどん訴求して同じ課題を抱えるお客様に提案していきたいと思っています」(松田氏)
今後の展望について李氏は、「ショールームで見ることができるのはあくまでもデモ環境です。実際の現場ではさまざまなニーズが出てくるので、今後はお客様のニーズに基づいて、標準機能だけでなくお客様ごとの機能を提供することが必要です。B-EN-Gと山善のサポートにより、お客様により良い提案をしていきたいと思っています」と話す。
測定機器とSIGNAL CHAINの連携で、稼働率と品質の見える化ができた。次に目指すのは予防保全だ。すなわち、機器の状態をリアルタイムにチェックして不具合の予兆を察知し、システムが止まる前に管理者に知らせてくれる付加価値サービスである。
「ミツトヨは、精密測定機器という“モノ”を売ってきた企業ですが、今後は先進技術を活用した付加価値サービスという“コト”を売っていく企業に変革することが必要です。その意味で、これからますます増えてくるであろうIoTの案件に対して、SIGNAL CHAINには大いに期待しています」と話している。
商号 | 株式会社ミツトヨ 三丰精密量仪(上海)有限公司 |
---|---|
創立 | 1934年10月22日 |
資本金 | 3億9,100万円 |
従業員数 | 単独 2,780名 / 連結 5,371名 |
事業内容 | ノギス、マイクロメータなど、精密測定機器の製造・販売を事業として展開 |
※本事例は2021年3月現在の内容です。
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載当時のものであり、変更されている可能性があります。
※本事例に記載されている社名、製品名などは、各社の登録商標または商標です。
※掲載企業様への直接のご連絡はご容赦ください。
Copyright(C) Business Engineering Corporation. All rights reserved.