約200台におよぶ機械加工設備の稼働状況をリアルタイムに可視化
現状把握→改善立案・実施までを迅速におこなう業務体制の確立
導入製品
ナブテスコ株式会社パワーコントロールカンパニーの中国現地法人として、建設機械に用いられる油圧機器(走行・旋回減速機)の製造・販売を担う上海纳博特斯克液压有限公司では、約200台におよぶ設備稼働状況の把握が困難であることが課題とされていた。ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の製造業向けIoTソリューション「mcframe SIGNAL CHAIN」を導入し、設備ごとの稼働状況をリアルタイムに可視化し、設備稼働状況を漏れなく定量的に把握することで現状把握が可能となり、あるべき設備稼働率までの改善を実施。生産性向上による原価改善や生産変動に強い現場構築など多方面での効果が得られている。
信号灯から手軽にデータを取得できるという特長を生かし、容易なシステム導入と迅速な業務改善に着手できるmcframe SIGNAL CHAINを選定。最初の支援をB-EN-Gに依頼し、設備への横展開は自社で行うことで、200台あまりの設備に対して費用を押さえつつ、2カ月という短期間で導入を実現。
ナブテスコ株式会社パワーコントロールカンパニーの中国現地法人として、建設機械に用いられる油圧機器(走行・旋回減速機)の製造・販売を手がける上海纳博特斯克液压有限公司(以下、上海ナブテスコ)。日系メーカーならではの卓越した技術と品質を強みとし、生産台数および中国国内でのシェアを拡大してきた。同社の生産総監 孔 祥震氏は「創業以来、積極的な設備投資を続けてきた結果、現在は3つの工場内に約200台の機械加工設備を配備し、年間の生産能力は約6万台に達しています」と語る。
しかし、中国国内での市場環境が変化する昨今、同社ではこれまでとは違った対応が求められるようになっていると、総経理付製造部参与 兼 生産改革室長の下野 泰樹氏は語る。「中国大都市部では若者の製造業離れによる人員不足が加速しており、当社も人材確保に苦慮しています。これまでの人海戦術に頼った生産体制では通用しなくなり、加えて、激化する価格競争にも対応すべく、今まで以上に効率的かつ高い生産性の構築を迅速に確立する必要があります」
その中で、同社が現在推進しているのが、将来のスマートファクトリー化を見据えた、「ビジュアライズファクトリープロジェクト」である。これは材料調達から部品加工・組立・出荷まですべての工程を可視化し、無駄の排除を図るものだ。「徹底した省人化を実現するとともに余剰設備を集約し、生産面積縮小につなげていきます。また日本駐在員の駐在期間には限りがあるので、日本人はサポート側にまわり、現地の管理職、スタッフで容易に現状把握ができて迅速に改善へ繋げて結果が出せる体制づくりでシステムの構築が必要でした」と下野氏は語る。
上述したプロジェクトにおいて、最も重要な鍵を握っているのが工場内の約200台に及ぶ機械加工設備の稼働状況の可視化だ。これを実現するIoTソリューションを比較検討した結果、2022年9月に導入したのが、B-EN-Gの「mcframe SIGNAL CHAIN(以下、SIGNAL CHAIN)」である。
PLCなど生産設備から直接稼働データを取得して可視化するIoTソリューションも選択肢にあったが、システム構築や運用が複雑化することを懸念。これに対してSIGNAL CHAINは、各設備にすでに取り付けられているパトライト社の信号灯を利用して稼働データを収集することが可能だ。「私たちが目指す設備稼働状況の可視化は、信号灯から取得できるデータがあれば要件として十分でした。こうした手軽さもSIGNAL CHAINを選定した理由の1つです」と下野氏は語る。
特に選定の決め手となったのがサポート体制だ。実は、もう1社比較検討した日系ベンダーからもパトライト社と連携したIoTソリューションが提案されていたが、日本国外の運用開始後のサポートはほとんど期待できなかったという。「これに対してB-EN-Gは上海に現地法人があり、何か問題が生じた際にもすぐに相談できる安心感がありました」と下野氏は語る。さらに孔氏も「内製による導入(設定作業)を想定していた私たちに対して、B-EN-Gは事前に入念なトレーニングを実施してくれました。そのおかげで採用決定から2カ月後の12月までに、工場内のすべての設備においてSIGNAL CHAINの利用を開始することができました」と続ける。
現在、上海ナブテスコでは工場内に設置された約200台の設備をリアルタイムに監視している。SIGNAL CHAINのアンドンやガントチャート機能などで各設備の稼働時間や停止時間などの状況が可視化され、これにスタッフの稼働データを突き合わせることで、「スタッフの有効な時間・無駄な時間がはっきりわかるようになり対策が打ちやすくなりました」と製造部部長 朱 军萍氏も評価する。さらに、製造部 機械課 課長 聂 庆氏も、「現場のスタッフのマネジメントの観点で利便性が向上しています」と続ける。
こうした可視化の効果が得られたことで、同社では、生産性改善や設備の稼働率に向けたさまざまな取り組みが進んでいる。例えば、稼働率が低い設備が明らかになった場合は、複数の部品を1つの生産ラインに集約するなどしてラインの最適化を実施。稼働率がアップしたことで、外注していた点検作業なども自社で行うようになりコスト削減にもつながっている。将来的には、設備だけでなく工場も1つに集約して無駄を排除することも視野にいれているという。人材配置の観点からは、空いたスタッフに別のラインを担当させるなどして「多能工化」にも取り組んでいる。スタッフ自身のスキルや改善意識も高まり、現場の改善提案は、SIGNAL CHAIN導入前に比べて10倍以上も挙がるようになったという。
「人員不足の課題を解消し、かつ生産変動に強い柔軟なものづくりの体制を構築するには、どのラインでも担当できるスタッフを育成することが重要です。SIGNAL CHAINでの可視化によってこうした取り組みが加速しました」(下野氏)人的リソースの制約から外注していた設備メンテナンスも、現在では自社でまかなえるようになり、「1設備あたり4,000元のコスト削減効果を得られています」と孔氏は語る。
SIGNAL CHAINによる可視化の仕組みは、導入後一貫して安定稼働しており、導入に携わった製造部 生産技術課長の钱 政华氏も「導入したシステムで迅速に最大限の効果を生み出している」と評価する。この成果を踏まえつつ、同社は引き続き取り組みを進めていく予定だ。「まだ見える化できていない工程や作業を見える化した後、さらに強化していきたいのが解析のフェーズです。無駄が発生していないか、改善できるところがないかを徹底的に洗い出し、対策を講じ、スマートファクトリー化の実現を目指していきます」(下野氏)
商号 | 上海纳博特斯克液压有限公司 |
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創業 | 1996年3月26日 |
従業員数 | 296名 |
事業内容 | 建設機械用油圧機器の製造・販売 |
※本事例は2023年10月現在の内容です。
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