国際事業を強化しているセンコーグループホールディングスは、強みとするM&Aのノウハウを活かしながら海外事業を大きくしてきた。だが、そうした中で課題となったのが財務経理業務である。各拠点がバラバラの会計システムを利用したままでは、連結決算にも多大な時間と手間を費やしてしまう。そこでグローバル共通の会計システムとしてビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のmcframe GAを導入。本社および各拠点の業務負荷軽減を実現するほか、経営の意思決定を支える管理会計の取り組みを強化し始めている。
物流事業を中心に商事・貿易、ライフサポート(介護、フィットネス、食など)、ビジネスサポートなど、多様な事業を展開しているセンコーグループ。積極的なM&Aを推進しているのが特徴であり、現在傘下のグループ会社の総数は176社(2023年10月現在、非連結も含む)に拡大。2023年3月期における総営業収益は約7000億円に達している。
センコーグループは「Moving Global 物流を超える、世界を動かす、ビジネスを変える」のスローガンのもと、グローバルでの事業拡充や、フォワーディング、貿易事業の伸長を中心に海外事業を大きくしてきた。同社 常務理事 経営戦略本部 グループ管轄部長の池内克年氏(以下、池内)は、「当初は海外展開を進める日系企業の物流をサポートする形で国際事業に乗り出しましたが、現在は日系企業以外の荷主の需要や商事・貿易などのビジネスも拡大させていこうとしています」と語る。
強みとするM&Aのノウハウを活かしながら、現地の物流会社などを傘下に加えて商圏を拡大していくというのが同社の基本戦略だ。とはいえそこにも課題はある。どんどん増えていく海外子会社はもともと日本とは異なる文化をもつ現地企業であり、日本本社側を含めて各拠点のデータを統合した経営管理基盤の整備がなかなか追い付かない状況にあった。「例えば連結決算のための財務会計データを各拠点から収集しなければなりませんが、当然のことながら現地語でしか記述されておらず、勘定科目も異なり、情報の精度にもバラツキがありました」(池内)
同社では、海外の各拠点から集めた財務諸表や決算書を日本の書式にマッピングする作業をグループ会社のセンコービジネスサポートに委託し、その上で連結決算を行っていた。しかし、このプロセスはほとんど手作業であり、多大な時間とコストを要してしまっていたのだ。ましてや管理会計で必要となる仕訳データなどの粒度の細かい計数情報の入手はより困難であり、各拠点の経営状況をタイムリーに把握することができなかった。
この課題を解決すべく同社は、2019年頃からグローバルな経営基盤となる会計業務のルールとオペレーションの整備、経理人材面の手当など、段階的に対策を進めてきた。そして、その最終ステップとして検討を開始したのがグローバル共通の会計システムの導入である。
2020年12月、会計系コンサルタントから海外導入経験が豊富なITベンダーとして紹介された9社に対してRFP(提案依頼書)を配布。応募のあったパッケージの中から総合評価を経て、mcframe GAを選定した。
「グローバル共通の会計システムに加え、各海外子会社が独自に利用している会計システムからデータを一元的に収集する『Global Link』という機能を備えていたことも大きかったです。これがあれば現地の文化や主体性を尊重しつつ、仕訳データや資金データなど詳細な計数情報を本社から直接取得し、管理会計に生かすという柔軟な対応が実現できます。標準会計システム導入と合わせ、現地の会計システムからデータを収集する仕組みの両方を提案したのはB-EN-G一社でした。加えて当社の拠点が多く点在するタイならびに中国における導入実績の多さ、導入支援体制の信頼性も選定に至った大きな要因でした」(池内)
こうしてmcframe GAを導入した同社は、2021年4月より効率的な連結決算の業務プロ セスを実現できる本社機能の開発に着手した。同社 経営戦略本部 グループ管轄部 財務システム企画担当部長の濱口三佐夫氏(以下、濱口)は、「コロナ禍で対面の機会が限られる困難な時期ではありましたが、B-EN-Gのコンサルタントは公式の会議体のみならず、インフォーマルなコミュニケーションも通じて親身なサポートを提供し、開発プロジェクトを円滑に進めてくれました。あわせて的確なスキルトランスファーを実施してくれたおかげで、mcframe GAの今後のメンテナンスや追加開発にも、ある程度内製できる技術力を習得することができました」と、B-EN-Gの貢献を高く評価している。
上記の本社機能開発と並行する形で、2022年2月末までかけて進めてきたのが海外子会社に対するmcframe GAのパイロット導入である。最初の拠点に選んだのは、タイのバンコクにあるSENKO(THAILAND)だ。
「最初は小規模な拠点から着実に成功事例を作っていくという考え方もありましたが、あえてASEAN地域における国際物流事業の中核拠点であるタイから始めることにしました。実際に多くのビジネスを手がけている拠点で実績を作ってこそ、その後の本格的なグローバル展開で役立つノウハウを蓄積できると考えました」(池内)
続く2つ目の拠点に選ばれたのが、中国広州市にある広州扇拡物流有限公司だ。「こちらの拠点の特徴は、弊社の海外子会社の中でも歴史が古く、すでに大量のデータが蓄積されていることです。また、まずこの広州で実績ができれば、中国全域に広がる他の拠点においてもmcframe GAを使ってみようという雰囲気がおのずと醸成されるという狙いがありました」(池内)
こうして2つの拠点でのパイロット導入を成功させた同社は、その経験を活かすことで当初導入計画先の全22拠点への展開を2023年5月末までに完了することができた。この効果はさまざまな形であらわれている。
「これまでセンコービジネスサポートに委託していた、海外子会社から集めた決算書のデータ変換・マッピング作業はほぼなくなり、連結決算書作成のために経理部門の担当者が費やす工数も5分の1程度に削減されています」(濱口)
そしてmcframe GAは、国際物流事業のあり方そのものを大きく変革しつつある。「一部の海外拠点では経営管理報告の自動作成を実現し、作業負荷の軽減と迅速な経営判断の 一助となっています。また本社を含めて標準会計システムを理解する関係者が増えたことにより、業務オペレーションにトラブルが発生した際にも柔軟な対応が可能となりました」(池内)こうした成果を足場としながら、同社は経営層における意思決定のスピードアップと経理・財務に関する現場業務の効率化の双方に貢献するmcframe GAのさらなる活用を進めていく意向である。
センコーグループホールディングスでは中国に12の拠点(連結ベース)を構えている。各拠点の財務経理情報を集約して日本本社へ送る役割を担っているのが、上海に拠点を構える上海事務所だ。mcframe GA導入の効果を現地メンバーに聞いた。
ASEAN地域における国際物流事業の中核拠点であるタイ。3つの現地法人では、それぞれ異なる会計システムが導入されていたが、機能が不十分で財務経理業務の担当者は不満を募らせていた。導入対象となった2社においてmcframe GAがこの課題を解決し、業務効率を向上させている。
商号 | センコーグループホールディングス株式会社 |
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創業 | 1946(昭和21)年7月 |
資本金 | 284.8億円 |
従業員数 | 23,727名 |
事業内容 | 物流事業、商事事業、ライフサポート事業、ビジネスサポート事業、プロダクト事業 |
※本事例及び発言者の部署、肩書は2023年8月取材時点の内容です。
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