ナット&ボルトの専門メーカーである株式会社杉浦製作所(以下、杉浦製作所)では、インドネシア拠点で使用していた生産管理システムのサポート担当者(ベンダー)の退職によるブラックボックス化・運用リスクが課題となっており、その刷新が急務であった。そこで、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の製造業向けパッケージ「mcframe」を採用して、カンバン方式やインドネシア特有の商習慣にも対応した生産管理システムの移行を実現した。
1939年に、合名会社杉浦製作所として創立され、同年よりトヨタ自動車工業株式会社(現:トヨタ自動車株式会社)との取引を開始した杉浦製作所。さまざまな種類のナット・ボルトを製造する自動車用機能部品・締結部品メーカーとして、設計から加工、品質管理まで、全工程の自社一貫生産体制を確立している。優れた品質管理と実績が評価され、2019年の創立80周年には、「トヨタ品質管理優秀賞」を受賞している。
杉浦製作所では、2012年にインドネシアでの生産拠点となるPT.SUGIURA INDONESIAを設立。設立当初から同拠点で使用されていた海外製の生産管理システムは導入から5~6年が経過しており、サーバーの更改が迫っているほか、サポートの問題が生じていた。
同社 製造本部 改善推進室 次長の坂部孝志氏は、「日本語で対応していただいたサポート担当者が退職してしまったことで、以前のようにスムーズかつ満足のいくサポートを受けられなくなったことが問題でした。そのため、次のシステム更新では現地で十分なサポートを受けられるパッケージシステムを採用することを優先的に検討しました」と話している。
杉浦製作所にとって現行システムに大きな不満はなかったことから、新しい生産管理システムやベンダーの選定条件として重視したのは、現行システムの機能要件を満たせるかどうかであった。それに加えて、特に懸案事項となっていた「現地での十分なサポート対応」を実現できるかも含めてシステムの比較検討を行った。
当初はスクラッチ開発も検討したが、比較検討したもう1社のベンダーは、インドネシアでのサポート体制がなかったことから、インドネシアに現地サポート体制があるB-EN-Gのmcframe生産管理が採用された。また杉浦製作所では、2016年からmcframe原価管理を国内拠点ですでに利用しており、そこでの導入実績も同社がmcframe生産管理を採用した理由の1つだという。
さらに、トヨタが主要な取引先である同社にとって機能要件の中でも不可欠だったのがカンバン方式への対応だ。
同社の総務部 IT推進課 課長の山田佳弘氏は、「カンバン方式に対応できる製品は少なかったのですが、B-EN-Gからはmcframeをカスタマイズして対応できるという自信を持った回答がありました。当初は少し心配もありましたが、提案から導入までスピーディに対応いただけました」と話している。
インドネシア拠点のmcframe生産管理は、現地の担当者が運用することから、導入にあたり現地のキーマン2名を選出し、B-EN-Gがサポートすることでプロジェクトを推進。この2名は生産管理の担当で現行システムにも詳しかったので、基本的な要件定義などは現地の担当者で実施し、要件定義後は現地の日本人マネジャーがサポートした。
要件定義で議論が白熱したのは生産計画の思想の違いだった。安定在庫を考慮した在庫補充型の生産計画か、需要に対して生産計画を立てていくMRP方式なのかなど、その思想の違いを理解しながらシステムの調整を行っていくのが苦労したポイントだったという。
「パッケージの標準機能が業務にあわなかったので、プロトタイプを作って業務に合わせて改善していくmcframeの特長を生かした開発を進めました。インドネシア特有の商習慣も、インドネシア用のテンプレートを利用することで対応できました」と坂部氏は話す。
現在、インドネシアの拠点では、mcframe 生産管理と旧システムを並行稼働している。
PT. SUGIURA INDONESIA Production Advisorの高須正太郎氏は、「コロナ禍により検証が遅れており、現状では本稼働でフル生産までには至っていませんが、本稼働後の効果は期待できます。現場では何も入力することなく、バーコードを読ませるだけで帳票が出て、出荷まで処理が流れ、照合もできて業務を効率化できる理想的な生産管理システムを実現しています」と話している。
既存の機能や使い勝手を維持しつつ無事にシステムの刷新を行った杉浦製作所。導入から現在に至るまで、インドネシアにおけるB-EN-Gのサポートについて、同社の取締役 兼PT. SUGIURA INDONESIA PRESIDENT DIRECTORの滝祥志氏はこう総括する。
「問い合わせや依頼にも迅速に対応していただき、サポート体制は非常によかったと感じています。これがもし日本にしかサポート窓口のないベンダーであったら導入にもっと時間がかかったと思います。mcframe生産管理を選定した最大の理由は、インドネシアの地でありながらもB-EN-Gの導入コンサルタントは現地の言葉で直にサポートや開発をしてくれることでした。途中経過も常に状況を報告されていたので、安心して任せることができました」と話す。
今回、導入されたmcframe生産管理は、まずは旧システムの機能の現状維持が目的であり、その点は達成できていると滝氏は言う。それを踏まえたうえで同氏は「生産管理をさらにうまく回すことが目標です。将来的に、売上、仕入、原価までつなげることで、最終的には、拠点や品目ごとの原価管理まで実現したいと思っています。B-EN-Gには引き続き同様のサポートを期待しています」と今後の展望を語った。
1939年、合名会社杉浦製作所を創立。トヨタ自動車工業株式会社(現在のトヨタ自動車株式会社)との取引を開始。1963年に、社名を現在の株式会社杉浦製作所に変更。国外では北米、欧州、中国、インドネシアに拠点を構え、グローバルに事業を展開する。2019年の創立80周年には、「トヨタ品質管理優秀賞」を受賞している。
商号 | 株式会社杉浦製作所 |
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創業 | 1939年5月 |
資本金 | 4,800万 |
従業員数 | 1,000名(連結:2019年度) |
事業内容 | 設計から加工、品質管理まで、全工程の自社一貫生産体制により、自動車用機能部品、締結部品の製造を事業として展開。 |
※本事例は2020年10月現在の内容です。
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