レジスト現像液をはじめ、半導体製造プロセスに関わる各種化学製品を製造・販売する多摩化学工業株式会社では、半導体メーカーが求める高い水準の品質を実現すべく、SPC(Statistical Process Control:統計的工程管理)などの手法を用いて製品を管理している。しかし、メーカーが求める品質管理の水準が年々高まっていたことから、より高度な管理体制の整備が必須だった。またシステム管理の属人化も問題になっていた。そこで、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のデータ記録・分析・活用ツール「mcframe RAKU-PAD」(以下、RAKU-PAD)を導入。既存システムの代替として用いるだけでなく、分析機器からの自動データ取り込みも実現するなど、その応用範囲をさらに広げつつある。
mcframe RAKU-PADを用いて、現場データの入力からSPC(統計的工程管理)手法に沿った管理図の作成、また異常の兆候につながる変化の判定とアラートの自動化までを実現。さらに一部の分析機器からは検査データの自動取り込みも可能とし、品質と業務効率の両立を図っている。
多摩化学工業は、半導体や液晶パネルなどで使われる薬液を製造する化学メーカーだ。同社の化学薬品は、成分濃度の変化や不純物の有無によって、半導体や液晶などの製造に関する歩留まりが大きく変わるため、非常に繊細な品質管理が必須となっている。そこで同社では、製造部門や品質管理部門でSPCの手法を取り入れ、品質を担保している。四日市工場を統括する和泉伸次氏は、以下のように説明する。
「製品の成分濃度や不純物含有率などを公差の範囲内に収めるのは当然のこと、公差内でもどのような変化や傾向があるのかを把握し、X-Rs管理図(※計量値データから工程に異常を判別する管理図)と異常判定ルールに基づき対応することで品質向上に取り組むと同時に、半導体メーカーにも品質管理データを共有し、品質の担保に努めています」
多摩化学工業では、半導体メーカーの要望に応えるべく、品質管理データを管理するアプリを自社開発したが、属人化の問題が生じていた。
「これまでデータ入力の際にはExcelで作成した帳票を使い、集計は自社開発のアプリを使用し、統計処理や管理図を作成していました。このアプリは、問題の予兆を迅速に見極めて対処できるように、異常の兆候となる基準に沿って判定、アラートを発する仕組みとなっていました。ですが、アプリを開発した社員が退職してしまったため、需要増への対応を見据えた全社的なDXを加速させるためにも、システム全体の将来性を早急に考える必要が出てきました」と、品質保証部の小松貞介氏は説明する。
多摩化学工業では、移行先としてパッケージソフトウェアを活用する方針で検討を開始した。
「B-EN-Gに相談したところ、RAKU-PADの提案を受けました。RAKU-PADは入力と集計・分析の両方を一つの製品で対応できるだけでなく、既存システムとほぼ同じ機能を搭載するなど、当社の要件を網羅していました」(小松氏)
さらに、導入にあたり入力フォームにも改良を加えている。
「RAKU-PADはフォームの作成・編集機能が充実しており、さまざまなアレンジが効きます。そのため既存のExcel帳票をそのまま使うのではなく、項目によっては手入力でなく選択式に切り替えるなど入力のしやすさを考慮しました」(小松氏)
こうしてRAKU-PADへの既存アプリ機能の置き換えが進み、次第に適応範囲を拡大。タブレット端末からの入力だけでなく、製品濃度や不純物含有量などを分析する精な機器の一部がRAKU-PADと連携し、データを自動で取り込めるようになった。
「自動取り込みは導入当初から検討しており、最優先である既存システムの移行が済んだので順次着手しています。また、分析機器のシステムとRAKU-PADの連携により、機器のデータをシステムに手入力する必要がなくなり、時間短縮や入力ミス防止につながりました」(小松氏)
RAKU-PADの効果について、現場の従業員たちは高く評価している。
「Excelの無機質な帳票から、タブレット端末のRAKU-PAD入力フォームに切り替わり、入力画面が見やすくなりました」(製造三課 係長 織田信一郎氏)
「これまで分析機器のデータをシステムに手入力していましたが、入力桁数が多いうえに、1日に何度も行うため、時間がかかり入力ミスも生じていました。今はRAKU-PADと連携されたことで、ボタン一つ押すだけでデータが自動で取り込めるようになりました。さらに、RAKU-PADに入力されたデータからSPC手法に沿った管理図を作成し、異常の兆候をアラートで通知する仕組みを構築したことで、品質管理の質の向上にもつながりました」(管理課 分析Gr 横川未来氏)
「工場全体の製品データの確認にRAKU-PADを使うことで利便性が向上しました。特に自動取り込みに対応した箇所では、製品名やロット番号などをチェックするだけで済み、大幅に効率が上がっています」(品質管理グループ 品質環境Gr チームリーダー 佐藤将大氏)
また、和泉氏は「RAKU-PADにより、品質管理データの提出スピードが大きく向上しました。入力や分析が必要なデータ項目が増えていく中でも業務効率を向上させていく必要があるため、入力作業を代行してくれるツールは大いに助かります」と評価している。
多摩化学工業では、今後もさらにRAKU-PADの活用を広げていく方針だ。
「四日市工場では、分析機器が約20台ありますが、RAKU-PADへの自動取り込みを実装したのは4台だけなので、順次接続していこうと考えています。また、四日市工場以外の各工場でもRAKU-PAD導入の検討が始まっています。製品によっては同じものを複数の工場で作っており、そういった製品に関しては品質管理データの扱いを共通化していくことを目指しています」と、和泉氏は語る。
続けて小松氏は、「B-EN-Gは、最初の提案のときからシステムの仕組みを分かりやすく伝えてくれるなど、さまざまな形で協力してくれました。導入後も、当社の要望した機能をすぐに反映するなど、ユーザーのためを思って活動してくれています。今後も引き続き、役立つ機能の追加などを期待しています」と語る。
商号 | 多摩化学工業株式会社 |
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創立 | 1949年 |
従業員数 | 350名(単体)・1,090名(関連会社含む) |
事業内容 | 化学品の製造販売 |
※本事例は2023年9月現在の内容です。
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