ゼブラでは、構築から30年以上が経過し、管理が属人化、煩雑化した自社開発の基幹システムを刷新することを決定。ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の製造業向けパッケージ「mcframe」を採用した。これにより、生産管理と販売管理がシームレスにつながり、生産状況をリアルタイムに“見える化”できるようになるとともに、業務の効率化を実現している。
構築から30年以上経過した基幹システムを刷新することを決めたゼブラ。フィット&ギャップ分析の結果、最もフィット率の高かったmcframeを採用することで、生産管理と販売管理を連携し、生産状況の見える化を実現した。
1897年に「石川ペン先製作所」として創業し、すでに120年以上の歴史を持つ筆記具メーカーであるゼブラ株式会社(以下、ゼブラ)。現在も、多くの漫画家が好んで使用する「鋼ペン先」を、日本で初めて発売したのがゼブラである。1914年には、鋼ペン先の商品ブランドを「ゼブラ」に変更するとともに、ゼブラのマークを採用した。
1959年には、保存性の良いボールペンインクの開発に成功し、ボールペンの生産、販売を開始。1963年に、社名を現在のゼブラに変更。その後、3色ボールペン、透明軸ボールペン「クリスタル」や、速乾性油性フェルトペン「ハイマッキー」、シャープペンシルとボールペンを一体化した「シャーボ」、ノック式ジェルボールペン「サラサ」など、次々とヒット商品を発表している。
さらなる成長のためにグローバル化も推進しており、野木工場(栃木県)のほか、インドネシア工場とメキシコ工場の3つの拠点で商品を生産している。現在、100カ国以上で商品を販売。海外の売上が全体の半分を占めるまでに市場が拡大している。「最大の強みは、ゼブラという社名の実績とブランドに対するお客様の信頼です」と話すのは、取締役 社長室 室長の石川太郎氏だ。
石川氏は、「いつも群生し、常に一致協力して生活を守り続けるシマウマ(ゼブラ)のように、全社員が堅く団結し、文化の向上、発展にかかせない筆記具の製造に邁進することを目指しています」と説明する。この企業理念こそが、後述するmcframeの導入プロジェクトの推進にも大きな成功要因となっている。
ゼブラでは、自社開発した販売管理システムと生産管理システムを中心に物流システムを追加した基幹システムをオフコンで運用してきた。このシステムは、構築から30年以上が経過していたため、マニュアルがほとんど残っておらず、システムの運用管理やメンテナンスが属人化し、煩雑になっていた。
社長室 IT企画推進課 課長の中島学氏は、「オフコンの仕組みを理解している担当者が退職していることもあり、特に基幹システムのメンテナンスが困難になっていました。今後、消費税や元号の変更も予定されていますが、そうした制度の変化に柔軟に対応できるシステムの構築が急務でした」と当時を振り返る。
業務面でも、オフコンの基幹システムでは、定型帳票や一部のデータしか出力することができず、各部門で自由にデータを抽出、加工、分析して、現状を把握することが困難だった。中島氏は、「業務のノウハウも属人化しているため、当時の担当者しかわからないことが多く、データの管理も煩雑になっていました」と話す。
情報システム部門に対し、「データ抽出を何とかしてほしい」という要望も多かったが、タイムリーな対応ができない状況だった。そのためユーザー部門の作業負荷が増大し、無駄なコストや時間が発生していた。このほか、課題として大きかったのはシステムの一貫性が不十分であったことだ。社長室 IT企画推進課の塚田和良氏は、「生産管理と販売管理が別々に運用されており、バッチ処理でデータを連携していました。そのため、欠品が発生してもリアルタイムにその対応ができませんでした。また、生産管理システムの製造実績入力画面が3つあり、製造部門内でも異なっていたので、製造部門内での異動が発生した場合でも、一から業務を覚え直すことが必要でした」と話す。
これらの課題を解決することを目的に、2014年にみずほ情報総研株式会社(以下、みずほ情報総研)に基幹システム刷新を含めた業務改革コンサルティングを依頼。現状分析から課題抽出、システム要求策定、パッケージ選定までのコンサルティングを実施した結果、2016年3月にmcframeの導入を決定した。
mcframeの導入にあたり、2016年に始まった要件定義、基本設計から、その後の詳細設計・開発・テスト、導入支援、定着化支援を経て、2018年5月にmcframeを本番稼働。その後、2018年8月まで、安定化支援を実施した。新しい基幹システムにmcframeを採用した理由を社長室 業務推進課の星太輝氏は、次のように語る。
「2012年に、mcframe原価管理オンラインを導入した実績があったので、mcframeの導入に抵抗感はありませんでした。生産管理では、“かんばん方式”を実現できることがポイントでした。また、mcframeの柔軟にカスタマイズできる点、永続的なサポートを公約している点も評価しました」
またフィット&ギャップ分析で、mcframeのフィット率が最も高かったことや、コスト面での評価が高かったことも採用を後押しした。石川氏は、「機能的にも、mcframeは魅力的でした。7社の提案を検討しましたが、今回の基幹システムの刷新において、最も適応していた提案が、mcframeでした」と語る。
mcframeの導入では、各部門からプロジェクトリーダーを選出し、さらに各業務に精通した数名ずつのキーマンでプロジェクトチームを編成。各業務の キーマンが中心になり、mcframeのトレーニングなどの全社展開を実施した。石川氏は、「mcframeの導入を成功させるために、全社のリソースを集中させて対応しました」と話している。
mcframeを導入した効果について、社長室 IT企画推進課の長島夕貴氏は次のように語る。「以前は、販売データの入力にスキルが必要でしたが、mcframeでは直感的な操作でデータ入力ができるので、新しい受注担当者でも、短期間で業務を覚えることができます。また、国内外で別々のシステムで管理していた売上を一元管理できるようになったので、受注の進捗もすぐに把握できるようになりました」
また、社長室 業務推進課 課長の櫻井直樹氏は、「mcframeの画面には、ユーザーに使いやすい機能が備わっています。例えば、検索機能で商品コードを検索でき、その検索結果はコピー& ペーストできるので、かなりの省力化を実現しています。こうした影響もあって、内勤営業の残業時間も大きく削減されました」と話す。
一方、生産管理におけるmcframeの効果について社長室 IT運用課の狐塚一浩氏は、「以前は、生産側のデータと販売側のデータが連携されていなかったため、在庫情報が見えにくいという課題がありました。mcframeを導入したことで、生産管理と販売管理が連携され、全体の在庫状況をシームレスに見える化できました。また、ロットトレース機能も強化されています」と語る。またこうしたシステム間連携による見える化は営業担当者の納期回答にもメリットを与えている。
そのほかにも、業務効率の改善はさまざまな所で表れている。櫻井氏は次のように説明する。「これまでは、基幹システムと名入れ(筆記具に社名や個人名を入れるサービス)システムが連携されていなかったので、名入れシステムと基幹システムの両方に名入れ用のデータを入力しなければなりませんでした。mcframeを導入したことで、生産管理と名入れシステムの連携が
密になり、データの入力が1 度で済むようになりました。これにより、作業負荷を半分に削減することができました」
データ抽出が高速化されたこともmcframeの導入効果の1つだ。櫻井氏は、「以前は、1カ月分のデータを抽出する作業に丸1日かかっていましたが、今では同じ作業を数分で行うことができます。またExcel形式で抽出できるので、すぐに加工して活用できます。これまでは、すべて手作業でしたが、現在はデータ抽出から加工、BIツールによる分析まで、すべてが自動化されています」と話している。
新たなシステムでは、在庫管理が一元化されたことも大きな効果の1つだ。これまで物流在庫と経理在庫が別々に管理されていたので、2つの画面を操作しながら出荷作業をしなければならなかったが、mcframeによって在庫管理が一元化されたので操作が容易になった。
物流部 物流課の村上喜洋氏は物流の観点からもその効果を実感している。「受注が見やすくなり、出荷と受注の関連をすぐに把握できるようになりました。出荷の修正があったときも、データを簡単に修正できるようになっています。以前は、出荷修正があっても、物流部門だけでは修正ができず、情報システム部門に依頼して対応してもらう必要がありました。mcframeでは、物流部門と営業部門で出荷を修正できるので非常に便利になっています」
なお在庫は、これまでシステム上は用途を管理できていなかったため、例えば海外用に製造したはずの部材が国内用に転用されてしまうこともあり、生産が遅れてしまうこともあったが、新しいシステムでは解消されている。
またインクの管理についてもより正確になっている。「これまでインクの使用期限がシステム上では管理されていなかったため、廃棄が多いという課題がありました。mcframeによって使用期限ごとにロット管理でき、古いものから確実に出荷するようになったことで、廃棄量の削減が期待できます。具体的には、廃棄量の2割削減が見込まれます」と星氏は説明する。
さらにインク管理はその使用量を小数点まで管理できるようになったため、原価管理での精度向上にもつながっているという。
今後、ゼブラでは、独自の原価計算をしているインドネシア工場にもmcframeを導入することで、本社と同じ原価管理を実現する計画だという。その後、メキシコ工場にもmcframeを展開し、グローバルで統一した原価計算ができる仕組みの実現を目指している。石川氏は、「まずは原価管理をグローバルで統一することが最初のステップ。その後、生産管理や販売管理もmcframeで統合していきたいと思っています」と語る。
石川氏はさらに、「mcframeの導入で、データ基盤を確立し、これまで見えなかった状況が見えるようになりました。今後は、データをいかに事業に活用していくかが重要になります。今後は、現場で長年培ってきた経験や勘などのこれまでの良い部分は残しつつ、数字に基づく分析による意思決定によって経営を強化していきたいと思っています」と話している。
商号 | ゼブラ株式会社 |
---|---|
創業 | 1897年3月8日 |
資本金 | 9975万円 |
事業内容 | ボールペン・シャープペン・マーカーなど各種筆記具の開発・製造・販売 |
※本事例は2018年9月現在の内容です。
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載当時のものであり、変更されている可能性があります。
※掲載企業様への直接のご連絡はご容赦ください。
Copyright(C) Business Engineering Corporation. All rights reserved.