「お客さまとともに発展する」という経営理念に基づき、板金、プレス、切削・構機、工作機械の4つの事業を展開するアマダ。 30年間、使用してきた生産管理システムが硬直化し、属人化してきたことから『MCFrame XA 生産管理』を導入。受注から出荷までの見える化を実現したほか、海外拠点への短期導入を可能にしている。
アマダでは、リーマンショック以降の円高や景気変動などに伴い、国内だけでモノづくりをしていては、製品を供給しきれないという経営課題を抱えていた。この経営課題を解決するためには、海外拠点での生産を強化することが必要であると判断。国内拠点から重要なパーツを、北米、欧州、アジア、中国の4地域に展開している製造拠点に供給し、各拠点でモジュール品を生産するという新たな経営施策をスタートした。
このとき、各拠点が無手勝流にモノづくりを推進することは、品質管理やコスト管理の側面からも好ましくない。そこで国内外の拠点で生産管理システムを共通化していくことが必要だった。しかし当時の生産管理システムである「SONICS」は、30年前に構築された仕組みであり、MRPを中心に時代の流れにあわせてカスタマイズしながら使ってきたものの、さすがにシステムが硬直化しはじめていた。
またプラットフォームに国産メインフレームを採用していたことも、海外拠点への生産管理システムの展開を困難なものにしていた。さらに30年間という年月を経ていることから、開発当時20代だった技術者も50代になっており、技術者の高齢化とともに、開発した当事者にしか仕様の詳細が分からないなど、システムの属人化も進んでおり、システム開発メンバーや利用技術の世代交代も求められていた。
こうした課題を解決し、海外拠点への生産管理システム導入を実現するために、2010年より生産管理システムを中核としたグローバル製造システム構築の検討を開始。執行役員 ICT部門長である武尾清氏は、「今後のグローバル製造システムは、オープンな標準技術を採用することが必要でした。そこで、いくつかの製品やソリューションを評価しましたが、なかなか"これだ!"という切り替え方式が見あたりませんでした」と当時を振り返る。
「これまでSONICSで実現していた生産管理システムの仕組みをそのままオープン系システムに移行できることが最低条件でした。また、パッケージシステムをエンジンとして中心に置き、独自に開発した機能やカスタマイズした機能、既存システムなどを柔軟に連携できることも必要でした。機能を最大公約数化して、どこの拠点でも使えるものを採用するという要求を満たすことが重要でした」(武尾氏)。
生産管理システムに対し、独自の文化を持っていることがアマダの強みであるが、そのひとつに、「良い生産管理システムを導入すれば何十年でも使い続けることができる」(武尾氏)という確固たる信念がある。良い生産管理システムの条件を武尾氏は、「ソースコードが提供されていること、開発者の調達が容易なJava言語で開発できること、そしてアマダの開発フレームワーク上で動作することの大きく3つです。この基準で検討した結果、MCFrame XA 生産管理(以下、MCFrame)を採用することに決めました」と話している。
アマダでは2010年10月に、ICT部門、生産管理部門、調達部門から必要なメンバーが集まって、MCFrameを採用したグローバル製造システムの構築プロジェクトを発足。その後、要件定義からシステム構築、運用テストなどのフェーズを経て、2012年2月にMCFrameを採用したグローバル製造システムを本番稼働した。MCFrameは、メインフレーム上で稼働していた生産管理システムであるSONICSをリプレイスする形で導入されている。なお、昔から基幹システムやインフラ全般をサポートしている富士通株式会社が今回のパッケージ導入支援を行った。 今回、構築されたグローバル製造システムは、MCFrameをベースとした生産管理システムであるATSと情報系システム「AM-HIT'S」などのシステムで構成されている。経営管理本部 ICT部門 開発製造ICT部 製造IT企画グループ リーダーである坪井弘国氏は、「本番稼働当初は、既存のSONICSの機能が一部に残っていますが、最終的にはすべての機能をMCFrameの機能で置き換えます」と言う。
MCFrame導入時の苦労を、経営管理本部 ICT部門 ICTシステム部 ICTソリューショングループ リーダーの宮渕貴之氏は、「1年かけて国内システムを開発していく中で、約600件の課題が発生しました。MCFrameの基本機能を使えば問題はないのですが、アドオン開発が課題でした」と話す。たとえば、計画されたオーダーに対する仕組みに問題はなかったが、「こういう仕様に変えてほしい」という計画外のオーダーに対応するためにアドオン開発した「都度都度発注」に不具合があり、そのフォローに時間を費やした。
また、部品表がSONICSから完全に移行できていなかったことが判明したが、すでにMCFrameで部品表を使用していたので、差分だけを再度移行する必要があり、この作業にかなりの労力が必要だった。宮渕氏は、「国内システムの開発が大変だった分、北米拠点への展開は容易でした。北米の拠点はExcelベースで生産管理を行っており、移行するデータがなく新規の状態だったことも要因のひとつです」と言う。 アマダでは、2013年2月に米国の拠点にMCFrameを導入した。宮渕氏は、「国内のシステム刷新には、少し時間がかかりましたが、海外拠点への導入は、そのときの経験とノウハウを生かすことができたので問題なく導入できました。MCFrameを使って基盤さえ作ってしまえば、それを海外拠点に展開するのは非常に楽で、約5カ月という短期間で北米の拠点に展開することができました」と話す。また2013年3月末には、同様の方法で中国の拠点へのMCFrameの導入も完了している。
宮渕氏は、「国内で導入しているMCFrameを、そのまま北米と中国の拠点に展開しています。ただし、注文書などは各拠点で内容が違ってくるので、必要最低限の機能だけローカル仕様にカスタマイズしています。基本的に、最上位の部品表から生産計画を入れて、MRPで手配書を出し、製造指示に回すというコアの業務はすべての拠点で同じ仕組みを利用できるのでMCFrameは本当に便利です」と話している。
MCFrameを導入した効果を武尾氏は、「部品レベルで世界各国の拠点の生産情報が共有できるようになったのは非常に大きなインパクトでした。製造業では、正しい情報が見えないと、あらゆる管理がうまくいきません。MCFrameで情報を共通化して管理することで、現場を"見える化"し、業務の共通化や効率化を推進することができました」と話す。
現場の見える化を実現できたのは、試作から受注生産、見込生産、個別受注生産までをすべてグローバル製造システム上で実現したためだ。そのための仕組みとしてアマダでは、「PE-BOM」と呼ばれる仕組みを、2012年に独自開発している。PE-BOMは、設計情報であるE-BOMと製造情報であるM-BOMを連携するための仕組み。PE-BOMがあることで、世界中の拠点で情報を共有し、製品開発から製造までの工程を統一化できる。
武尾氏は、「これまでは、E-BOMとM-BOMの連携を人間系で行っていたために、どこかの拠点の設計情報が渡されて、受け取った拠点が現地仕様に改訂し、勝手な図面で、勝手な部品表ができあがり、製造した商品を世界同一レベルで保証することが難しい状況になっていました。しかしPE-BOMを構築したことで、情報の一元化が実現できたので、生産管理システムをグローバル展開するときの問題は今後解決されると思います」と話す。
またMCFrameの別の効果を、宮渕氏は、次のように語る。「日本品質を世界に届けるためには、常にシステムを改善していくことが必要です。そのためには、高いメンテナンス性が不可欠です。生産管理システムに限らず、システムは必ず修正が発生します。そこでMCFrameの高いメンテナンス性は非常に有効になります」
さらに坪井氏は、「MCFrameでは、設計書さえきちんと作れば、定義ファイルなどを自動生成できるのは大きなメリットでした。またマスターファイルのメンテナンス性や管理ツールが他社の製品に比べて優れていました。さらにオーダーが発生して在庫になり、その在庫がどこで使われたかといったトレーサビリティを実現できたことは、将来的に役に立つと思っています」と話している。
今後の取り組みについて坪井氏は、「本番稼働の数カ月前に操作説明書を作成し、それをユーザーに説明しました。しかし書面の説明だけでは、システムの移行を周知できず、本番稼働後に操作方法などの問い合わせが殺到しました。今後は、ユーザーのレベルや本業の忙しさなどを考慮しながら、一度説明して終わりではなく、きちんと計画を立てて段階的にユーザー教育を行っていくことが必要であると反省しました」と話す。
また、北米と中国の導入が終わったので、今後は欧州などの拠点にもMCFrameを順時導入していくことを検討している。武尾氏は、「今後、会社として、世界中にどれだけの拠点を持つかは明確にはなっていません。しかし、システムを導入するのであれば、MCFrameを基準にして導入していくことになります。国内外のグループ会社に関しても、共通化した方がメリットは多いのでMCFrameを導入していく計画です」と今後の展望を語っている。。
パートナー紹介
富士通株式会社様
アマダ様におかれましては30年の長きに渡りご利用頂いている大型汎用機での生産管理システムにおいて、ノウハウやスキルの継承、グローバルに展開された各拠点毎に存在する複数のシステムとの連携が必要となりオープンでグローバルに適したシステムの再構築を行うこととなりました。
基本コンセプトとしては30年間のノウハウが凝縮したこれまでの仕組みを継承することでした。
それらをオープンでソースが提供され且つ導入ベンダーからのスキルトランスファーを受け易くアマダ様自らがカスタマイズを行える点などを前提とし、機能面では一日に複数回のMRP処理を実行可能とする処理速度や複数工場の拠点単位で生産計画が立案可能であることからMCFrameのご導入となりました。
プロジェクトとして苦労した点はアマダ様の国内各拠点へのパッケージ導入開始時に従来CS版と最新版XAとの機能差異が把握しきれず、CS版では実装されていた機能がXAの標準機能では実現できず、代替の方法を調査し構築することが必要となったことです。
またアマダ様は構成表の階層が深くマスタ数も多かったため旧システムからのデータ移行に時間を要し丸2日掛かりでの切り替え作業となったことも苦労した点でした。
課題こそありましたが、アマダ様やb-en-g様の製品開発部隊パートナー会社のメンバとの協業体制で国内への導入を達成することが出来ました。
この度のアマダ様北米工場においては国内導入における課題を関係者全員の力で解決した事がグローバル展開をスムーズに行えた成功要因であったと考えております。
今後も海外拠点の展開においてはMCFrameの開発基盤を使用することにより、ローカル仕様の取り込みを容易に実現してグローバル展開の開発もスピード感をもって対応することが可能であると思っています。
株式会社富士通 システムズ・イースト
産業ソリューション本部
組立産業第二事業部
神奈川
産業ソリューション部
プロジェクト課長
土屋 春樹氏
株式会社富士通
システムズ・イースト
産業ソリューション本部
組立産業第二事業部
神奈川
産業ソリューション部
富永 靖史氏
富士通株式会社
産業ビジネス本部
組立産業第二統括営業部
神奈川産業営業部
永倉 功三郎氏
※部署名・役職名は、インタビュー当時のものです。
1946年の創業以来、金属加工機械の総合メーカーとしてモノづくりの発展に貢献するアマダ。10社の国内子会社、40社の海外子会社、80社の国内営業拠点で構成されるアマダグループにより、金属加工機械、器具の製造、販売、賃貸、修理、保守、点検、検査など、幅広い事業を展開。「Made in Local by Amada Quality」というコンセプトのもと、日本品質のモノづくり環境をグローバルに展開することを目指している。
商号 | 株式会社アマダ AMADA CO.,LTD. |
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創業 | 1946年9月10日 |
設立 | 1948年5月1日 |
資本金 | 547億6,800万円 |
売上 | 1,855億円(連結:2012年3月期) |
従業員数 | 6,627人(連結)2,400人(単独)(2012年9月30日現在) |
事業内容 | 板金機械事業、プレス事業、切削・構機事業、工作機械事業の4事業を中心とする加工機械の取り扱いのほか、それらを制御するコンピュータソフトウェアや周辺装置、金型、メンテナンスに至るすべてのソリューションサービスを提供。 |
※本事例は2013年4月現在の内容です。
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載当時のものであり、変更されている可能性があります。
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