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小林製薬株式会社

導入事例 | 小林製薬株式会社 | mcframe

導入事例 | 小林製薬株式会社 | mcframe

緻密な原価管理が競争力を支える
現場の熱意でグローバル展開を完遂

導入製品



同社の過去の事例

本事例はmcframe広報誌「創魂」Vol.1(2016年3月発行)に掲載しています。

事例ダイジェスト

次々とヒット商品を生みながら成長を続ける小林製薬株式会社。競争の激しい市場において経営の屋台骨となっているのが、キメ細かい生産管理・原価管理を具現化するシステムである。国内グループ工場への導入、さらに、中国・米国の海外拠点への展開と、息つく間もないプロジェクトを完遂した原動力は、現場のリーダー達の熱意だ。

導入事例インタビュー


OTC医薬品や日用雑貨品の製造販売を事業の柱とする小林製薬。トイレ用芳香洗浄剤の「ブルーレットおくだけ」や、額に貼り付けられる利便性で大ヒットした「熱さまシート」など、印象的なネーミングも相まって日常生活に馴染み深い製品は数多い。

「“あったらいいな”をカタチにする」のブランドスローガンに象徴されるように、消費者の潜在的なニーズをいち早く発見し、斬新なアイデアを次々に製品化していく開発力こそが同社の最大の強みと言えるだろう。2015年3月期の連結決算でも、17期連続の増益かつ過去最高益を達成するなど同社の業績はきわめて好調だ。

だが、良い製品を作りさえすれば収益増につながるほど甘い世界ではない。OTC医薬品や日用雑貨品といった製品はもともと利幅が薄いうえに、ヒット商品が生まれたら必ずといってよいほど競合他社から類似品が登場してくる。熾烈な価格競争に打ち勝つことができなければ、収益を上げるどころか大変な損失を招きかねない。

そこで同社が徹底的に取り組んでいるのが生産管理・原価管理の高度化だ。「ある製品を1個作るのにどれだけのコストがかかっているのか、現実の数字を掴まないことには、製造プロセスのどこに無理や無駄が発生しているのか分析することができず、コストダウンのためのアクションを起こすことはできません」。そう話すのは、グループ統括本社 業務改革センター IT部 部長を務める大坪吟氏だ。

この想いを、具体的なシステムとして最初に形にしたのは1997年のこと。ベースとして採用したのがMCFrameだ。「基本はパッケージでありながら、自分たちが思い描く機能を実装しやすい」(大坪氏)点を評価、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の支援も受けながら、「BOSS(Business Operation Standard System)」と呼ぶ独自システムを完成させた。

MCFrameをベースに構築した生産現場を支える独自システム
(左)グループ統括本社 業務改革センター IT部 部長 大坪 吟 氏 (右)製造戦略部 製造システムグループ 担当課長 中野 久美子 氏
小林製薬株式会社
(左)グループ統括本社 業務改革センター IT部
部長 大坪 吟 氏
(右)製造戦略部 製造システムグループ
担当課長 中野 久美子 氏
※部署名・役職名は、インタビュー当時のものです。

その後、10年近く活用する中でビジネス環境は大きく変わり、生産管理や原価管理に関わるニーズも多様化・高度化してきた。インフラやアプリケーションを“増築”で対処するのはもはや限界と感じた同社はシステム刷新を決断する。

本部および大阪工場、グループ会社として展開している富山小林製薬、仙台小林製薬、愛媛小林製薬の各工場から生産管理の担当者が集まって、次なるシステムの仕様策定に向けた協議を開始した。中心となった課題は大きく次の2つである。

1つは本部とグループ各社の間で行われている取引への対応。グループ会社の工場が生産した製品を本部が仕入れる、グループ会社に対して本部が原材料を有償供給するといった、これまでのBOSSには組み込まれていなかった業務プロセスを実装するものだ。「単に受発注処理をカバーするのではなく、本部側の在庫や販売予測などの数字を工場側からも参照できるようにすることで計画的な生産を可能とし、より精度の高い原価管理に役立つ仕組みにしたいと考えました」(製造戦略部 製造システムグループの担当課長を務める中野久美子氏)。

もう1つは多言語、多通貨のサポートだ。BOSSの構想時にはほとんど考える必要がなかった海外取引がその後急速に進み、新システムでの対応が急がれたのである。

これらの課題を抜本から解決する新システム「N-BOSS(New Business Operation Standard System)」もまたMCFrameをベースとしたもので、2006年10月から2008年4月までの約1年半をかけて完成にこぎつけた。国内全製造グループの統合マスター、医薬品MES連携、外部OEM/購買先とのWEB-EDIなどの機能も備え、小林製薬のビジネスの屋台骨を支えるシステムへと大きく進化を遂げた。大阪工場、富山小林製薬、仙台小林製薬、愛媛小林製薬の4工場に対して、わずか3カ月での導入を完遂。息をつく間もなく、桐灰小林製薬(2001年に買収した桐灰化学から製造部門を分社独立させる形で始動したカイロ専門の事業会社)配下の2工場にもN-BOSSを導入した。さらに、機能別カンパニー制から事業部制に移行する全社規模の組織変更も断行されることとなり、N-BOSSの大幅な改変も余儀なくされた。まさに怒濤の日々が続いたのである。

「現状に満足してはコストダウンを極めることができないというのが当社の企業風土であり、原価管理の取り組みも立ち止まることはありません」(大坪氏)との言葉通り、常に実状に照らし、知恵と工夫で改善を積み重ねてきたことが、成長の原動力となっている。


システムのグローバル展開に着手 苦難続きだった中国拠点への導入
(左)製造戦略部 製造システムグループ 主任 佐々木 朝 氏 (右)経理企画グループ 高橋 知希 氏
小林製薬株式会社
(左)製造戦略部 製造システムグループ
主任 佐々木 朝 氏
(右)経理企画グループ
高橋 知希 氏
※部署名・役職名は、インタビュー当時のものです。

次なるテーマとなったのが海外展開である。N-BOSSのベースとなったMCFrameを海外拠点にも拡大していく上で、最初のターゲットとなったのが、新設された合肥小林日用品有限公司の工場だ。

この取り組みで最大の課題となったのが、すでに1998年から中国で操業を開始していた上海小林日化有限公司との意見の衝突だ。同公司では他社製の生産管理および原価管理のシステムを導入しており、合肥小林日用品有限公司に対しても同パッケージを適用すべきと主張し、譲らなかったのである。

「自分たちのやり方を変えたくないと抵抗する現地を説得するまでに、ひと悶着どころか百悶着くらいの攻防がありました。そもそも合肥小林日用品有限公司にMCFrameを導入することを決めた目的は、日本と同じ原価管理を海外拠点でも徹底していくことにあり、こちらとしても折れるわけにはいきません。グルーバル対応の難しさをあらためて痛感した出来事でした」と大坪氏は振り返る。

当然、その後の導入作業そのものも一筋縄ではいかない。開発作業を最小限に抑えるためB-EN-G上海が開発した「MCFrame中国パック」の標準機能をそのまま使うことを基本方針としたのだが、「それでも苦労は絶えませんでした」と話すのは、現地で帳票開発にあたった小林製薬 製造戦略部 製造システムグループの主任である佐々木朝氏だ。

「上海小林日化有限公司のマスターから対象品目を移行しようとしたのですが、日本とはビジネス用語が違えば原材料の単位に関する考え方も異なり、単純にデータを持ってくることはできません。通訳を介しながら、一つひとつの項目について『これは何を意味しているのか?』と解きほぐしていかなければなりませんでした。異なる言葉、異なる文化とのコミュニケーションに困惑しながらの帳票開発が続きました」(佐々木氏)。

だが、そうした苦労の甲斐あって中国特有の暫定買掛などの業務にもきめ細かな対応を実現することができた。さらに、用友財務システムをはじめ、増値税発票を発行する金税システムとのデータ連携も実現。中国国内の商習慣にフィットしたシステムを構築し、2014年9月からの稼働にこぎつけることができた。


チームの結束力が寄与した米国子会社への計画的導入
KOBAYASHI America Manufacturing.LLC. 生産管理グループ 課長 辻 隆平 氏
KOBAYASHI America Manufacturing.LLC.
生産管理グループ 課長
辻 隆平 氏
※部署名・役職名は、インタビュー当時のものです。

続いて2014年12月に着手したのが、米国ジョージア州の子会社KOBAYASHI America Manufacturing.LLC.(KAM)へのMCFrameの展開である。

こちらは中国と打って変わって、新システムの導入は現地からも大歓迎で受け入れられた。同社がこれまで運用してきた生産管理システムは、データベース構造などを熟知した設計者がすでに退職して不在となっていたうえにドキュメントも残っていなかった。誰も手を付けられないブラックボックスの状態に、現場も危機感を募らせていたのである。

特に問題だったのが原価管理だ。生産の実績データをCSV形式に変換して日本に送り、本部側で処理するという体制を採っていたため、結果が戻ってくるまでには2~3日のタイムラグが発生。この状況を変えたいと皆が考えており、その点ではまさに渡りに船のプロジェクトに映った。ただし、条件は厳しいものだった。経営側の意向からMCFrameの稼働開始を2015年7月と定められ、システム移行のために与えられたタイムリミットは、実質半年程度しかなかったのである。

結果としてこのタイトなスケジュールでカットオーバーを成し遂げたわけだが、その成功要因として大坪氏がまず挙げるのがB-EN-Gのサポート体制である。「私たちの力不足をB-EN-Gのプロジェクトメンバーの皆様が、常に親身になって補ってくれました。生産管理、原価管理、会計などに関する深い知識にはまさに脱帽で、問題点や課題を投げかけると、日米間の時差がある中にも関わらず即座に対応策を練って提示していただきました」(大坪氏)。

もちろん、陣頭指揮にあたった大坪氏の手腕も大きいはずだが、「私たちは陰でできる限りのサポートしただけです。実行するのはあくまでも現場であり、業務を担っている人たちが動いてくれたからこそプロジェクトを完遂することができました」と控えめだ。ともかく、現地のトップから管理職、担当者に至るまで全員のやる気と実行力が1つに結集したのは紛れもない事実で、予算も期間も限られた中でのロールアウトを一丸のチーム力で成し遂げた。

プロジェクトリーダーを務めたKAM生産管理グループ 課長(Production Control Manager)の辻隆平氏は、今回のシステム移行の1年半も前から現地に赴任し、どうすれば新システムが現場のさまざまな業務にスムーズに定着するかを念頭に置き、MCFrameを使った指図、払出、出荷のあり方を検討してきた。また、新システムは現地ごとのカスタマイズは行わないという原則に基づき、業務プロセスや運用ルールを変更するなど体制を整えてきた。

MCFrameの導入が完了して追い込みに入った段階では、小林製薬 経理企画グループの高橋知希氏も現地に駆けつけ、現場担当者のフォローにあたった。高橋氏はこれまで日米間で会計・決算データをやり取りし、マスター設定やデータの整合性確保に尽力してきた人物で、その最終確認のために現地に向かったのだ。

「KAMと本部側では会計の方式や決算に対する考え方そのものが異なっており、双方の数字がなぜ合わないのか当初は戸惑うばかりでしたが、現地のマネージャーと何度も協議を重ねる中で、ようやく摺り合わせを行うことができました。私の米国での滞在期間は1週間程度でしたが、現場の人たちとも“同志”と呼べるような間柄となり、無事に新システムをカットオーバーできた喜びを分かち合うことができました」と高橋氏は語る。

こうした業務主導による現場の取り組みを、製造システムグループが総力を挙げて支援してきたわけだ。「私もプロジェクト期間を通して現地に詰めて対応にあたりましたが、たった一人ではおそらく何もできなかったでしょう。日本に残ったメンバー全員が細かい分担表を作って、後方から支援してくれました。また、私が日本を留守にしている間、製造戦略部の上司が国内工場への対応に直接あたり、今回のシステム移行に専念できる環境を作ってくれました。一人、二人に任せるのではなく、全員がプロジェクトに関わったことでグループの共通の目標となり、それを達成することができました」と大坪氏は語る。


「業務主導」が現場の意識を変えた 予測数値の“見える化”に挑む
チーム一丸でプロジェクトをこなしたKAMのスタッフ
チーム一丸でプロジェクトをこなしたKAMのスタッフ

国内工場から海外へと展開を進めてきた結果、N-BOSSとMCFrameは現場にどのような成果をもたらしたのだろうか。例えば、製造システムグループには次のような声が寄せられている。

「ラインごと、品目ごとの詳細な原価計算が可能となり、さらなるコストダウンのための継続的な改善が進んでいる」「日々の生産計画数量と実績値のかい離を、従来は手作業で確認しなければならなかったが、現在はほとんどタイムラグなく把握できる。計画数量を実績が下回っている場合、どこに原因があるのかを分析し、的確な手を打つことができる」「使用する原材料を理論値に基づいてより厳密にコントロールすることが可能となり、棚卸の精度も向上した」。

そして、すべての現場に共通するのが、「新しいやり方に慣れるまでは苦労したが、現在は生産や原価に関する客観的な数値(データ)を把握できるようになった。もはや手書きの報告書をもとに勘に頼った判断を行っていた時代に戻ることはできず、N-BOSSがなければ業務が回らない」という評価である。業務主導での導入・運用を進めてきたことが、生産管理や原価管理に対する現場の意識改革につながっているようだ。「さまざまな局面でB-EN-Gのサポートに助けられてきましたが、『汗をかくのはあくまでも自分たち』と、常に前面に立って取り組んできた結果として、相当なノウハウを蓄積できたと自負しています。したがって今後、他の海外拠点や新たな工場にMCFrameを展開することになっても、よりスムーズな対応が可能になるでしょう」と大坪氏は語るとともに、「MCFrameをベースとしたN-BOSSと営業管理システムを連携させた、生産量や原価の予測数値の“見える化”にもチャレンジしたいと考えています」と、今後に向けた構想をふくらませている。

生産管理や原価管理は、どこまで追求しても終わりのない課題であり、さらなる改善を目指した絶え間ない取り組みこそが、小林製薬の強さの源泉となっている。

企業紹介

導入企業概要

商号 小林製薬株式会社
設立 1919年8月22日
資本金 34億5千万円(2016年12月31日現在)
従業員数 連結 2,994人 単体 1,223人(2016年12月31日現在)
事業内容 医薬品、医薬部外品、芳香剤、衛生材料などの製造販売を行う製造販売事業

企業ウェブサイト

※本事例は2015年12月現在の内容です。
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載当時のものであり、変更されている可能性があります。
※掲載企業様への直接のご連絡はご容赦ください。

創魂 2016 VOL.1