TCO削減に挑む!今後10年先を見据えた、拡張性の高い企業独自のシステムに柔軟に適応できるパッケージを探していました
20年以上稼動し続けたホストコンピュータは、長年の追加開発により、肥大化し複雑なものとなっていた。それを管理できる保守要員が減少していく中で、法改正への対応などの変更・拡張に多大な労力を費やさざるを得ない状態となった。そこで、「一体型のERP導入ではなく、自社の業務に見合う最適なパッケージ製品を適材適所に導入する」というポリシーのもと、システム全体のオープンシステム化を進めることになり、TCOの削減、医薬事業に求められる要件に対応できるシンプルかつ柔軟性の高い生産管理と販売物流の業務システムとしてMCFrame XAを採用した。
※エンタープライズHubは、全社システムのマスタとトランザクションを1箇所で集中管理する協和キリン独自の仕組みです。
こちらの仕組みは、2010年、日本能率協会による「第27回 ITマネジメント賞」を受賞しています。全社経営方針とITマネジメントポリシーの一貫性、事業特性をふまえたユーザー企業としての独自の取り組み、戦略的判断にもとづくプラットフォームの構築などに他企業の範となる方法論と実績が評価されました。
MCFrameは、中堅どころの価格で基本機能がそろい、TCO、柔軟性、ベンダーとしての安定性などを含め、他社製品、外資パッケージより優良と判断しました。なかでも採用の決めてとなったポイントをご紹介します。
『MCFrame XA 生産管理』と『MCFrame XA 販売物流』 をご採用いただいた、協和キリン株式会社様より、情報システム部部長 中山嘉之様と、同じく情報システム部マネジャー 篠田敏幸様に、MCFrame XA導入に関する経緯や導入プロジェクトの課題、そして今後の展開についてお話を伺いました。
以前は生産管理というと、会計システムとの連携や生産の効率化などが課題だったが、最近では品質保証の強化が重要な課題となり社会が要求するレベルも格段に高度化している。医薬業界でいうと、ER/ES※指針やコンピュータ・システム・バリデーション対応(CSV対応)といった改正薬事法や現行法規制への対応がそれにあたる。これらは対応を誤ると企業の存続にも影響しかねない重要な問題だ。
※ER/ESとは、Electronic Records/Electronic Signaturesの略で、電子記録/電子署名を指す。厚生労働省は、平成17年4月1日に、電子記録による申請資料等の信頼性を確保するため、「医薬品等の承認または許可等に係る申請等における電子記録及び電子署名の利用について」という通知を出した。これを実行する前提として、Computer System Validation (CSV) と呼ばれる、コンピュータシステムの適正な管理が求められている。
篠田様:「近年、社会からの製造業に対する品質保証への要求は以前にも増して高度化しており、ITがカバーすべき範囲も確実に広がっています。『見える化』とよく言われていますが、今では在庫状況などの単純な『見える化』ではなく、製品から逆引きしてどの原料が使われたかなど、複数の部門や工程を経た製造記録が一連で即座に確認できるような『見える化』が求められます。社内だけではなく社外に対しても十分な説明ができる『見える化』が必要な時代なのです」
こうした社会的要請に対応するために自社開発したシステムに追加開発を重ねていたが、保守要員への負荷が限界に達し、専門ベンダーが提供するパッケージの導入を決断した。
篠田様:「MCFrame XAの良いところは、中堅どころのライセンス価格で必要な機能がほぼ揃っていることですね。他のパッケージではオプションやアドオンで提供されているような機能が標準で備わっています」
MCFrame XA採用の決め手は、必要な機能がアドオンではなく標準で装備されていたことだという。
これら全ての機能が、アドオンではなく、システムの基本に組み込まれており、統合的に利用できるところが評価ポイントだ。
パッケージシステムを導入することを決めた同社であるが、一体型の基幹業務システム(ERP)の導入は考えなかった。同社では、会社独自のカルチャーで独自に蓄積したノウハウと過去の資産を重要視している。
中山様:「業務に合わせて、適材適所にパッケージを選んで導入する方法がベストと考えています。一体型のシステムで、全ての業務に優れたパッケージはありませんからね。一体型にこだわることで当社が蓄積してきたノウハウや強みを失うことは絶対に避けねばならないと思います」
新システムの導入によってその会社の強みであるオリジナリティの部分が消えてしまうことは絶対に避けねばならない。同社では、その時々で改善が必要なところに焦点をあてて、新しいものに変更、または補強するようにしている。結果、複数のパッケージ、複数のベンダーと関わることになるが、あえて分散することがリスクヘッジになると捉えている。
中山様:「協和キリンでは、データが資産という考えがあります。『エンタープライズHub』という全社のデータを1箇所で集中管理する協和キリン独自の仕組みにより、適材適所でパッケージを自由に選択し、導入することが可能となっているのです。データマネジメントはベンダーには頼れないですから」
ここでいう『データ』とは、基幹システムのベースとなるマスター情報や業務トランザクションで発生する実績データなどを指している。全てのデータは、この『エンタープライズHub』を経由するため、各業務アプリケーションを疎結合という形で導入することが可能となる。MCFrame XAでは、SOA技術を採用しており、MCFrame XAをアプリケーションサーバ上に構築し、Webサービス化することで、業務のロジックを変更することなく他のシステムとシームレスな連携が可能である。同社においては、『エンタープライズHub』という独自の優れた仕組みを活用してシステム連携を実現した。
基幹システム、特に生産管理パッケージについて同社は国産であることにこだわっていた。ベンダーとの距離が近く、次バージョンでのエンハンスを要望しやすいからだ。更にベンダーに加えて他のユーザとの距離を近づけるユーザコミュニティの存在はとても重要であると同社は考えている。
中山様:「MCFrameユーザ会は他のユーザ会に比べて活発、且つまじめに活動を行っている印象があります。親睦を深めるだけではなく、システムの有効活用という本来の目的のために活動しているところが良いです」
MCFrameユーザ会では、マネージメント研究会や活用研究会、原価管理研究会など、分野別の研究会が定期的に開催されており、ユーザ同士で、使い方やカスタマイズのノウハウ、そしてパッケージへの要望などを共有できる。年に一度、『製品要望リスト』を作成して、ベンダーへ提示する仕組みがあり、同社はこのユーザ会の存在もMCFrame XAを選択した大きな理由の一つだという。
現在、同社では国内の2つの工場への導入が終わり、新システムは順調に稼動している。しかし、移行作業については当初予定していた作業負荷をオーバーする結果となり苦労した。MCFrame XAの第一号ユーザだったこともあり、既存システムから新システムへ、全てのデータの整合性を保った移行ツールが事前に準備されていなかったためだ。
篠田様:「移行作業については当初予定していた工数をオーバーする結果となり、作業的にも苦労しました。ユーザは限られたリソースで対応しなければならない事情があり、ベンダーとどこに労力を要するのかをもっと十分に共有すべきだったと思いました」
今回の移行作業は、通常業務を続けた状態で移行に臨んだため、旧システムとの並行稼動期間がしばらく続き、予想以上の負荷がかかり問題となった。横展開を予定する工場が複数残されている中、今後移行作業における負荷の軽減が両社の課題となっている。
製造プロセスは会社の事業が大きく変わらない限り、そう簡単に変化するものではない。同社では生産管理とその周辺システムについては、高い専門性が求められるため、最低10年間は同じシステムを使いたいと考えている。
中山様:「我々は、MCFrame XAを長期的に利用するため、一緒にパッケージを成熟させていく思いでいるので、ベンダー側には引き続き、保守及び機能改善を通してシステムの強化と延命に尽力を注いでもらいたいと思います」。
一方で、同社は業務アプリケーションにおいてクラウドの活用が進むと考えている。
中山様:「その時々で、より適切なサービスを短い期間で取り入れられることがクラウド化の一番のメリットです。10年後、いや5年後には、全てクラウドで動いているはずです。データ資産である『エンタープライズHub』だけは自社で管理します」
同社では、基幹システムを順次にクラウド化していく予定だ。同社では『クラウド化』を、データ中心の『エンタープライズHub』のシステム、つまり疎結合を可能とする一つのバリエーションに位置づける。それぞれのサービス(ここではあえて業務パッケージをサービスと呼ぶ)が何をインプットして何をアウトプットするのかさえ共有できれば、内部処理の情報は互いに共有する必要がない。まさに同社のシステム構想を『クラウド』という形で実現するという、きわめて自然な流れだ。
システムをクラウド化することで、サービスの選択肢が格段に増え、最適な形へと簡単に実現できると考えている。
中山様:「我々の任務は、サービス連携するために要となるデータは何かを見極め、『エンタープライズHub』を永続的に守ることです。今後、クラウドという形態が別の形になろうとも、変わらないでしょう」
協和キリン株式会社様は、2008年10月、バイオテクノロジーを強みとする日本発の世界トップクラスの研究開発型ライフサイエンス企業を目指すため、協和発酵工業株式会社様とキリンファーマ株式会社様が経営統合されて設立された会社です。それぞれが培ってこられた抗体医薬の先進技術や重点領域における研究・開発力を融合されることで、創薬力のさらなるスピードアップを図られ、継続的な新薬創出を実現し、世界中の人々の健康に貢献されています。
がん、腎、免疫疾患を中心とした領域で、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使して、画期的な新薬を継続的に創出し、開発・販売をグローバルに展開することにより、世界の人々の健康と豊かさに貢献する日本発のグローバル・スペシャリティファーマとなることを事業ビジョンとしています。
所在地 | 100-0004 東京都千代田区大手町1-9-2(大手町フィナンシャルシティ グランキューブ) |
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設立 | 1949年7月1日 ※2008年10月1日付でキリンファーマ株式会社との合併により「協和発酵工業株式会社」より商号変更。 ※2019年7月1日付で「協和キリン株式会社」に社名変更。 |
資本金 | 26,745百万円(2009年12月31日現在) |
事業内容 | 医療用医薬品の製造・販売を行う事業持株会社。医薬事業を核として、バイオケミカル事業、化学品事業などを協和キリングループとして展開。 |
※2019年7月に協和発酵キリン株式会社より商号変更されました。
※本事例は2010年10月現在の内容です。
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載当時のものであり、変更されている可能性があります。
※掲載企業様への直接のご連絡はご容赦ください。
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取材担当者より一言
これは、松尾芭蕉が提唱した俳諧理念の一つです。
社会やビジネスの変化など、その時々でより適切なモノを取り入れつつも、その本質は過去の資産を守ることにある、とされる協和キリン様にぴったりと当てはまる言葉ではないでしょうか。そしてお客様のコアコンピタンスを殺さない柔軟な仕組を提供する『MCFrame XA 生産管理』と『MCFrame XA 販売物流』は、協和キリン様にぴったりのパッケージ だったのかもしれない、と厚かましくも感じました。
最後に、インタビューにお答えいただいた中山様と篠田様、そして本記事の掲載にあたりご協力いただいた、広報ご担当の井上様には、改めて御礼申し上げます。本当にありがとうございました。本インタビューを通じていただいた率直な評価やご意見(中には厳しいご指摘もありましたが)を真摯に受け止めて今後の課題とさせていただきますので、引き続きご指導の程、よろしくお願い申し上げます。