M-BOMとBOPを活かして散在する情報を一元化
パッケージ標準機能で要件をカバーし、わずか9カ月でPLMシステムを導入
導入製品
総合セラミックメーカーのNGKエレクトロデバイスは、社内の複数のシステムに散在する製品開発・製造に関連する情報を一元管理するため、ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のPLM(製品ライフサイクル管理)ソリューション「mcframe PLM」を導入。水晶パッケージ製品に関して、品番に付帯するさまざまな情報を統合管理できる仕組みを構築した。構築の前段ではPoCを実施して使い勝手を確認、自社での適用範囲を決め、追加機能開発をせずパッケージに備わっている機能を十分に活用し、9カ月という短期間でM-BOM(製造部品表)とBOP(製造工程表)システムの導入を果たした。
製品選定の過程においてmcframe PLMの導入パートナーの支援を受けつつ、範囲を限定した検証(PoC)を行った。独自性が高い同社の業務に対してmcframe PLMの適合性が高いことを確認したうえで適用範囲を決定、プロジェクトを開始し、結果としてカスタマイズなしで9カ月という短期間で導入を実現した。
デジタル化社会の発展に欠かせない半導体・エレクトロニクス産業。その中でNGKエレクトロデバイスは、最先端デバイスの実装に必要な高性能セラミックパッケージなどを提供し、デジタル時代の高度なモノづくりを支えている。セラミック・電子部品業界は市場が大きい一方で、事業環境の変化が速い。そこに追随していくために各社は厳しい環境に置かれており、同社ではデジタル技術を生かした業務改善を現在トップダウンで進めている。
「技術の世代交代への対応が必要であることはもちろん、新規顧客ニーズが生じた際に少しでも競合に後れを取ってしまえば取り戻すのが難しくなってしまうため、変化へ迅速に対応しなければなりません。その状況下で、これまでのマンパワー頼りで非効率的であった業務プロセスに関して、デジタル技術によってさらなる効率化を進める必要があります」と、NGKエレクトロデバイス 取締役 副社長執行役員の伊藤陽彦氏は説明する。
こうした現状を踏まえ、同社が着目したのが設計・製造における情報管理の最適化だ。特に同社の主力製品である水晶パッケージは用途も多く仕様もさまざまであり、顧客の要求に合わせた高品質なカスタム品を開発する事業モデルも相まって、どうしても品種が増える傾向にある。当然ながら、開発や製造に関する情報管理は複雑になる。
取締役執行役員 業務統括部 統括部長の野呂幸助氏は、「水晶パッケージは1カ月に80品番ほどが取り扱われます。設計から製造までのエンジニアリングチェーンを強化し、品番に付帯する各種情報の管理を一元化するシステムが必要であり、そのためにはPLMの導入が有効だと考えました」と語る。
こうして同社情報部はPLM製品の選定を開始した。同部 部長 兼 製造統括部管理部 生産管理グループマネージャーの加戸崇志氏によると、特に業務効率化のネックとなっていたのが「品番に紐づく図面や作業指示書、部品表、製品情報などが業務アプリやデータベース、個人のPCに散在し、詳しい人に聞かないと必要な情報にたどり着けない」という属人化していた情報管理の現状である。
PLMの選定にあたっては、「普通の機械加工メーカーと異なるセラミック製造の業務プロセスを汎用的なパッケージ製品の中にどのように落とし込むか」という点も懸念事項であったという。そこでまずは2社の製品に絞り、システムで実現したいことをベンダーに伝えた上で並行してPoCを約2か月間実施。その結果、B-EN-Gの「mcframe PLM」を採用した。選定理由について加戸氏は、「標準機能のまま、追加開発、いわゆるカスタマイズをせずに導入でき、自社で運用できそうだった」という点を挙げる。
「mcframe PLMとは別製品を採用した場合、我々の業務に合わせるには大幅なカスタマイズが必要でした。一方でmcframe PLMは、日本の製造業を意識したmcframeシリーズの製品であり、使い勝手の面で優れていました。幅広い層の社員が利用するので、とっつきやすさも重視しました」(加戸氏)
さらに情報部 主任の市岡裕晃氏も、「競合製品を仮にカスタマイズして導入したとしてもmcframe PLMの標準機能の方が優れていました。mcframe PLMの導入パートナーが製品を熟知していて、こちらの細かい質問にも丁寧に対応してくれたところも大きな理由になりました」と高く評価する。
同社はPoCの結果を踏まえ、主力製品である水晶パッケージ領域の情報管理からスタートする形が最適と判断し、2023年1月から導入プロジェクトを開始した。市岡氏はプロジェクトのリーダーとして製品についての勉強に取り組むとともに導入パートナーに随時設定などの相談をしながらプロジェクトを進めていった。その結果、9カ月という短期間での導入を実現した。加戸氏によれば、導入対象の現場はPLMシステムの概念や役割などを知らない人がほとんどであったが、会社全体がデジタル化に積極的な姿勢をとっていることもあり、おおむね協力的だったという。
市岡氏はmcframe PLM導入時にBOPの画面がもたらしたメリットをこう説明する。「mcframe PLMではM-BOMとBOPが常に横連携していてBOPのチャート図で工程フローが見えるのですが、チャート図によってそれぞれの視点からアイデアが生まれ、どこにどんな情報を紐付けしていくかイメージを先に作ってから構築していくことができました」
導入後は、mcframe PLMによる情報連携によって情報検索にかかる時間を大幅に削減しており、現場からも好意的な反応を得られている。品番をキーにした情報検索が可能になったことから、例えばある製品がどの治工具を使っているか、またその逆を調べられるようになり、治工具が壊れた時の影響範囲を特定できるようになるなどのメリットが生まれている。
現在情報部では、PLM上での品番と各種情報の紐付けに加え、外部システムとの連携にも取り組もうとしている。市岡氏は、「mcframe PLMをポータルとして、そこから業務アプリや生産管理システム、設計部門が活用しているシステムなどを立ち上げられるようにしたいと考えています。その先には他製品部門や購買部門での利用も視野に入れています」と構想を語る。
一方で野呂氏は管理者側の視点から、「PLM導入によって業務プロセスを整流化して生産性を向上させることで、無駄な仕事を減らしたいと考えています。デジタル化によって無理なく一人当たりの仕事量を増やし、利益率を高めていくことが目標です」とその思いを明かす。
NGKグループでは、グループビジョンとして、新事業化した製品の売上高で2030年に1千億円以上のビジネスを創出するという目標を掲げている。伊藤氏は、「DXを加速させ、我々NGKエレクトロデバイスがその目標に貢献したいと考えています。その中で、今回のPLM導入はその足掛かりとすることができました」と導入効果を語る。
セラミックスを得意とする日本ガイシのグループ企業として、環境・新エネルギー・高度情報化社会を支え、先端エレクトロニクス産業の可能性に挑んでいる。先端デバイスの実装に要求される水晶パッケージ、MEMS、光・高周波デバイス用の多層セラミックパッケージなど、デジタル機器・家電、通信インフラに不可欠な基幹部品を独自の技術で展開する。
商号 | NGKエレクトロデバイス株式会社 |
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設立 | 1991年3月 |
所在地 | 山口県美祢市大嶺町東分2701-1 |
従業員数 | 500人(2024年4月現在) |
資本金 | 34億5千万円 |
※本事例は2024年5月現在の内容です。
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