京楽産業.グループの1社としてパチンコ遊技機の電子部品製造を手掛けているニッコウ電機は、既存のERPでは困難だったグループ横断の部品・部材の情報連携および経営層の意思決定に資するデータ提供を可能にする「グループ統合部品表」を構築するために、PLM(製品ライフサイクル管理)システム導入に乗り出した。この基盤として採用されたのがビジネスエンジニアリング(B-EN-G)の提供する「mcframe PLM」である。
グループ各社が用いる部品・部材管理の仕組みを活かしつつ、グループ横断で統合的に情報管理できる部品表を構成できる点に着目。また、パチンコ遊技機の実データを用いたPoC環境での操作確認を重ねたことで、想定効果や導入後のイメージをつかむことができた。
業界全体で14.6兆円という大規模な市場を有するパチンコ業界。しかし、法律や条例による規制強化、コロナ禍による参加人口の減少などを受け、同業界を取り巻く環境は厳しさを増している。その中で京楽産業.グループは、パチンコ遊技機の進化に伴う部材管理の複雑化に対応し、在庫リスクを解消しながら製品を顧客にタイムリーに納品するためにも情報管理の強化を推進。2016年にはグループ全体の経営情報の一元化を図るためERPパッケージを導入して情報管理レベルは改善されたものの、課題として残ったのがグループ内の設計開発部門と製造部門の情報連携であった。
「設計開発側がどんな部品・部材の利用を想定しているのかを製造側が把握できる仕組みがありませんでした。同様に、製造側の実績を設計開発側ですぐに確認できなかったため、設計時における部品・部材選定の最適化やコストの妥当性を踏まえた製品企画を十分に行えませんでした」と京楽産業ホールディングス 経営企画本部 アシスタントマネジャーの松井政和氏は語る。このため、製造側と設計開発側の情報共有は、互いに面識のある担当者同士の属人的なやり取りを通じて情報を入手するという、アナログな手段に頼らざるを得ない状況に陥っていた。
こうした現状を踏まえて、京楽産業.グループが検討を重ねてきたのがPLMだ。パチンコ遊技機の電子部品製造を手掛けているグループ会社のニッコウ電機が、この一連のシステム導入における主導的な役割を果たすこととなった。
同社 業務管理部 総務課 係長の平山浩美氏は、「企画・設計開発から量産に至るライフサイクルを管理する基盤となる、E-BOM(Engineering-BOM/設計部品表)に相当する『グループ統合部品表』をPLMで構築することを目指しました」と話す。
同社が構想したグループ統合部品表では、企画・設計開発の段階で、グループ内に点在している部品の在庫数や単価、新たに調達する際のリードタイムといった条件を把握できることを要件にした。これらの情報を踏まえてコストを正確に算出できなければ、個々のパチンコ遊技機の収益の見込みを立てることは困難だ。
「グループ統合部品表はグループ会社を横断する情報連携を実現すると同時に、経営層に対して意思決定に必要な客観的な情報を提供する『縦方向の情報連携基盤』としても、重要な役割を担っていくことになります」と平山氏は説明する。
当初ニッコウ電機では、グループ統合部品表の内製開発も検討したという。というのは、グループ会社間で業種・業態が大きく異なり、部品・部材を管理するルールや仕組みも違えば、同じ部品・部材であっても呼び名が異なる場合もあるからである。しかし、そうした個社ごとの管理方法を大きく刷新するグループ統合部品表をゼロから開発することは困難であった。
そのため、各社の既存の仕組みを維持しつつデータを集めてグループ統合部品表を構成できる“外付け”のPLMシステムが必要となり、キヤノンITソリューションズから提案されたB-EN-Gの「mcframe PLM」が目に留まった。
「個社の部品・部材の管理方法を生かしたまま、グループ全体としてデータの整合性を保つことができ、画面レイアウトや操作性も私たちが望んでいたものと非常に近いイメージでした」と松井氏は話す。
さらにmcframe PLM導入の決め手となったのが、2020年9月から約1カ月をかけて行ったPoC(概念実証)である。「パチンコ遊技機1機種分の実データ(約100部品)を丸ごと使ってPoC環境をキヤノンITソリューションズに作ってもらいました」と平山氏。そこでシステムを実際に動かしながら議論を重ねることで、各部門の要望を引き出し、現場の課題意識をすり合わせ、経営層からもPLM導入の支持を得ることができたのである。
その後、新たな業務プロセスの構築を進めながら、mcframe PLMの導入を進め、2022年6月より本番運用を開始した。
ニッコウ電機 購買部 資材課 係長の根岸雅樹氏は、「共にプロジェクトに取り組んできたメンバーは特にPLMの活用に積極的で、例えば治具を作っている生産技術課の担当者は、必ず最新の図面をPLMから引き出すようになりました。同様にさまざまな部門でPLMのメリットに対する認知は着実に広がっています」と話す。
これを受けて平山氏も、「グループ全体に向けてPLMの仕組みを早期に横展開するためにも、まずはニッコウ電機社内で確実に実績を作っていきます」と意気込む。さらに「次のステップとしてM-BOM(Manufacturing-BOM/製造部品表)に相当する部品表もmcframe PLMに実装することで、グループ会社の製造・保守業務の省力化・自動化につなげていきたい」と、次のビジョンを語る。
同社はmcframe PLMを活用し、部品・部材の在庫およびリユース効果の可視化、また残在庫の有効活用、部材発注時のコスト算出、過剰発注の抑制、部品共通化の推進、不要在庫の早期廃棄など、さまざまな面で効果を挙げられるとしている。
「これらの期待効果を確実にグループ全体の実効果に結び付けていきます」と松井氏は意気込み、今後も競争力を高めるためにICTへの投資を拡大させていく構えだ。
商号 | ニッコウ電機株式会社 |
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設立 | 1989年4月1日 |
資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 59人(2022年12月現在) |
事業内容 | 京楽産業.株式会社のグループ会社として、パチンコおよびパチスロ遊技機の電子部品の製造を担っている。 |
※本事例は2023年2月現在の内容です。
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