臨場感のある実写360度映像とVRで安全教育を強化
業界屈指の施工技術を継承するなどの展開も視野に
道路舗装における日本最大手かつトップレベルの技術力を誇るNIPPOは、安全教育や技術継承などに役立てるべく、VR技術の活用に取り組んでいる。教育や訓練における使い勝手や効果、VRコンテンツ制作費用などの課題に対する解決策として、同社はビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のVR学習システム「mcframe MOTION VR-learning」を導入。新入社員や現場作業員などへの教育や訓練において、臨場感あるVRコンテンツを制作し、活用している。
NIPPOは、安全教育にVR技術の活用を検討し、現場での360度映像から自社内で簡単に教育コンテンツを作成できるmcframe MOTION VR-learningを採用。体験者に臨場感を与えるコンテンツで教育効果の強化を図った。今後は技術継承用途や、他の部署との連携でもVRを活用していく方針だ。
日本における道路舗装のトップランナー企業であるNIPPO。常に時代の最先端を行く先進的なテクノロジーを取り入れており、技術力でも業界をリードしている。情報技術の活用も積極的に推進しており、同社の技術本部 総合技術部 生産開発センター長 兼 ICT推進グループ課長の相田尚氏は、以下のように語っている。
「土木・建設業界では、人手不足や『i-Construction』の影響もあって、業界全体でICT活用の取り組みが加速しています。当社においても、テクノロジーを活用した業務効率化と魅力ある会社づくりの観点から人手不足の解消を図ろうとしています」
ICT推進グループの取り組みは、舗装工事の現場における安全対策の強化にも及び、舗装を転圧するタイヤローラーの自動停止システムを業界に先駆けて開発・実用化し、2014年より順次現場での利用を開始した。さらに安全教育にもICTを活用した高度化にも取り組んでいるという。
また、教育の観点でも培ってきた技術を社内で継承していくための体験や訓練も課題となっていた。NIPPOでは、例えば自動車テストコースや自転車競技トラックなどに設けるバンクの施工など特殊な舗装も得意としているが、そうした施工は数が限られてしまうため、社員たちが経験できる機会も多くない。技術継承のためには、別の形で体験できる仕組みが求められていた。
ICT推進グループではさまざまなデジタル技術の調査検討を行っており、その中で安全教育や技術継承のための現場体験手段として注目したのが、VR技術だ。だが実際には、なかなか期待したような製品には出会えなかった。
「ある企業にデモを見せてもらいましたが、一般的な建設現場をイメージしたものでした。当社のような道路舗装のコンテンツを新たに作るには制作費として1コンテンツあたり数百万円が必要になるとのことだったので、導入には至りませんでした」と相田氏は説明する。
こうしたコストの課題を解決するきっかけは、360度映像を撮影できるカメラがもたらしてくれた。ICT推進グループ 係長の駒坂翼氏は、以下のように語っている。
「もともとVR教育とは別の目的で、360度カメラの『RICOH THETA』を購入しており、これをVR教育コンテンツ制作でも役立てられるのではないかと検討しました」
現場を撮影した360度映像をVRゴーグルで見せれば、現場の雰囲気をより高い臨場感で体験することができる。しかし実際にトレーニングに活用するにはもう1つの課題があった。VR体験者が見ている映像を教える側など第三者と共有できる仕組みが必要だったのである。
そこでRICOH THETAを販売するリコージャパン株式会社に相談したところ、紹介されたのが、mcframe MOTION VR-learning(以下、VR-learning)だった。ICT推進グループ 係長の竹内伸氏は次のように説明する。
「VR-learningは外部出力ができるため、別のディスプレイから同じ映像を見ることができ、トレーニング用途に適しています。しかも既存の360度映像を組み合わせて比較的簡単にVRコンテンツを制作でき、社外に委託するより費用を大幅に抑えることが可能です。この2つの点において、他にない魅力的なシステムだと感じました」
こうしてVR-learning導入後、ICT推進チームでは安全教育を目的としたVRコンテンツを制作した。駒坂氏は「VR-learningは制作の際の操作も簡単でわかりやすく、撮影から1~2週間ほどの期間で完成できます。わからないところがあったときも、B-EN-Gがメールや電話でサポートしてくれました」と説明する。これまでに制作したコンテンツのうち、竹内氏はその1つを例に挙げ、VRトレーニングの効果を以下のように説明する。
「タイヤローラーの近くで作業する際の注意喚起を図る目的で、事故がどういった結果をもたらすかを体験してもらうコンテンツがあります。これまでの安全教育でも、実際にダミー人形がひかれる様子を動画や直接見せて危険性を認識してもらっていましたが、VRによってより臨場感の高いコンテンツができました。普段は現場に出ない事務系の人も含め、いろいろな立場の社員に体験してもらい、かなりのインパクトを与えられました」
こうした映像の効果は大きく、2018年11月に同社が業界関連の展示会に出展した際も、VRによる安全教育の取り組みを展示し、危険を体験できるコンテンツは来場者から非常に大きな反響があったという。
そのほかに駒坂氏は、「当面は、従来の安全教育も活用しますが、この方法では人形の準備や運搬も手間がかかり保管にも場所を取ります。それに対しVR安全教育なら、コンテンツがあればVR機材のみを準備するだけで済みます」とVRのメリットを話す。
そして今後は、安全教育に加え、新入社員への現場体験、業界をリードする舗装技術の継承など、コンテンツの幅も大きく広げていく方針だ。「VR-learningは今後、操作内容で分岐できる機能に対応すると聞いていますので、質問への回答に応じて結果が変わるような映像コンテンツも実現してみたいです。社内の別の部署とも協力し、さらに展開を広げていきたいと考えています」と相田氏は説明する。
1934年に日本鋪道として設立され、2009年に現在の社名となる。前身となった企業の1つは1907年に創業しており、日本の道路舗装とともに110年以上の歴史を重ね、先進的な技術を業界に先駆けて導入してきた。事業規模・技術力ともに日本トップクラスを誇る、道路舗装業界のリーディングカンパニー。
商号 | 株式会社NIPPO |
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設立 | 1934年2月2日 |
資本金 | 153億2400万円 |
従業員数 | 1591名(2018年3月31日現在) |
事業内容 | 舗装・土木工事およびアスファルト合材の製造、販売などを手掛ける |
※本事例は2019年2月現在の内容です。
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