従業員の作業手順教育と安全教育を目的にVRを導入
年間40本超の教材を作成・活用し教育担当者の指導負担を軽減
自動車部品メーカーの髙田工業株式会社(以下、髙田工業)では、これまで多くの工数がかかっていた新人教育の効率化と効果の高い安全教育を実現するためにVR技術の活用に取り組んでいる。ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)のVR学習システム「mcframe MOTION VR-learning」を採用し、約1年間で40本あまりのVR教材を社内スタッフのみで制作。新人への高品質な教育の提供と教育担当者の負荷軽減の両立を実現している。
従業員向け作業手順教育のあり方を模索する中、VR映像の有効性に着目。高額のコストを必要とせず、社内にてコンテンツを内製できる点が決め手となりmcframe MOTION VR-learningの導入を決定。現在は金沢工場にて活用しているが、今後は他の工場にも展開することを検討中だ。
髙田工業は1950年に創業し、乗用車や商用車、建設機械の部品製造から、特装車などの委託生産などを手掛ける自動車関連メーカーだ。近年では建機の部品生産が拡大しており、例えばパワーショベルなどのキャビンを複数の建機メーカーに提供している。
「設計から金型製作、プレスや溶接、塗装、組立や艤装、さらには品質保証まで一貫して自社で手掛ける体制で、多品種少量生産や生産変動にも対応できる点が当社の強みです」と生産本部 本部長 執行役員の池田智彦氏は説明する。
一般的に、製造現場におけるプレスや溶接、塗装、組立などの各工程は人手に頼る部分が大きい作業だ。その人材確保や、新人に対する受け入れ教育や作業手順指導は、同社にとって大きな課題になっていた。
「人材不足の昨今、一度入社した方には長く定着してもらえるよう、しっかりとした受け入れ教育を行う必要があります。しかし、教育は班長など教育担当者が3~4日かけて行う必要があり、工数は相当なものだったので効率化が必要でした。また、当社の業務は、そのときの状況によって教える内容が異なり、指導の標準化が難しいのですが、効率化の観点からなるべく人によるばらつきを排除したいという思いもありました」
同社ではすでに各作業の手順書などは整備されており、これを基に指導や教育の体系化に取り組んできた。しかしその効果は限定的であり、教育担当者が新人教育に費やす時間が大きな負担となっていたため、解決策が求められた。
こうした新人教育の課題を改善すべく髙田工業が新たに取り入れたのがVR教材だ。「手順書を動画化する方法も検討しましたが、ちょうど社長からの意見もあり、より臨場感や説得力のある教材を目指してVRの活用を検討しました。ただ、実際に情報収集してみるとVR製品の多くはコンテンツをCGで制作するもので、金額も我々の想定とは桁が違っていました」と池田氏は説明する。
その中で出会ったのが、mcframe MOTION VR-learning(以下、VR-learning)だ。「自ら360度映像を撮影してコンテンツを制作・編集でき、費用面でも当社の想定していた予算の範囲内だったので採用を決めました」と池田氏は語る。
髙田工業は2022年7月よりVR-learningを導入し、現在では横浜市の金沢工場で、作業手順教育と安全教育目的のコンテンツが制作されている。具体的には、ロボットを用いた工程の作業手順、スポット溶接機の取り扱い、フォークリフト作業の安全教育などさまざまだ。
「最初の制作には時間を要しましたが、今は1本あたり1週間ほどで完成できています。導入から約1年で40本ほどを制作しています」
VR教材制作の中心を担っているのは、生産担当本部長付(金沢見える化担当) 次長の新倉秀樹氏だ。自分自身の現場での経験も踏まえつつ、撮影や制作に取り組んでいる。
「VRで作ると臨場感が出るのでより伝わりやすく効果的になります。VR-learningの操作や撮影などについては、たびたびB-EN-Gに相談していますが、タイムリーで的確な回答をもらうことができ助かっています。現場の撮影には、現場の作業者たちの協力も欠かせませんが、皆VR教材に期待しているようで撮影にも協力的です。実際に作った教材を視聴した作業者たちからも高い評価を得ています」
さらに同社では、日本語だけでなく外国語版の教材も制作している。同社ではミャンマー出身の従業員もいるため、ミャンマー語の翻訳版も用意しているという。
髙田工業におけるVR教材の拡充は、着実に効果を発揮しつつあると池田氏は評価する。
「新人教育の最初に4日間ほどかけて視聴してもらっています。これにより、教育担当者の工数は大幅に減りました。また、安全管理用の教材では、360度映像に実際の事故時のドライブレコーダー映像を組み合わせて、注意点や手順を疎かにすることの怖さが伝わるよう工夫し、教育効果を実感しています」
一方、こうした教材の元素材となる360度映像を現場で撮影する中でも、さまざまな気づきが得られたという。総務部 部長の山下和仁氏は、その効果をこう説明する。
「撮影では、実際の業務手順を再確認し、実態と手順が異なっていたものを見直す機会にもなっています。360 度映像を撮影すると、周囲もありのままに映り込むため、皆の動線も見えてきて工程改善につながる気づきも得られました」
髙田工業は、金沢工場のほかに国内では2工場を抱えており、VR-learningで制作した教材は、他工場も興味を示しているとのことだ。
「安全教育の教材は全工場で共通して使えます。一方で新人教育の教材については、工場ごとの違いがあるためそのまま流用することはできませんが、今後は他工場でも高い現場再現力という特徴を生かしたVR-learningの展開を検討しています。また金沢工場でも、既存のVR教材を随時修正しながら手順書の全てをVR化できるよう進めていきます」
さらに、同社では教育にとどまらずさらなるVRの活用を見据えている。「今後、会社案内などにVRを活用できればと思っています。例えば求職者向けに自社ホームページから会社内部を視聴できるようにしたり、日頃あまり工場に立ち入らない社員がいつでも見学できるようにしたりなど、社内外の広報にも役立てられるのではないかと考えています」
1950年の創業以来、自動車部品、完成車両の委託生産を主に手掛ける製造業。近年では、建設機械のキャビンや各種部品、自動車の補用部品の製作を中心に、設計から金型制作、プレス、塗装、組み立て、品質保証まで一貫した生産体制と多品種少量生産で、各社の委託生産を行っている。
商号 | 髙田工業株式会社 |
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創業 | 1950年 |
従業員数 | 459名(2023年6月期) |
資本金 | 3億6000万円 |
事業内容 | 自動車、特装車、建機などの部品製造 |
※記載された内容は2023年10月現在のものです。
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