基幹システム統合で生産性と収益性を向上 年間約1億円のコスト削減を見込む
アサヒグループホールディングス株式会社の傘下にある食品・飲料関連会社の基幹システム統合にMCFrameXA 生産管理・販売物流・原価管理を採用。業務の標準化により、短期導入を可能にしたほか、生産性や収益性を向上し、コストの削減を実現した。
東海道本線の新橋-神戸間の全線が開業した1889年、大阪麦酒会社として創業したアサヒグループホールディングス。「その感動を、わかちあう。」というグループコーポレートメッセージに基づき、日本初の瓶ビールや缶ビールの製造、世界初の屋外発酵タンクの設置など、常に革新的な取り組みに挑戦してきた。
現在、国内35工場で、酒類、飲料、食品の製品を製造。売上は1兆7000億円を超え、全売上の54%が酒類事業。続いて飲料事業が26.9%、食品事業が6.2%と続く。また国際事業は売上全体の11.2%で、中国、東南アジア、オセアニアを中心に事業展開を行っている。
アサヒグループホールディングスは、2011年7月にアサヒグループが持ち株会社に移行することで誕生した。傘下には、酒類事業、飲料事業、食品事業、国際事業が配置される組織体制となっている。持ち株会社に移行する前は、各事業会社に情報システム部門があり、それぞれにシステムを構築・運用していた。
持ち株会社への移行を機に、ITリソース(人、もの、金)のすべてをアサヒグループホールディングスの傘下に集約することを決定。アサヒグループホールディングスがIT戦略を立案し、アサヒプロマネジメントがIT戦略を推進、アサヒビジネスソリューションズがシステムの開発、運用・保守を行うという体制を確立している。
アサヒグループホールディングス IT部門 ゼネラルマネジャーの知久龍人氏は、「システム部門を集約することで、アサヒグループにおけるIT投資配分の最適化を図り、維持コストの低減と品質の維持向上を実現するとともに、ITと業務の知識を兼ね備えたプロフェッショナルな人材を育成することを目指しています」と話している。
アサヒグループホールディングスでは、2010年度~2012年度に実施された第4次中期経営計画でグループ共通のIT基盤を構築。2013年度~2015年度に実施される第5次中期経営計画において、基幹システムを統合・集約するとともに、各事業会社の業務プロセスを根本から見直すことを決定した。
最大のポイントは、「成長への貢献」「コスト削減と効率化」「グループグローバルマネジメントの確立」「従業員育成と社会貢献」の4つ。IT部門が中心となり、業務プロセスを見直し、BPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)を推進することで、生産性や収益性を向上し、各事業会社の成長に貢献することを目指している。
アサヒグループホールディングス IT部門 マネジャーの齋藤宏樹氏は、「以前はグループ会社ごとに、ERPの導入や自社開発など、さまざまな基幹システムを運用していました。この状態では、ITコストを削減することは非常に困難であり、基幹システムの統合・集約が不可欠でした」と当時を振り返る。
そこで開発会社6社の提案を検討した結果、MCFrameの採用を決定。和光堂、天野実業に、MCFrameの販売物流、生産管理、原価管理を導入し、エルビー、アサヒフードアンドヘルスケア、ニッカウヰスキーに販売物流を導入することを決定した。MCFrameを採用した理由を、齋藤氏は、次のように語る。
「MCFrameは、標準機能が非常に充実していました。またBIやEDI、会計システムなど、豊富な連携インタフェースを持っていることも決め手の1つです。さらに食品関連のプロセス系に強みがあり、数多くの導入実績があること、実際原価計算機能が搭載されており、標準原価計算とのシミュレーションが可能なことも評価しました」
また保守性も重要なポイントの1つ。齋藤氏は、「導入バージョンの永久サポートは、バージョンアップに関する追加コストが不要になるので非常に魅力的でした。他社のERPは、バージョンアップやアドオン、カスタマイズに追加コストが必要です。またソースコードが公開されているので、保守性の面でも安心感がありました」と話している。
MCFrameの導入にあたり、システム・インテグレーション(SI)を担当したのはインテックである。インテックが選ばれたのは、MCFrameの導入実績が多く、高いSI能力が評価されたためだ。特にインテックが独自に開発したMCFrame導入用の「テンプレート」、および「フィッティングアプローチ」は非常に効果的だった。
MCFrameには優れた標準機能が実装されているが、標準機能だけでは補えない機能をインテックのテンプレートで補完。またグループ共通で利用するデータ一括入力や入力チェックなどの機能をまとめた「アサヒグループ共通業務機能テンプレート」を適用した。標準機能と2つのテンプレートにより、グループ企業へのMCFrameの横展開を簡素化している。
また今回のMCFrameの導入では、開発手法を従来型から大きく変化させている。これまではフィット&ギャップアプローチにより、まず業務部門に要件を聞き、足りない部分をカスタマイズしたり、アドオン開発したりすることでシステムを開発していた。しかしこれでは、カスタマイズやアドオンが増えてしまい、開発期間も長期化してしまう。
フィッティングアプローチは、最初に主要製品のマスタを登録し、MCFrameの標準機能を現場の担当者に使ってもらい、業務プロセスを上流から下流まで流すことでギャップを把握。ギャップの部分はシステムをカスタマイズするのではなく、業務を見直すことで、カスタマイズやアドオンを最小化するアプローチである。
MCFrameの標準機能を早期に体験してもらうことで、テストフェーズに入ってからの手戻りが少なくなるメリットもある。フィッティングアプローチにより、現状調査からはじまり、要件定義、設計・開発、テスト、移行という従来手法では15カ月程度かかっていたシステム導入期間を、5カ月程度短縮することが可能になった。
これにより、2014年3月に、ニッカウヰスキーへの販売物流の導入を完了。続いて2014年4月に、天野実業への販売物流、生産管理、原価管理の導入を完了した。販売物流は取引先とのシステム連携の関係で、固有機能を開発した部分はあるが、生産管理、原価管理はほぼMCFrameの標準機能だけで適用している。
アサヒプロマネジメント 業務システム部 副課長 基幹グループの堀江一樹氏は、「天野実業では、2014年3月31日の夜にシステムの移行を開始して、4月1日の朝からMCFrameの運用を開始しています。あらかじめ現場の担当者にMCFrameの操作性を体感してもらうことで、平日夜のシステム移行を実現できました」と話す。
天野実業では、以前は部門最適で販売計画や生産計画の業務運用を行う傾向が強く、棚卸資産の増加が課題となっていた。MCFrameの導入をきっかけとして業務プロセスの改善を行い、KPIを設定してPDCAサイクルを回した結果、MCFrameの導入から1年弱で棚卸資産の大幅な圧縮を実現した。
アサヒビジネスソリューションズソリューション本部 本部長付の西勝肇氏は、「MCFrameの導入と業務改善による標準機能の共有化、フィッティングアプローチで標準導入を推進することによる短期導入、システム運用保守工数を50%以上削減など、さまざまな効果が期待できます」と話す。
さらに知久氏は、「今回の基幹システム統合によって、グループ企業の状況が可視化されたのも一つの大きな効果です。グループ共通基盤の構築、インフラ機器の集約、基幹システムの統合等様々な取り組みによって、収益性の向上やグループのシナジー効果も期待できます。年間5億円、2015年までの5年間で30~35億円のコスト削減を見込んでいましたが、2014年時点でほぼ計画通り実現できており、削減したコストを新たな分野に再投資しています」と話している。
今後、アサヒグループホールディングスでは、2015年1月に和光堂に、MCFrameの販売物流、生産管理、原価管理を導入する計画だ。その後アサヒフードアンドヘルスケアにMCFrameの販売物流を導入することを予定している。またグループ経営管理の促進を目的に、MCFrameに蓄積されるデータを有効活用し、原価低減のPDCAサイクルを確立するための仕組み作りも検討している。
知久氏は、「データ活用が今後の重要なテーマです。スマートフォンやタブレット端末で、いつでも、どこでもデータを活用できる仕組みを実現したいと思っています。そのためのインフラ整備ができたのが今回です。グローバルにビジネスを拡大するにはIT活用が不可欠であり、今後もB-EN-Gとインテックの支援に期待しています」と話している。
パートナー紹介
アサヒグループさまのMCFrame展開のお話をいただいた際に、最初の取り組みとしてご提案したのが「グループ標準化指針」の策定でした。同じシステムを複数社へ展開するにあたり、導入期間とコストを最小化するためには、様々な決めごとを最初に定めておく必要があります。標準化指針の2本柱は、「システム標準化」と「プロセス標準化」です。システム標準化は、インテックが保有する拡張機能テンプレートに加え、アサヒグループさま向けの共通機能を定義したものです。これにより開発コストを抑制すると共に、グループ全体でのシステム整合性が確保できました。次にプロセス標準化については、プロジェクトの各種タスク定義における役割分担を実体制に合わせたものにテーラリングしました。これにより個社プロジェクトで考えることを減らすと同時に、進め方に関するプロジェクト関係者の共通認識を高めることができ、作業がスムーズに進みました。
フィッティングアプローチについてはアサヒグループさま以外への適用事例はありますが、アサヒグループさまでの成功要因として、基幹業務再構築の基本方針をトップダウンで周知いただけたことが挙げられます。それによって、個社それぞれへの導入プロジェクトがブレることなくスムーズに進んだと考えます。
競争のグローバル化など経営環境が大きな変革期にある中、アサヒグループは各事業部門の権限と責任の明確化や専門性の追求による事業基盤の強化を図るとともに、国内外の成長領域へより大胆な資源配分を可能とする体制に移行して、飛躍的な成長を目指します。国内酒類事業では、お客様からの信頼や親近感の醸成によるブランド価値の向上、新しい発見や喜びを提供する新価値提案による総需要の拡大を図ります。国内飲料事業では、基幹ブランドのさらなる強化と次につながるブランドの育成に取組みます。食品事業では、グループの食品事業としての全てのバリューチェーンにおいてシナジーを追究し、国内食品事業全体の収益性向上を図ります。国際事業では、新規の事業投資や提携を視野に入れながら、事業基盤の強化と収益性向上の取り組みを推進します。
商号 | アサヒグループホールディングス株式会社 Asahi Group Holdings, Ltd. |
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所在地 | 130-8602 東京都墨田区吾妻橋1-23-1 |
創業 | 1889年 |
設立 | 1949年9月1日 |
従業員数 | 連結従業員数 18,001名(2013年12月31日現在) |
資本金 | 1,825億3,100万円 |
売上高 | 1兆7,142億3,700万円(2013年12月期連結業績) |
事業内容 | アサヒグループの酒類事業、飲料事業、食品事業、国際事業における経営戦略・経営管理を事業として展開。 |
※本事例は2015年3月現在の内容です。
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載当時のものであり、変更されている可能性があります。
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