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コラム

環境経営編

第1回 『REACH規則/RoHS指令は対岸の火事?』 (企業の環境経営と製品含有化学物質規制の概要)

環境経営編

皆様はじめまして、沖電気工業(OKI)の緒形と申します。
本稿から数回に分けて、製品含有化学物質規制への取組みの重要性とOKIグループの取組み事例についてご紹介をさせていただきますので宜しくお願い申し上げます。

「環境経営」の「攻め」の側面

突然ですが、「環境経営」という言葉をお聞きなったことがあると思います。これは、「組織が地球環境への負荷を低減するため、製品やサービスを含めて、その対応を経営戦略の要素と位置づけ具体化し、会社が環境に与える影響に配慮した企業の持続的な発展を目指す経営」と概要が定義されています。
環境といえば、温暖化防止や省資源などのテーマがコストとの係わりが強く、かつ、従業員やステークホルダに受け入れやすい企業の取り組みだと考えられます。最近では、ハイブリッドエンジンを搭載した自動車など、工場や事業所で使用されるエネルギー対策に限らず、商品や製品による環境貢献が企業の経営に大きな影響を与えており、消費者の利益や企業の評価の向上にも強く関係しています。これは、環境経営の「攻め」の側面と言えるでしょう。

「環境経営」の「守り」の側面

しかし、もう一方の側面として、電子電機の製造業では、製品に含有する化学物質を規制する法令が次々と施行され、順法への取組みが企業の重要課題となっています。法令違反があった場合、罰則金のほか、製品回収のために発生する損失は莫大な額に上ることがあります。過去には、日本企業もペナルティーを受け、数十億円以上の損失が生じたケースが報告されています。この違法に混入した化学物質は、中毒などの健康被害だけではなく、廃棄処理された後の土壌や水質の汚染にもつながることから、企業イメージも多大な影響を及ぼし、その後の企業活動にも支障を来たすことが容易に推測されます。このように環境関連の法規制対応は、製造業が経営上直面するリスクにどう対応するかという環境経営のいわば「守り」の側面と言えます。 

各国の主な化学物質規制について

近年は、科学技術の発達に伴い、次々と新しい化学物質が生まれています。これらが市民の身のまわりのありとあらゆる製品で利用され、豊かで便利な生活につながっています。しかし、同時に、どのような化学物質が含まれているか必ずしも十分認識、管理されることのないまま、製品が使用される状況も生じています。製品に含まれる化学物質が適切に管理されないと、人の健康、安全や生活環境への大きな脅威となりうることは言うまでもありません。
これを受け現在では、世界各国で製品含有化学物質に対する規制の導入や強化が進んでいます。法規制の内容は、「含有禁止」「含有濃度規制」「含有情報開示」など、いくつかに分類することができます。日本では、家電製品を対象としたJ-MOSSと呼ばれる「含有情報開示」の義務があります。中国も同様の規制が制定されていますが、近々に「含有濃度規制」へ改正される予定です。タイでは、武器(爆弾)の原料となる物質の規制があり、各国の目的により、対象となる物質や規制の方法が異なっています。
その中で、先行しているのが欧州連合(EU)であり、まずは電気電子製品に対する鉛等の特定有害物質の使用禁止を定めるRoHS指令(Restriction of Hazardous Substances(危険物質に関する制限))を制定し、続いて全ての化学物質を対象に包括的な規制を定めるREACH規則(Registration, Evaluation, Authorisationad Restriction of Chemicals(化学品の登録・評価・認可および制限に関する規則))が制定/施行されています。これら欧州の規制がその他各国の規制の雛形になってきたという歴史があります。よって、RoHS指令がJ-MOSSの雛形となったように、REACH規則を母体とする日本や各国の規制が検討されています。

各国の主要な化学物質規制

RoHS指令に比べREACH規則は複雑かつ広範、そして実は「待ったなし」

REACH規則はRoHS指令につづいて欧州連合にて発効された化学物質規制ですが、複雑さ、範囲の広さは比べようもないほどです。それぞれの詳細については次回第二回のトピックとしますが、ここでは、ざっと大きな相違点にだけ触れておきましょう。

<RoHS指令に比較したREACH規則の主な相違点、特記事項>
◆電子電機製品への要求から全製造業が対象。
◆対象物質が桁違いに増加、製品の母数によって管理が変化、管理対象項目が増加、など の点から手作業的な対応では事実上無理。
◆梱包材などすべての部材が対象であるため、全工程を視野に管理を見直す必要がある。
◆これらの製品に含まれる化学物質の適切な管理は、自社のみでは不可能。取引先も含め たサプライチェーン全体にわたる化学物質情報を把握し、製品を構成する部品に含まれ るもの、さらには加工や物流段階で使用される化学物質についても、確実な管理が不可欠。
◆アーティクル(成形品*)を製造するセットメーカや部品メーカの初回届出期限は2011 年6月。
 (*「アーティクル」は「成形品」と訳されていますが、日本人が一般に捉える、プラスチックのような成形品のみを指すのではなく、非常に広範囲な部材・部品を指しているため、注意が必要です。)

このようにREACH規則のステージにおいては、日本の工業製品化学物質に関する法令要求は、海外や一部の企業の課題ではなく、多くの日本企業の足元まで来ています。各企業では、モノづくりに関わる社内の全工程に渡る運用検討、顧客やサプライヤーとの社外調整、ITシステムの検討などを 2011年6月の初回届出期限までに済ませておくべきで、まさに「待ったなし」の状況と言えましょう。(その温度差が企業間でなぜか大きく異なることに筆者は危惧を覚えます。)
次回第二回では、この待ったなしの化学物質管理対応の概要を正しく捉えるべく、RoHS指令/REACH規則の内容や相違点を浮き彫りにします。

 

【用語解説】
◆REACH規則
 EUにて2007年6月に施行。EU域内にて化学品(Chemicals)を製造、輸入する場合に、その製造者、輸入者に登録(Registration)、評価(Evaluation)を義務付け、高懸念 物質については、関係当局が許可(Authorization)、さらにリスクの高い物質には、禁止などの制限(Restriction)を設ける規則。REACHは「the Registration, Evaluati on, Authorization and Restriction of Chemicals」の略称。
◆RoHS指令
 EUにて2006年7月に発令。コンピュータや通信機器、家電製品などに含有する有害化学 物質の使用を禁止する指令。RoHSは「Restriction of the use of the certain Hazard ous Substances in electrical and electronic equipment」の略称。

第2回コラム「RoHS指令とREACH規則、何が違うの?」に続く

世界で戦う準備はあるか
緒形 博 氏
緒形 博 氏
OKI(沖電気工業株式会社)
CSR部 地球環境室 室長
OKI(沖電気工業株式会社)では、化学分析技術を基礎に環境関連施設の運用管理、機器設計、生産拠点の構築、国内外拠点への技術支援と多岐に亘る業務を経験。現在、OKIグループ統合環境マネジメントシステムの統括管理責任者に加え、製品含有化学物質管理に関する運用ルールの構築や情報システム開発/運用責任者を担務。