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コラム

安全衛生教育

第1章 安全衛生教育に活用できるVR教材のパターン(教材形式編)その1

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安全衛生教育には、知識や技能を習得することを法令で義務付けられているものもあれば、企業内の自主的活動として能力向上に務めるものもあり、またカリキュラムが法令で定められているものもあればとくに決められていないなど、様々存在します。これらを実施することは、実施者は事業者の責任を果たし、受講者はこれらを修了さえすればきっと安全に安心して活躍できるだろうと信じて受講されることでしょう。ただ、安全衛生教育は業務に起因する怪我や病気を防止することを目的としてはいるものの、一回限りの受講で全て理解して全て実践できるようになるというものではありません。かといって逆に、何度も繰り返すことは無駄が多くなるでしょう。ではいったい、何をもって”安全衛生教育の目的を果たした”と言えることができるのでしょうか。

安全教育の理解度を測る方法

一般的に、教育や研修の最終目標は、受講者が”修了”することです。しかし、もし十分に理解していなくても、”修了した”ことになっているのであれば、これは大きな問題です。よって受講直後に、テストなどによって受講者の理解度を確認することによって、”理解度が目標以上に達成したことによって修了した”とするケースがほとんどです。しかしながら安全衛生教育の場合は、十分理解したうえで実践までできなければ怪我や病気のリスクが高くなり、かつリスク回避に失敗すれば命を落としかねないにもかかわらず、その教育のほとんどが事業活動の現場において実践される内容であるため、受講直後に理解度を確認することは非常に困難です。

そこで、テストなどによる理解度の確認方法に代えて、「アンケートによって理解度を測る」という手法があります。同じ”修了”であっても、受講者が”満足した”と感じる教育と”不満”だと感じる教育とでは、前者の教育効果がより高いと推定します。たとえば、「あの先生の話は目からウロコで納得できた」と感じた時の内容と「あの講師は自慢話ばかりでもう聞いていられなかった」と感じた講話の内容とでは、まったく記憶に差があるように、教育効果にも差が出るということです。もし安全衛生教育において、受講者が退屈するかしないかで教育効果の高低が決まってしまうとすれば、受講者が退屈だと感じる教育手法は理解が薄く浅いもので終わる恐れがあり、労災を防ぐ効果が出ないどころか、勘違いによる労災を増加させかねないということになります。逆に、満足できる教育手法を用いれば、受講者の理解を正しく導いたり不足を補えたりすることが期待でき、危険感受性やリスク認知を高め、労災減少に繋がることでしょう。

ここで、教育の効果を「反応(満足度)」「学習(理解度)」「行動(再現度)」「業績(貢献度)」の4つのレベルで評価する考え方(カークパトリックの4段階評価※1)を、安全衛生教育にも当てはめて考えますと、まず「反応」つまり受講者が”満足する”ことがひとつの目安であるということになります。この「反応」ついては、受講者の表情や仕草の変化を講師がリアルタイムで感じ取ることに加え、アンケートによる満足度の数値化や不満に対する文書化などによって推測できます。これは普段から講師をなされている方にとっても馴染みのある評価方法でしょう。あとは、できるだけ多くの事例の中から、「反応」の良い事例について探求すれば、自ずと答えが導き出されることでしょう。

教育手法の変化

しかし安全衛生教育が、単に“修了”や“反応”で終わってしまっては、本来の目標である知識の獲得や危険感受性の向上や、その先にある労働災害の撲滅を成し得ません。これに対し、近年は教育手法の拡張を目指して、被災状況を再現したり、起因事象を疑似的にまたは安全な強度で体感できる設備や施設が開発され、自社導入する事業者も増えてきました。ところが、“墜落”や“巻き込まれ”などによる死亡災害が減らない状況にあるにも関わらず、これらの事例を自身で体感させることは現実では不可能です。また、動画教材のリアルさを強化させ、座学や体感設備と組み合わせる工夫も進んできました。しかしながら、集合形式で一斉に見る動画だけでは当事者感が薄まり、結局、座学の延長という感覚が強く残っていました。

VR技術を使った安全教育の取り組み

そこで、VR(Virtual Reality ヴァーチャルリアリティの略)技術を応用した、視聴覚による労働災害や事故の再現や疑似体験を、安全衛生教育ツールとして導入するアイデアが生まれたのです(※2)。一方、VR技術の応用についてはゲーム業界が先行し欧米中ですでに発展し、また学術界においてもすでに医療や学校教育等への応用に関する研究も進んできました。日本の産・官・学が連携して安全衛生教育に取り組みはじめたのは2016年頃からで、ようやく事業者の実施手法の一つとして浸透しつつあります(表1)。

※1: 「Kirkpatrick,D.L. Evaluating Training Programs: The Four Levels. Berrett-Koehler,1998.
※2:「安全教育VRコンテンツにおけるクロスモーダル刺激の呈示方法に関する検討(盛川浩志 河合隆史 他 日本バーチャルリアリティ学会論文誌Vol.11No.4pp.479-485(2006))」

表1:「VRを使った安全衛生教育事例」(古い順/論文については概要省略)2021.5現在 当所調べ

 

タイトル・テーマ

概要

「労働災害疑似体験VRシステム・セーフマスター(S社 2006-)」

箱状の機材に入れた手の位置に合わせ、VRで仮想環境中にCG化した手を映写し、巻き込まれ災害を再現。

「VR体感教育(M社 2016-)」

ヘッドマウント型のVR装置に加え、コントローラや3軸シミュレータを連動させ、墜落や感電災害等を再現。

 

mcframe MOTION VR-learning (B社 2017-)」

360°カメラで撮影した映像に説明を加えることでオリジナルのVR教材が簡単に作成でき、VRヘッドセットに加えWebブラウザでも体感可能。

「安全体感VRトレーニング(T社 2017-)」

3DCGによる労働災害や事故の再現。ワイヤレス化、画像処理能力向上を両立し、20種類を超えるコンテンツを開発。

「第13次労働災害防止計画(2018)」

「危険体感教育実践セミナー(中災防 2020-)」

第13次労働災害防止計画にVRの活用を示し、これに基づいて中災防が上記の機材を利用したセミナーを開催。

「安全教育VRコンテンツにおけるクロスモーダル刺激の呈示方法に関する検討(盛川浩志 河合隆史 他 日本バーチャルリアリティ学会論文誌Vol.11No.4pp.479-485(2006))」
「VR技術を用いた体感型安全教育支援システムへの機能拡張による教育効果の向上に関する研究(井原雄人・永田勝也 早稲田大学大学院環境エネルギー研究科(2011))」

「VRシステムによる認知能力の拡張を目指して(河合隆史) 安全と健康(2021)」

 

「安全衛生教育に活用できるVR教材のパターン(教材形式編)その2」に続く

野間 義広
野間 義広
労働安全コンサルタント(化−第591号) 製造業や建設業等における安全衛生に関する管理から実務まで幅広い知識と経験で多方面から共感を得ている安全衛生の専門家。安全管理者・衛生管理者・化学物質管理者・危険物取扱者などの経歴をもち、安全診断業務、各種特別教育講師の傍ら、社労士支援コンテンツ制作・安全衛生クラウドシステム開発・VRコンテンツ開発などを支援している。日本労働安全衛生コンサルタント会会員。