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原価管理編

第5回 『固定費を回収して利益を獲得するために』

原価管理編

皆さん、こんにちは。原価コラムの第5回目です。(第4回目から随分と間が空いてしまい失礼しました・・・)今回は第4回目でお伝えしたとおり、「固定費を回収する」という考え方についてより詳しく説明したいと思います。

「固定費を回収するとは?」

前回のコラムでは、〔図表5-1〕のように売上高から先に回収すべき変動費を差し引いた貢献利益によって、固定費を回収して利益をあげるのが経営者の視点であることを説明しました。(詳細については前回の第4回コラムを参照ください)

〔図表5-1〕経営者視点の変動費と固定費

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改めて言うことでもありませんが、製品の収益性を分析する際には「原価(Cost)」、「売上(Volume)」、「利益(Profit)」の関係性をきちんと把握する必要があります。皆さんがよくご存知のCVP分析です。CVP分析を実施するにあたっては、製品別の利益がどのような要素から成り立っているのか、〔図表5-2〕のように売上を販売数と販売単価に、原価を変動費と固定費に、さらには変動費を販売数と変動費単価に分解できるような仕組みを構築しておく必要があります。

〔図表5-2〕利益構成要素(プロフィットドライバー)

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〔図表5-2〕の利益構成要素が把握できれば、〔図表5-3〕のように一般的によく知られているCVP分析図を作成することができます。

〔図表5-3〕CVP分析図

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このCVP分析によって、製品別に利益を獲得するために必要な売上高(損益分岐点売上高)を求めることもできます。この基本的なCVP分析図を少し変形しながら、固定費が改修される仕組みを説明します。

〔図表5-3-1〕CVP分析図変形その(1)

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まず〔図表5-3-1〕のように変動費と固定費の線を入れ替えると、売上高に応じて変動する変動費線と並行した固定費線が引かれます。一見すると固定費線が変動しているように見えますが、変動費線に並行しているために固定費線が変動しているように見えているだけだとお考えください。

〔図表5-3-2〕CVP分析図変形その(2)

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そうすると、〔図表5-1〕で説明した貢献利益(または限界利益)は売上高から変動費を引いたものになりますので、〔図表5-3-2〕の黄色で塗った部分に相当します。

〔図表5-3-2〕CVP分析図変形その(3)

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さらに、〔図表5-3-3〕のように変動費線を外して貢献利益中心に書き換えると、売上高に応じて貢献利益が増加し、貢献利益が固定費線と交わる箇所が損益分岐点として表されます。つまり貢献利益が固定費を回収できなければ損失が発生し、貢献利益が固定費を回収できれば利益が発生することになります。以上の説明で貢献利益が固定費を回収するというイメージの大枠は掴んでいただけたと思います。

「いかにして固定費を回収すべきか?」

それでは次のステップとして、上述した固定費回収の考え方をどのように業務に適用すべきか説明したいと思います。重要なのはどの単位で固定費の回収状況を管理するかという視点です。つまり、製品別に固定費の回収状況をモニタリングするのか、製品グループ別なのか、事業部別なのかという意味です。

製品別に固定費の回収状況をモニタリングするということは、今までの原価コラムでも述べてきたように、製品別に固定費を配賦する基準が生産量に応じて増減する以上、回収状況を把握する管理単位としては不適切です。たまたま固定費配賦額が少なかった製品について、貢献利益が固定費を回収できていると一喜一憂するのはナンセンスだからです。

もし発生する固定費の全てを特定の製品に直課することができるような場合(例えばある工場では1つの製品しか製造していない場合など)は製品別に固定費の回収状況を把握することに意味があるかもしれません。しかし会社視点で考えると貢献利益で回収すべき固定費は、売上原価に含まれる製造固定費だけではなく、販管費等も含めた固定費総額であるべきなので、他工場の製品と販管費の回収額を分担する以上は完全だとは言えません。
極端な言い方をすると全社で1製品しか製造・販売していない、つまり「製品単位 = 会社単位」の視点で管理できるのであれば製品別に固定費回収額を把握する根拠は十分ですが、ほとんどの企業でこのようなケースは当てはまらないと思います。各企業の実情に合わせてどの管理単位で固定費額の回収を把握すべきかを検討し、割り当て額をどのように決定したのか、その経緯をきちんと説明できることが重要です。

私は事業部単位くらいのメッシュで固定費の回収状況を把握するのが一番効果的だと考えています。実際の業務では来期計画を策定する際、〔図表5-4〕のように事業部単位で目標とする貢献利益と固定費回収計画を作成して、実際の固定費回収状況と比較することにより、目標どおりに貢献利益が固定費を回収できているかどうかモニタリングすることが必要です。〔図表5-4〕の例は、本来であれば12月時点の累計貢献利益額が年間に発生する固定費総額を回収し終わって今期の営業ベースで利益獲得できているはずが、予定どおり固定費の回収が進んでいない状況を表しています。

〔図表5-4〕固定費回収状況のモニタリングイメージ

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「取るべきアクションとは?」

ここまで貢献利益が固定費を回収する仕組みについて説明してきましたが、重要なのは固定費の回収状況をモニタリングすること自体ではなく、固定費の回収状況をモニタリングすることによって現状を把握し、次のアクションに結びつけることです。ただモニタリングするだけで次のアクションを起こさないのは、このまま順調に売上高が推移して貢献利益が固定費を回収してくれることを期待するだけで無策に終わってしまい、結局何も管理していないことに等しいからです。

予定どおり固定費の回収が進んでいないことが分かったとき、皆さんならどのようなアクションを起こして現状を打破しようとされるでしょうか?恐らくアクションを起こす前に、以下のように現状を把握されると思います。

  1. 固定費の回収が遅れているのは、売上が低迷しているためなのか?
  2. 売上目標を達成している場合は、変動費の価格高騰や為替変動によって貢献利益率が低下しているためなのか?
  3. 売上目標も達成していないし、貢献利益率も低下しているためなのか?

上記(1)~(3)に万能な施策は売上を増やす努力をして、少しでも貢献利益を稼ぐことです。しかしながらこのご時勢に売上増加を狙うことは容易ではありませんし、闇雲な販促活動は企業体力を弱める危険性があります。私は要因別にアプローチ方法を変えて戦略的に行動することが重要だと考えています。上記〔図表5-4〕の例のように、今期の残り3ヶ月で何をすべきか?長期的な企業戦略ではなく、短期決戦を勝ち抜く戦略が求められているときに、どのようなアクションを取るべきなのか?次回のコラムで語ってみたいと思います。それでは次回をお楽しみに・・・

 

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BENGでは財務・管理会計コンサルタントとしてSAP社のERPパッケージ導入に従事し、お客様の業務改革要求を実現しプロジェクトを成功に導く。 自社製品MCFrame部隊に移ってからは、導入企画・導入コンサルタントとして原価管理のみならず、経営管理分野まで踏み込んだ提案活動を心がける一方、 商品企画・開発等の活動にも従事。 モットーは、お客様視点に立って現場で一緒に"汗"をかくこと。 MCFrameでお客様の笑顔を見る事を楽しみに打ち込んでいる。