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コラム

環境経営編

第5回 『適合性とマネジメント効率の向上を目指した運用事例』 (製品含有化学物質情報システムの導入事例と関連システムとの連携)

環境経営編

これまで、ご覧いただきましてありごとうございます。沖電気工業(OKI)の緒形です。
前回は、REACH規則等の法規制に適合するための「システムに求められる要件と課題」についてご紹介しました。最終回の本稿では、製品含有化学物質情報システム「COINServ-COSMOS-R/R」の導入事例を踏まえ、周辺(基幹システム等)システムとの連携による、法令等への適合性の向上と運用の効率化についてご説明致します。

どのようなシステムとの連携があるか?

最近のマスコミ報道で多く取上げられる話題に「中国産レアアース問題」があります。解説によれば、中国以外にも鉱脈があるものの生産時のコストが安価であることから、輸入が集中しているようです。多くの企業では、調達物品の品質、納期、コストなどのリスクを分散させるため、複数社からの購買を実践されていると思います。
そこで、製品含有化学物質との関連を考えてみると、前述のような安定供給にリスクのある物質や材料を使用(含有)している物品は、有害性の規制と同様に調達が不可能になることが明確です。従って、将来的には、含有化学物質の情報を生産管理(調達情報)システムと連携させる必要が出てくる可能性もあると考えます。一方、含有物質だけではなく、部品や製品を製造する段階で、使用する化学物質についても同様であり、過去には、半導体製造のリソグラフィ工程などで使用されていたPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸:perfluorooctanesulfonic acid)が、蓄積毒の有害性から厳しく規制され業界に多くの影響を与えました。
さて、本題の化学物質規制の順守を適切かつ効率的に実践するためには、自社ワークフローに対する適切なアプローチと社内外の関連情報システムとの連携がひとつのカギになります。前回までに、ご紹介しました、代表的な「化学物質情報調査」「設計/評価」「製造/出荷」の3つのプロセスにおけるシステム連携の事例概要をご紹介します。

化学物質情報調査プロセスにおけるシステム連携

取引先から購入物品の調査を実施する際の情報の流れを図1に示します。

調査プロセスにおけるシステム連携
このとき、調査に必要な「対象部品」「調査項目(化学物質)」「調査方法(メール/電子交換システム等)」などの要件を決定するためには、他の社内システムとの連携が必要になります。
 1.対象物品の決定 : 対象製品の部品構成→PDM(製品情報管理:Product Data Management)
 2.調査項目(化学物質)の決定 : 顧客要求や法令情報→品質情報システム(製品開発情報)
 3.調査方法の決定 : 電子メール、自社構築調査システム、社外調査システム(AS*1/GP*2等)
この他にも、調査先情報を管理している生産管理システムなどが関連します。
また、電子電機業界を中心にASやGPといった川上から川中/川下企業へ調査情報を展開するシステムが稼動し、タイムリーな情報入手が期待されています。これらの社外システムで入手できない情報は、独自の電子交換システムを構築したり、個別に電子メール等で調査を行うことが必要です。
(AS*1 :特定企業がポータルサイト等を提供し情報収集を行う商用アプリケーションサービス)
(GP*2 :アーティクルマネジメント推進協議会による化学物質の情報交換の基盤)

設計/評価プロセスにおけるシステム連携

対象製品に要求される条件に適合するために設計段階の評価に必要な情報の流れを図2に示します。

設計/評価プロセスにおけるシステム連携このプロセスで必要な情報は、「製品構成情報」「自社加工品情報」「その他設計情報」などです。
 1.製品構成情報 : 構成されている部品→PDM(製品情報管理:Product Data Management)
 2.自社加工品情報 : 材料、大きさ、処理など→CAD(Computer Aided Design)システム
 3.その他の情報 : 顧客要求や法令情報→品質情報システム(製品開発情報)
この他にも、デザインレビューの合否を承認する業務フロー関連システムや結果等のデータを管理する文書管理などのシステムが関連します。

製造/出荷プロセスにおけるシステム連携

化学物質に関する規制や要求を順守していることを確認し、出荷判定などの最終決定をするために必要な情報の流れを図3に示します。

製造/出荷プロセスにおけるシステム連携

また、REACH規則では、対象となる物質の総出荷量を把握し報告することが求められるため、営業情報や生産管理との連携が必要になることも考えられます。
 1.出荷等の合否情報 : 生産管理システム、基幹システム(合否判定、次工程指示など)
 2.要求事項情報 : 顧客要求や法令情報→品質情報システム(製品開発情報)
 3.その他の情報 : 対象となる物質の総出荷量→生産管理システム、営業情報システム
このように、あらゆる周辺システムとの情報連携により、適合性の向上と運用の効率化が期待できますが、製品規模や製品数により対象範囲を決定することが重要であり、かつ、これからも変化することが明確な規制等の動向に対応可能な情報システムを構築することが最大のカギと考えます。
これにて、本コラムは終了いたしますが、最後までお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。
OKIでは、コラムの途中でも触れました「COINServ-COSMOS-R/R」というソフトウェアの形で自社での製品含有化学物質の管理ノウハウをパッケージ化し、他社様にもご提案・販売いたしております。実践的なノウハウを含めた機能とサービスに各社様から高い評価をいただいております。この分野で何かお役に立てそうなことやお困りのことがございましたら、お気軽にお問合せいただければと思っております。日本の製造業のREACH・RoHS対策が首尾よく運ばれますことを切に願っております。

世界で戦う準備はあるか
緒形 博 氏
緒形 博 氏
OKI(沖電気工業株式会社)
CSR部 地球環境室 室長
OKI(沖電気工業株式会社)では、化学分析技術を基礎に環境関連施設の運用管理、機器設計、生産拠点の構築、国内外拠点への技術支援と多岐に亘る業務を経験。現在、OKIグループ統合環境マネジメントシステムの統括管理責任者に加え、製品含有化学物質管理に関する運用ルールの構築や情報システム開発/運用責任者を担務。