海外現地法人のERP、どう選ぶ?製造業の本社が押さえるべき3つの判断軸

海外に製造・販売の拠点を持つ製造業にとって、輸出モデル、海外集中生産モデル、地産地消モデルのどれを選ぶかは、扱う製品や物流によって変わります。ただし、どのモデルでも本社がグローバルで経営情報を捉えなければならない点は変わりません。本記事では、海外現地法人にERPを導入・展開するとき、本社の企画責任者が持つべき判断軸を3つに整理します。
この記事でわかること
海外現地法人のERP選びは、次の3つで判断することを推奨します。
- 同じ仕組み・同じ粒度・同じ精度をそろえる(判断軸1)
- 制度変更とセキュリティに追従できる「変化への強さ」を備える(判断軸2)
- 業務を「幹・枝・葉」に切り分け、自社の強みを堅持する(判断軸3)
この記事を活かしていただき、自社の状況に照らして判断するヒントを得ていただければ幸いです。
本記事は、オンラインセミナー「海外現地法人のERP、どう選ぶ? グローバル製造業におけるクラウドERPの有用性」の解説内容をもとに構成しています。資料ダウンロードつきの解説は▶ セミナー動画をご覧ください。
1. なぜ本社は、海外拠点の実態をつかめないのか?
原因は現地の努力不足ではありません。拠点ごとにシステムが個別最適化され、データの粒度も鮮度も揃っていないことが多いからです。
本社側では、現地の製品在庫や売上・利益がブラックボックスになり、実態がつかみにくくなります。拠点から届くデータやレポートは粒度が粗く、鮮度も低いままです。今日受け取った数字が先々月のものだった、という状況も珍しくありません。これでは予実の差を埋めるための対策が後手に回ってしまいます。
現地側にも事情があります。法規制や商習慣への対応は必須で、システム構築は現地任せになりがちです。結果として拠点間でデータの管理粒度が合わず、原価などの比較分析ができません。加えて不正リスクやサイバー攻撃への備え、手作業の多さも重くのしかかります。

図1:現地法人のステージによって必要なシステムは異なる
さらに厄介なのが、拠点ごとのステージの差です。立ち上げ期の拠点は業務プロセスそのものを作っている段階なので、システムに自社独自の要件をコストをかけて開発することは多くありません。一方で成熟期の拠点は、業務効率化や間接工数の削減、全体最適が主題になり、投資対効果が見込める開発は多くなる傾向にあります。
つまり必要な機能は拠点ごとに違って当然です。だからこそグローバルガバナンスとして「何を拠点に委ね、何を本社がそろえるか」を先に決める必要があります。
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2. 判断軸1|グローバルで経営情報を捉えるための「仕組み・粒度・精度」を定義する
そろえるべきものは3つ、「同じ仕組み」「同じ粒度」「同じ精度」です。各拠点のニーズに合わせてバラバラに最適化すると現地任せになり、本社からの管理が難しくなります。ステージの変化に対応できる拡張性を持ったプラットフォームを選び、できるだけ仕組みをそろえることが出発点です。
同じ仕組みとは、システムそのものを指します。システムを共通にすることで、システム上で実現する業務プロセスや業務データを揃えることができます。同じ粒度とは、拠点ごとの費目体系や工程の管理粒度を指します。同じ精度とは、配賦の大まかなルールや実績データの精度のことです。すべてを完璧に合わせる必要はありません。グローバルで経営情報を捉えるために「最低限ここは合わせる」という共通のモノサシを作ることが、管理の土台になります。

図2:「同じ仕組み・同じ粒度・同じ精度」がそろって、グループ全体が同じ言葉で語れる
たとえば、「現地のデータを経営判断に使える形にする」場面を考えます。ここで壁になるのは通貨と会計基準です。現地の通貨・基準のまま報告を受けても、本社で比較するには変換の手間がかかり、リアルタイム性も損なわれます。グローバル共通の勘定科目などの統一ルールを設け自動マッピングし、会社の設定為替レートで、表示通貨を合わせれば数値を比較できるようになります。効果は比較の場面で表れます。同じ製品を複数拠点で製造している場合、「インドネシアは原材料費が他拠点より高騰している」「ベトナムでまとめて製造したほうが安いのではないか」といった比較やシミュレーションができるようになります。
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また、もう1つ欠かせないのが体制づくりです。現地のマネージャーが現場やシステムに明るいとは限りません。本社主導で「実績と在庫はこの粒度で持つ」と決め、本社の担当者が現地に入ってローカルスタッフを巻き込む。リーダーが各拠点を横滑りで支援すれば、同じ考え方が拠点をまたいで伝わります。体制ができていれば、データを集めて分析した後の改善、つまりPDCAも回しやすくなります。
3. 全社統一が難しいときは?──「2層ERP」という選択肢
全社を1つのシステムに寄せるのが難しい場合、地域(日本/海外)・規模(ステージ)・機能(販社/製造会社)で複数に分ける2層ERP(例えば、本社と海外拠点で別のERPを使い分ける構成)を選ぶケースが増えています。
グローバル統一型は、グループ全体の情報を一元管理でき、統制面でメリットがあります。ただし拠点ごとに規模や業種が異なる場合、1つのシステムで各拠点の固有要件に応えながら管理するのは容易ではありません。中小規模の拠点ではコスト面の課題も残ります。
2層ERP型なら、グループの統制を取りつつ拠点ごとにシステムを最適化できます。日本本社と国内子会社を1層目、海外拠点を2層目とするように、地域で仕組みを分けるのが代表的な形です。

図3:グローバル統一型と2層ERP型――メリットと課題の比較
2層を選んだ際の注意点は、粒度と精度の定義は本社が握り続けなければならないということです。ここを手放した瞬間に、2層ERPは拠点ごとの個別放置型に戻ってしまいます。
4. 判断軸2|制度変更とセキュリティに追従できる「変化への強さ」を重視する
クラウドが効くのは、制度変更とセキュリティという、現地だけでは対処しきれない2つの変化に追従できるからです。
制度面の変更は止まりません。マレーシアやシンガポールでは請求書を電子データでやり取りすることを義務づける電子インボイスの強制適用が進み、脱炭素の流れの中でEUを中心に環境規制が強化されています。日本でも電子帳簿保存法への対応に追われた企業は少なくありません。自社で用意したサーバーにシステムを置くオンプレミスERPをカスタマイズして塩漬けにする従来のやり方では、変化のたびに追加コストが発生します。クラウドERPであれば、バージョンアップによって法規制やAIなどの最新技術に追従できます。
セキュリティ面はより切実です。現地にIT管理者がいないケースが多く、対策が十分でないまま運用されていることがあります。オンプレミス環境で攻撃を受けて基幹システムがダウンし、復旧に時間を要した例もあります。セキュリティ成熟度の低い海外拠点が入口として狙われる、というニュースも報じられています。

図4:クラウド利用による4つの効果(運用・保守/可用性/セキュリティ/アクセス性)
オンプレミスでの導入は各社のネットワークの中で自由度高く運用できますが、管理にも負担がかかります。クラウドサービスであれば、現地に情報システム部門の担当者がいなくてもサーバーの運用保守は不要です。高度なセキュリティ対策とバックアップが標準で備わり、本社情報システム部門の負荷も軽くなります。地理的な制約がないため、本社からのモニタリングやサポートもしやすくなります。
5. 判断軸3|業務を「幹・枝・葉」に切り分け、自社の「強み」を堅持する
自社の強みが宿る業務は標準に合わせず、変化の多い業務は作り込まない。この切り分けを「幹・枝・葉」の3階層で行うのが、3つ目の判断軸です。近年はFit to Standard、つまりパッケージに業務を合わせる考え方が広がっています。有効な手段ですが、ここで忘れてはいけないのが、自社のモノづくりの強みを見極め、それを活かせるシステムになっているかという点です。
幹は、事業の根幹となり、自社の強みが宿る業務プロセスです。自社の強みはどこにあるのか?その強みを活かす組織や業務ルールを作れているのか?そして、それを表現できるERPなのか?幹を評価しないままERP選定に入ると、自社の強みという重みづけがない機能比較表の点数だけで決めることになります。
枝は、幹を支える周辺の業務です。スタンダードに合わせることで余計な業務を削ぎ落とせる一方、強みを活かすためのアドオン・カスタマイズが必要な領域もあります。インドネシア拠点ではアドオンを開発して税関システムとつなぐ、タイ拠点では企業間で発注データをやり取りする既存の購買EDIとの連携に対応する、といった選択を迫られる領域です。
葉は、業務改善や運用変更など変化の多い領域です。ここは作り込むより、変化に強い仕組みで受けるほうが合理的です。本稼働時にすべてを作り切るのではなく、稼働後に業務改善をしながら育てていけるERPを選びます。

図5:業務を「幹・枝・葉」に切り分けてERPの適用範囲を判断する
6. 3つの判断軸に対応するmcframe
ここまで整理した3つの判断軸を踏まえて自社に適した製品を選ぶことを推奨します。そのうえで、当社ビジネスエンジニアリングが提供するmcframeが各判断軸にどう対応するかを、一例としてご紹介します。本記事に関わるのは、オンプレミスで導入できる「mcframe 7」と、クラウドサービスである「mcframe X」の2つです。それぞれの詳細は製品ページをご覧ください。
・判断軸1(同じ仕組み・粒度・精度)
mcframe 7、mcframe Xはいずれも、グループ内の複数の会社を1つのシステムでまとめて管理する複数会社管理(マルチカンパニー)に対応しています。標準原価と実際原価のズレを要因ごとに分解して原因を突き止める原価差異分析も、工場別・工程別・品目別といった同じ粒度で行えます。構成としては、グローバル統一型と2層ERP型のどちらにも対応でき、日本はmcframe 7、海外はmcframe Xといった地域や規模のグループで分けて選択することも可能です。
・判断軸2(変化への強さ)
mcframeはバージョンアップで日本の法改正に追従できるだけでなく、カスタマイズができるため、各国固有の要件にも柔軟に対応できます。海外拠点まで含めて変化に追従することを重視するなら、SaaSとして利用でき、アップデートもスムーズなmcframe Xが基本の選択肢になります。自社で運用体制を持っていたり、自社固有のネットワーク環境が整備されていたりする場合は、mcframe 7をオンプレミスで導入することもできます。 ・判断軸3(自社の強みの堅持)
mcframeシリーズは30年にわたり製造業に提供してきたため、幹にあたる業務プロセスをカバーできる範囲が広いことが特長です。標準機能で対応できる領域も、カスタマイズで対応できる領域も広いため、自社の強みを削らずに残しやすくなります。枝にあたる他システムとの連携やアドオン開発にも対応しています。そのうえで、さらに作り込みたい場合はmcframe 7、既存機能を最大限に活かしてFit to Standardで導入したい場合はmcframe Xをおすすめします。
7. まとめ
海外現地法人のERP選びで、本社の企画責任者が押さえるべき判断軸は3つです。
1つ目は、グローバルで経営情報を捉えるために 「同じ仕組み」「同じ粒度」「同じ精度」をそろえること。費目体系や工程の粒度、配賦ルールや実績精度について、最低限そろえる共通のモノサシを本社が定めます。全社統一が難しければ、2層ERPも選択肢になります。
2つ目は、リスク・変化に強いシステム基盤にすること。電子インボイスや環境規制といった各国の制度変更に追従でき、IT管理者不在の拠点でもセキュリティを担保できる点で、クラウドERPの重要性が高まっています。
3つ目は、自社の強みを活かす業務を整理し、それを具現化できるシステム基盤にすること。幹・枝・葉で業務を切り分け、標準に寄せる領域と守る領域を先に決めます。
3つに共通するのは、製品を選ぶ前に本社が決めておくべきことがある、という点です。判断軸が定まってはじめて、どの製品が自社に合うのかを比べられます。前章で紹介したmcframeも、その選択肢の1つです。まずは判断軸を自社の言葉に落とし込むところから是非、始めてみてください。
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本記事で紹介した3つの判断軸を、具体例を交えて解説しています。動画の後半では、判断軸を満たすシステムの一例として、ものづくりクラウドERP「mcframe X」の特長も紹介しています。
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