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海外拠点管理のあるべき姿とは【連載第1回】日本本社と海外拠点の想い

海外拠点管理のあるべき姿とは【連載第1回】日本本社と海外拠点の想い 

皆様始めまして。太陽グラントソントンの今井です。昨今、製造業に限らず、あらゆる業界においてグローバル市場への展開はもはや避けられないものになってきており、海外拠点の情報は経営戦略において必要不可欠なものになっています。 本コラムでは、経営者の視点、海外拠点の従業員の視点から見た業務プロセスの在り方及び必要な業務システム構築方法について数回に渡り説明していきます。

経営計画と海外事業拡大

企業とは、営利を目的として、経済活動を継続して実施する組織のことをいいます。「企業は環境の中に生きている生き物である」とよく言われていますが、企業を取り巻く環境は一定でなく、常に変化しており、生き延びていくためにはその環境の変化に柔軟に対応していく必要があります。
ゴーイングコンサーン(継続事業体)というのも同じように、企業などが将来にわたって、企業を取り巻く環境の変化に対応し、無期限に事業を継続し、廃業や財産整理などをしないことを前提とする考え方です。
このような考え方を実践するために、企業は経営計画を立てていきます。計画の大きな枠組みとしては次の3つがあげられます。

図表1

特に一つ目の「自社を取り巻く市場環境の認識」を検討する上で、日本市場が人口減少、需要停滞、製造の空洞化などに直面する一方、海外市場では、特にアジア新興国の市場を中心にまだまだ拡大を続けているという市場環境を認識する必要があります。

図表2

「通商白書2011」の中でも「新しい段階に入った我が国企業の現地化」と題し、直接投資決定の要因が生産コスト要因から市場(需要)獲得要因へと大きく変化しているとの記載があります。これは、単純に「現地の安価な労働力」から「現地市場の開拓・獲得」が本格化してきたことを意味します。

企業の(中期)経営計画を見ても必ずと言っていいほど、「海外事業拡大」や「海外売上高比率を現状より○○%増に目標」等の文言が並び、海外拠点活動を重視する傾向にあります。

Panasonic(新中期計画「GreenTransformation2012(GT12)」より抜粋)

新興国を中心とした海外事業拡大
徹底的なグローバル志向へ転換し、2012年度の海外売上高比率をグループ全体で55%まで拡大(2009年度実績 48%)。
特に、新興国のボリュームゾーンを中心に3,300億円の販売拡大を図る。

日立グループ(2012中期経営計画における3つの経営主要施策より抜粋)

日立は2012年度の海外売上高比率を50%以上に拡大することをめざし、その施策の一つとして海外人員の比率を高めていきます。

Panasonic(新中期計画「GreenTransformation2012(GT12)」より抜粋)

海外市場へのグローバル事業展開
新興国を中心に拡大が見込まれる海外市場において、既存製品・技術による地域別参入戦略を策定するとともに、地域のニーズに即した製品開発を行い、市場開拓を進める。
また、昨今は大企業のみならず、中小企業が海外に進出するケースが多く見られます。世界情勢の波をうまく乗り越えながら自分達のあるべき目標に向かって企業は日々進化して行かなければ生き残れない時代になってきています。

ここにも先に述べた「経営計画」に盛り込む3つの枠組みに含まれる「自社が目指す姿」を意識して、企業活動を変化させていかなければならないという、企業の意志が感じられます。では、「海外事業拡大」を実行する上で、全体の事業活動を円滑に回す方法とはどのようなものなのでしょうか。
海外事業拡大を実行する上で、国内同様、経営資源である「人、モノ、カネ」の配分を海外拠点でも行い、事業の拡充を計っていきます。しかし、海外拠点においては、この経営資源を効率的に回す仕組みがあまり検討されていません。これでは、日本本社から投資された経営資源が活用されず、当初計画した業績反映時期を大きく逸脱することになり、ROI(投資収益率)や企業拡大のスピードが鈍化し、目標を見失ってしまいます。
また、海外拠点の現場でも「運用方法」が確立されていないがために、対顧客に対して、納期が頻繁に変更、遅延したり、間違った商品やサービスを提供してしまったり、誤った請求書を頻繁に発行するような運用となってしまいます。これでは、企業としての信用を失うことになります。

そこで「経営計画」と「運用方法」の齟齬をなくし、現場の「ムリ、ムダ、ミス」を軽減、してくれるツールが、情報システムということになります。
この「経営計画」と「運用方法」の間を補っていく情報システムは、特に海外では「臭いものにふた」のように現場任せとなり、日本本社からは放置されているケースが多々あります。

情報システム化に向けて

情報システム化を検討するにあたり、まず「方向性」を決めます。これは、経営計画の実現や現場からの業務上の要望あるいは現行のシステムの課題など、色々なシチュエーションからのスタートが考えられますが、同時に自分たちのあるべき姿をイメージしながら、システム化の方向性を見定めます。
次に定めた「方向性」に沿って具体的に、どのような体制、スケジュール、予算感を持って解決していくか「計画」を作成します。
この「計画」は、経営者と現場の要望を、情報システムという共通言語(仕組み)に落とし込むためのバイブルとなります。

さらに、経営と情報システムの齟齬を無くすために、この「方向性」と「計画」を経営者が承認します。経営者の承認は、後の行動に対しての決定事項であり、指示であるため非常に重要です。
情報システム化に関して、経営者の承認を得ることにより、情報システム化のプロジェクトが始まり、仮に途中で立ち止まることがあっても、「計画」に立ち返り、自分たちが進む「方向性」を再確認することが可能となります。

さて、まずは「方向性」についてですが、今回のケースでは、「方向性」として「海外事業拡大」に伴う本社や海外拠点の要望などをまとめるところからスタートします。

海外拠点から出てくる要望としては、自分たちが使うシステムなので、現地の商習慣・税制に対応していて、コンピューターに簡単にインプットでき、必要とされるレポートがアウトプットできる仕組みがベストということです。また、利用者の言語や少人数で拠点を運営している場合、導入期間の長さに関しても要望がでます。

一方、日本本社の要望するシステムは海外拠点の状況がある程度リアルタイムに把握でき、財務情報などの数値情報の根拠(詳細取引明細)なども必要に応じてタイムリーに把握できるシステムを要望しており、内部統制上のリスクがシステム的に低減できる(データの信憑性)等の要望が挙げられます。

海外拠点からは「やりたいこと」があげられてきますが、日本本社としては、情報のリアルタイム性、信頼性を担保できるようなモニタリングがメインとなる要望が出ています。経営計画の実現の視点で双方の本当に「やるべきこと」を絞り込んでいくことが重要です。

このコンセンサスが難しく、もっとも根気がいる作業になります。ただ、そこから逃げていると、企業経営全体を重要視した本社の計画と海外拠点の運用方法との間に溝が出来、なんの解決にもなりません。 経営者は自らが掲げた経営計画を実現するために、その想いを海外拠点に伝え、共有し、実行する必要があります。情報システム化にあたり経営者の承認が必要なのはこのような理由からになります。

次に「計画」では、先に挙げられた要望に対して、より具体的に実現可能な体制、スケジュール、予算を見積もっていきます。見積もる上で重要なツールとして、RFP【Request For Proposal】(提案依頼書)があります。簡単に言うと、「このようにしたい」という要望を事業要件、業務要件、システム要件、非機能要件として定義し、システムベンダーに提案を依頼するものになります。これは、情報システムの実現性を担保する設計書とも言えるでしょう。

海外拠点へのシステム導入に向けたRFPの具体的な作成方法は次回のコラムにてご紹介します。

第2回コラム『RFP(提依頼書)作成の勘所』に続く

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今井 武 氏
今井 武 氏
太陽グラントソントン・アドバイザーズ株式会社
マネジャー
上場一部SIベンダーを経て、現在に至る。
海外進出企業、外資系企業を中心に業務システム導入の企画・立案・実行支援を行う。 https://www.grantthornton.jp/