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コラム

仮想化技術編

第1回 『増えすぎたサーバに困っていませんか』

仮想化技術編

情報システムの効率化

この連載では情報システムを効率的に構築・運用するのに有効なサーバ統合、特にサーバ仮想化技術についてご紹介します。まずはサーバ統合が役に立つシーンを考えてみましょう。例えば海外拠点の情報システムについてです。

製造業においてはご承知の通り国内マーケットの伸びの限界が明らかになるに伴い各企業とも海外進出が従来にも増して重要になっています。製造、販売拠点が世界に広がると同時に、企業の基幹情報システムもより国際化対応が重要になってきました。

従来、海外拠点における情報システムは現地での構築、運用が当たり前でした。昔は、国際回線の使用料が高価でかつ通信速度が遅いために、地域地域で処理した結果をまとめて日本に送る、あるいは日本で準備した処理を各地域にまとめて送信して現地で具体的な処理を実行する、といった運用が必要だったのです。

情報システムそのものを現地で構築し運用するとなると、構築作業のために情報システム部門の担当者が現地に飛ばないといけないですし、システム運用が始まっても大きな問題が発生したときの対処のために主要な拠点には情報システムに関するスキルを持っている担当者を配置しておかなければならないという効率の悪さがありました。日本の情報システムの本部がサポートするにしても、全く情報システムに関する素養がない人には対応できないので、多少そういった知識がある人を置く必要があり、普段は製造や販売関連の仕事をしてもらうことになるのです。

このようなシステムでは、サーバハードウェアの設置、運用という観点でも、地域毎に現地対応の小さなサーバがワールドワイドに散らばっていくことになるので、ハードウェア、ソフトウェア、システム運用管理の手間が大変でした。(図1(a))

さて、現在はどうでしょう。インターネットの広がりのおかげで通信環境は大変良くなり、安く高速になりました。クラウドの利用が叫ばれるように、遠隔地のサーバをストレスなく利用できる時代になってきたのです。このような時代には現地には一般的なパソコンを利用した端末さえあれば良く、肝心のサーバは国内の情報システム部門の本部に置いておけばいいのです。パソコンなら現地に情報システム部門の人がいなくても、なんとかなりそうですね。(図1(b))

図1(a) 旧来:海外、国内遠隔拠点毎に大小の情報システムを設置

図1(a) 旧来:海外、国内遠隔拠点毎に大小の情報システムを設置

図1 (b)これから:システム部門の本拠地に情報システムを集約

図1 (b)これから:システム部門の本拠地に情報システムを集約

さて、小さなサーバ群を国内拠点に集約できることは分ったのですが、単純に海外にあったサーバを持ってこようとすると今度は国内のサーバルームがいっぱいになってしまいます。そこでサーバを統合、集約したいというニーズが生まれてくるわけです。

このような、海外のサーバの集約といったニーズの他にも、単純に増えすぎてしまったサーバを集約したいといった場合もあるでしょう。製造品目の増加や販売量の増加、取引形態の多種化に伴ってサーバ台数が無造作に増加し、サーバルームが手狭になってしまったためサーバ統合が必要になるといったケースです。

最近は基幹システムの守備範囲や運用範囲が広がる傾向にあります。ひとつのシステムで複数の関係会社を含む企業グループ全体や海外拠点を含む全ての業務をカバーするとか、場合によってはM&Aなどのビジネス環境の変化にも追随していく必要がでてきます。これに対してITシステム運用維持費は削減されていく傾向がありますから、これからは将来を見据えたインフラ環境を最初に準備しておく必要があるでしょう。

さらに、近頃「グリーンIT」という言葉を聞く機会が多くなっています。グリーンITとは、ひと言で言うと「環境に優しいITの活用」という考え方です。情報システムの投資効果というと生産性の向上やコスト削減効果が重視されていますが、それらに加えて環境への貢献度を含めるケースが増えてきました。皆さんの職場やサーバルームを見渡してみましょう。企業として業務効率化を追求した結果ですが、社内にはいろいろな業務システムが導入されて、業務処理の種類別、利用部門別、アプリケーションや業務システムを構築するベンダ別などにより多くのサーバが乱立しているのではありませんか?

これまでは、どうせハードウェアは安いのだから要るだけ購入すれば良いという考えの方が多かったと思いますが、これらのサーバやストレージは利用率が著しく低く、稼動効率の悪いものが多くあります。個々の機器の消費電力はとるにたらないレベルであっても業務的な価値の提供も無いまま機器を増やすのでは、ちりも積もれば山となり、決して環境に対して優しいとは言えないシステムになってしまうのです。

サーバ統合の考え方

業務個別に導入され乱立したサーバ群、どのように統合すれば良いでしょうか。まず第一歩は物理的に統合をするという考え方でしょう。

タワー型、デスクトップ型、ラックマウント型、いろいろなサーバが混じっているとスペース効率が悪く、ネットワークや電源の配線も乱雑になってしまいます。これを解決するのがブレード型のサーバです。1台のシャーシには多数のサーバブレードを搭載可能としていて、ネットワークや電源の配線はシャーシに対してだけしておけば良いので、サーバブレードを追加しても配線が増加しないで済むし、形状が統一されているのでスペース効率も良いというわけです。

さて、物理的にブレードに統合すれば、サーバを最大限有効に活用していることになるでしょうか。答えはNOです。

業務毎に立てたサーバですが、それぞれの業務はサーバの性能を目いっぱい使っているわけではなく、前にも述べたように著しく効率の悪いサーバも沢山運用されているのがどこの会社でも起きている実態です。サーバ1台の性能が大きすぎて、ひとつの業務システムでは使いきれないのがその理由です。そこで、サーバ仮想化技術の登場です。

サーバ仮想化とは1台の物理的なサーバをまるで複数台あるかのように見せかける技術です。つまり、個別のサーバでひとつずつ動作していた業務システムが1台の物理サーバ上でいくつも動くようになるのです。

図2 ブレードと仮想化によるサーバ統合の効果例

図2 ブレードと仮想化によるサーバ統合の効果例

このように、ブレードサーバを導入しその上でさらに仮想化機構を導入すると、サーバ統合を一気に進めることができます。例えば、ある例では、48台のサーバをたったの8ブレードに統合することができ、サーバ台数が6分の1になります。さらにそのときの電力消費量は60%も削減され「環境に易しいITの活用」を大いに推進することができるのです。

いかがでしょうか。サーバ統合による効率化と環境に優しいITの活用、ご理解いただけたでしょうか。次回は「サーバ仮想化っていったい何?」と題して、仮想化の原理と利用シーン、メリットについてお話します。

第2回コラム「サーバ仮想化っていったい何?」に続く

世界で戦う準備はあるか
上野 仁 氏
上野 仁 氏
株式会社日立製作所 エンタープライズサーバ事業部 第二サーバ本部第三部 担当部長 メインフレームOSやファームウェア、システム管理ソフトウェアなどの研究開発の他、データセンタでのSaaS商品開発などを経験。データセンター運用での使い勝手向上を念頭に置いた日立独自の仮想化技術開発を行っている。新しいサーバ活用技術に興味を持ち研究を続けており、余暇ではゴルフを通じて仲間作りを進めている。技術士(情報工学部門)