第4回 日本的loTの実現に向けて ~知っておきたいloTビジネスモデル構築ノウハウ~(後編)
※本記事は「IGPIものづくり戦略レポート」2016秋号からの転載です。
IoT事業化の要所
次にIoTアーキテクチャを事業化するための要所とは何か、それは製品とサービスの一体的な提供(既にサービス提供していれば、更なるサービスの高度化)です。(図2参照)
例えば、建物における設備や空調・照明等機器の統合管理による省エネ対応です。この場合、機器の設置環境等(例:設備機器と建物壁面との隙間や日光の当たり具合)の情報をサービス担当者が正確に記録を残すことが、分析のためのデータ精度向上に大きく繋がります。こういった現場でのオペレーション精度の高さは、日本企業の強みでもあります。また、データ分析者とサービス担当者が一体となった高度な対応(例えば、データ分析者が空調機器の汚れデータを分析・予測し、サービス担当者が、定期保守にて対応する)は、容易に構築出来ないデジタル・アナログデータ解析と業務プロセスの組み合わせという組織固有のケイパビリティとなります。つまり、デジタル・アナログデータ解析により技術的にも他社が真似しにくく、更に業務プロセスを加えることで自社ならではの固有要素が入り、優位性を築けます。
図2:組織固有能力(業務プロセス連携)が差別化を生む
IoTによる収益モデル構築
IoT事業化の際、どのように収益を確保するかという問題があります。勿論、機器・サービス料の値上げが出来れば良いですが、実際はそう簡単に行きません。その場合、収益確保は、設備売価を変えず、トータルコスト低減による利益確保を検討します。例えば、故障予知であれば、故障発生数低減により、待機サービス担当者の削減によるコスト削減が期待出来ます。このIoTコスト削減効果がIoT対応コスト(センサ取付コスト等)より大きくなるように両者のコストを計画します。そのためには、どこにコストが多くかかっているか検証することが大切です。
これにより、顧客に対して価格据え置きでサービスレベル向上を提案出来ます。これを顧客ロイヤルティの向上につなげ、顧客における自社設備の導人数増加を図り、顧客当たりのライフ・タイム・バリュー(LTV)の増大に繋げます。
デジタルとアナログ、製品とサービスの融合がカギ
IoTはデジタル技術の進化がもたらした大きな潮流であり、AI等の省人化の議論が賑わっています。一方で、デジタル家電がそうだったように多くのデジタル技術は真似しやすく、差別化に限界があります。今後、IoTでビジネスモデルを検討する際は、デジタル技術とそれを加えた製品だけでなく、アナログデータや人のサービスによるアナログ技術も含めるべきです。これにより、競合他社が技術的に真似しにくく、時間的に簡単に追いつきにくく、自社ならではの固有要素により優位性を築くことが出来ます。
※本記事は「IGPIものづくり戦略レポート」2016秋号からの転載です。
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