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コラム

PSI編

第3回『SCMの要、需給調整業務の効率化と高度化によるPSI最適化(その3)』

PSI編

2回にわたり、需給調整業務の課題と現状、そして、需給調整業務向けアプリケーション「SynCAS Visual Center(仮称)」(以下、SynCAS VCと略して記述する)の主要機能を紹介してきた。最終回となる今回は、PSI特性の変化を捉え多量のSKUでも需給バランスの変化をすばやく捉えるSynCAS VC の最新機能Locatorについて紹介して行く。

PSIの最適化に向けた先手管理とは

「大量のSKUに対しても個々の商品特性を考慮し、変化するデマンドに合わせて最適な在庫量に調整する」ことができれば理想だがハードルは高い。これを容易にする取り組みのひとつを次に紹介する。
アラートにより問題の発生を警告する前述(注:本コラム(その2)で紹介)の方法は対処療法として有効だが、早い段階で問題の予兆を捉えて手を打つ事ができれば、計画変更の手間が軽減できるだけでなく、ダメージを軽減・回避できる可能性が高まる。

図8 累積の販売量と在庫量との関係

図8 累積の販売量と在庫量との関係

 

図8は特定の時点での累積販売量と在庫量との関係を散布図に表したものである。一つ一つの点がSKUを表している。この特長は、在庫推移をサムネイルで表示する在庫評価方法の場合((その2)で紹介)では、大量のSKUを評価する際に複数の画面を確認する必要がある。しかし、この散布図を使うと仮に数千を超えるSKUであっても一画面で確認することができる。この例では横軸が一定期間の販売量、縦軸が最新の在庫量を表す。従って図中の左上には販売量が少なく在庫が多い品目、つまり在庫回転が悪いものがプロットされ、逆に在庫回転の良いものは右下にプロットされる。さらに、時系列でプロットの位置の変化を評価する事で、需給バランスの良化、悪化の傾向が読み取れる。
さらに、図9は1ヵ月前と比べて左上に位置が変化した品目に矢印を付けたものである。これにより、前月実績と比較して販売減と在庫増のために「左上」に移動したSKUを確認する事ができる。この様に、在庫と販売の傾向を多面的に評価することで悪化傾向を示し始めた商品を迅速に捉え、原因確認と対策に繋げることができる。

図9 在庫量の変化
図9 在庫量の変化

 

もちろん、在庫過剰だけでなく、多くの現場で一番問題となる欠品や欠品になる前の傾向を捉える事も同様の方法で可能となる。そして、過剰在庫や欠品と判断されたSKUに対しては早急な対応策が求められる。SynCAS VCは、在庫の評価に際しては、過去実績の評価に加えて、将来の傾向を把握し評価する事が可能である。図10は、過去から将来に渡る複数のSKUのPSIの推移をサムネイル形式で表示したものである。

図10 カテゴリ別在庫サムネイル一覧

図10 カテゴリ別在庫サムネイル一覧

 

PSI実績に加えて、将来の販売見通し、生産または調達予定の情報を加えることで将来の在庫推移情報も合わせて可視化することができる。この時に理想的な生産・調達の手配計画が自動化できればさらに業務効率が向上するのではないか。
SynCAS VCは、手配方式や発注点・補充点情報、リードタイム(LT)、サービス率、安全在庫等の属性情報や業務ルール(MOQ:最小注文数量やLOTまるめなど)、および需要予測による販売見通しを加味して計算する、PSIシミュレーション機能も計画している(図11)

図11 PSI将来シミュレーションの例

図11 PSI将来シミュレーションの例

 

このように、設定した基準値や業務ルールを反映して将来をシミュレーションし評価するプロセスの運用は、二つの点で意味が大きい。一つ目は、顕在化した問題への事後対応から先手管理へとプロセスが進化することである。数多くのSKUを取り扱うと全ての品目の発注方式や発注量、さらには在庫基準を常に見直すのは人間系では限界がある。改善案をシステムが算出し支援することで、見直しが容易にできるという効果が期待できる。
二つ目は、担当者の知識・スキル・意欲の向上である。自分が設定した在庫基準値の将来のインパクトが具体的に提示されるため、設定値に対する担当者の知識と責任感が大きく増す。最終的な要は人であり、その育成・強化は最も重要なテーマであると考えている。

おわりに

変化する市場ニーズに適切に応え企業価値を高めていくため、製造や流通に関わる企業は少量多品種化、販売・調達のグローバル化、開発サイクルの短縮などの様々な取り組みを重ねてきた。一方、その取り組みはSCMを一層難しいものにしている。
効率的なサプライチェーンマネジメントは、需要に同期した供給の実現に他ならない。しかし、需要と供給を繋ぐサプライチェーン上の情報伝達や在庫量等の判断プロセスの連携は、まだ初期段階と言わざるを得ないと感じている。
今回紹介した仕組みは、デマンドの把握とサプライの判断を効果的に繋ぐことを狙っている。実行系の仕組みは改善してきている。私たちの願いは、関係する部署や企業が、共通目標と互いの制約を理解し、適切な判断ができるような神経系の仕組みの充実である。
SynCAS VCは複数の企業で試行中であり、着実に効果を出し始めている。需給調整の現場からのフィードバックを製品・サービスの改善に反映し、PSI情報可視化と調整業務機能を磨いてきた結果、今回ご紹介した機能の実現に至った。お客様と共に多くの特許化も推進中である。 今後も日本らしいきめ細かなサプライチェーン運用支援の仕組みをお客様と共に開発・提案し、SCMの高度化に貢献していきたい。

 

■お問合せ先
株式会社 日立ソリューションズ東日本
営業本部 内海 由博 <Yoshihiro Uchimi>
(044)210-1906 (ダイヤルイン)
E-Mail:yoshihiro.uchimi.zd@hitachi-solutions.com

東洋ビジネスエンジニアリングのものづくりデジタライゼーション
内海 由博 氏
内海 由博 氏
株式会社日立ソリューションズ東日本
第二ソリューション事業統括本部 担当本部長
1986年 株式会社日立東北ソフトウェア(現:株式会社日立ソリューションズ東日本)入社後、大型汎用コンピュータのシステムエンジニアとして製造業のお客様を担当し生産管理を中心に業務システム開発からシステム運用管理に15年従事。 その後、営業部門を経て現在は、商品企画、アライアンス、広報宣伝部門を担当し自社製品のSCM関連ソリューションの宣伝普及を展開中。 http://www.hitachi-solutions-east.co.jp/