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コラム

イベントレポート編

産官学の連携により IoT時代を生き抜く日本の製造業を強力に支援【B-EN-G IoT Forum 2017 / mcframe Day 2017 OPENING TALK LIVEレポート】

OpningTalkLive

2016年、世界には2つの大きな動きがありました。まず6月に欧州で英国のEU離脱(ブレグジット)があり、12月には米国で新しい大統領が誕生しました。こうした世界規模の大きな変動の中で、日本の製造業は自らの力で生き残っていかなければなりません。そのための武器となるのが、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などのIT活用です。

産官学が“阿吽の呼吸”で連携しIoT時代のものづくりを支援

ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)は2月16日、「日本の製造業に、ものづくりのためのITを」をテーマに、日本の製造業向け年次カンファレンス「B-EN-G IoT Forum 2017 / mcframe Day 2017」を開催しました。10回目を迎える今回は延べ1500名以上が来場。オープニングを飾ったビデオでは、画家・絵師である“尾頭(OZ:山口佳祐氏)”が登場し、長野県上田市の雄大な景色を背景に、勇壮な和太鼓の音に合わせてイベント公式サイトのタイトルイメージである「阿吽」の画を見事に書き上げました。

ビデオ終了後、ブルースハープで即興のメロディーを奏でながらステージに現れるというサプライズ演出で、B-EN-G 代表取締役社長である大澤正典が登壇、イベント開幕の挨拶を次のように語りました。

「生産年齢人口が減少するなか、日本政府は2020年までにGDPを500兆円から600兆円に拡大すると発表しています。そのためには戦略が必要であり、第4次産業革命が重要になります。第4次産業革命に必要なテクノロジーは、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータ、および本日のテーマでもあるIoTです。B-EN-GはERPを中核に製造業の基幹システムを構築するとともに、IoTにも積極的に取り組んでいます。このイベントが皆様の今後のビジネスのお役に立ち、日本の活性化に寄与できることを願っています」

AIIoTなどの新たな技術は日本の製造業の活力となるか

OPENING TALK LIVE」では「何が我が国製造業の活力となり得るか?」をテーマに、経済産業省 クリエイティブ産業課長の西垣淳子氏、デンソーアイティーラボラトリ 代表取締役社長の平林裕司氏、慶応義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の白坂成功氏、およびイベントホストであるB-EN-G 常務取締役 CMOCTOの羽田雅一の4名をパネラーとするパネルディスカッションが開催されました。モデレーターはウフル 上級執行役員 IoTイノベーションセンター所長である八子知礼氏が務めました。

まずモデレーターの八子氏から、「AIIoTなどの新たな技術が取り巻く日本の製造業をどのように見ているのでしょうか」という質問が投げかけられました。これに対して平林氏は「AIIoTなどの技術は、考え方としては以前からあったものです。たとえばIoT1999年にゼロックスのパロアルト研究所が“ユビキタスコンピューティング”として定義したものです」と話します。

ユビキタスコンピューティングはすべてのデバイスがネットワークで有機的につながり、協調して人間を助ける仕組みを提唱しています。当時、RFIDが注目されましたが、複数の仕様があったために大きな普及には至りませんでした。この仕組みをインターネット技術で標準化したのがIoTです。IoTはスマートフォンとクラウドの登場により、爆発的に普及し始めており、日本の製造業でも注目度が高くなっています。

これらの新しい技術は製造の現場で受け入れられるのでしょうか。羽田は「日本の製造業は早くからFA化に取り組んできたので、それほど慌てることはないと思います。クラウドやセンサーなどが安価になったことで、これまで技術的な問題やコスト的な問題でできなかったことが比較的容易に実現できるようになりました。新しい技術と既存の技術の連携で、新たなビジネスが期待できます」と話します。

また、官公庁の取り組みについて西垣氏は「インダストリー4.0の研究でドイツに行ったとき、“日本はIMSIntelligent Manufacturing Systems)に取り組んできたのに、なぜインダストリー4.0が必要なのか?”と聞かれました。当時はIoTと同様、技術的あるいはコスト的に実現が難しかったのですが、この課題を解決し、IoTとして実現できる環境が整ったときに日本人がIMSを忘れていたのは皮肉なことです」と笑みを浮かべます。

現在は欧米のみならず、アジア各国でもIoT時代の製造業がどのように変革するかが議論されていますが、ドイツのインダストリー4.0をベースとした産官学の取り組みが各国で推進されています。IoT時代の製造業では、いかに他国や他社とつながっていくかが重要であり、スピード化や柔軟性、拡張性なども考慮しておかなければなりません。

さらに産官学連携について、白坂氏は「ドイツでは当たり前のように産学連携が行われているが、企業との共同研究で、きちんと企業から研究費をいただいて継続して研究できている例は少ない。“学”の立場として、“産”が結果に満足して、継続して共同研究をしてくれるようにならないといけない。日本人が苦手と言われる抽象化・モデル化も教育を受けていないだけで、学べば日本人もできる」と話しています。

IoT時代のものづくりによりかつてない隆盛を取り戻す

日本の製造業におけるIoT活用において、欧米のコンセプトはそのまま活用できるのでしょうか。白坂氏は「日本はデータの抽象化やモデル化が苦手だと言われますが、実際に教えると対応できます。苦手なのではなく、教えていないだけなのです。米国では1990年代から教えていますが、対象を俯瞰的に捉えるシステム人材育成におけるドイツの取り組みはここ3年です。たった3年の差なので、日本も教育を始めることで十分にカバーできるはずです」と語ります。

また西垣氏は、「日本の工場を見学すると、すべてをつなぎ、改善し、ダウンタイムをゼロにする取り組みを推進しています。しかし、それを自社の範囲だけで取り組んでいる工場が多いのが実態で、これを“1人インダストリー4.0”と呼んでいます。日本の工場はすべてを自社で連携できるのが強みですが、外部を使った効率化やコスト削減などにはあまり取り組んできませんでした。インダストリー4.01人インダストリー4.0の違いを改めて考えてみる時期ではないかと思います」と話します。

それでは、日本ならではの強みを生かしながら、世界市場でどのように戦っていけばよいのでしょうか。白坂氏は「設計から生産までのライフサイクル全体をモデル化する手法である“モデルベース開発”が注目されています。ドイツではモデルベース開発の先進国である米国から講師を招き、モデルベースシステムズエンジニアリングを活用した開発ができる人材の育成に取り組んでいます。日本でもこうした取り組みが必要な時期に来ています」と話します。

また現在では、「デザイン思考」も世の中の注目を集めています。デザイン思考はスタンフォード大学が提唱した新しい価値を生み出すためのアプローチですが、ベースとなっているのは日本の“ものづくり”です。白坂氏は「本来、日本の製造業が持っている“みんなで考える”強みをもう一度思い出すことで、グローバルでも優位に戦うことができるのです」と話します。

一方、製造現場における取り組みについて平林氏は「すべてを自前でやろうという考え方は確かにあります。しかし、すべてを自前にするとスピード感が損なわれます。スピード感が必要な部分に関しては外部に委託し、競争力の部分は自前で作るというバランスが重要です」と話します。

羽田は「日本の製造業は、何が強く、何が平均点で、どこが弱いかということを把握し、自分たちの価値を再認識することがグローバルで戦うために必要です。また設計段階で製造を意識することで、設計とものづくりのギャップをなくし、設計から生産の効率化を実現する“フロントローディング”という手法も有効です。自社の強みを理解し、さらにIoTなどの新しい技術で強化する取り組みが必要です」と話します。

最後に八子氏は「日本の製造業はモバイルやクラウド、IoTなど、デジタル化の強みを加えることで、グローバルでも競争力を発揮できます。生産現場の最適化という狭い範囲ではなく、設計からモデリング、製造、流通までのバリューチェーン全体に及ぶ広い視点で考えることで、日本のものづくりはグローバル競争においても、かつてないほどの隆盛を取り戻すことができると信じています」と話し、パネルディスカッションを締めくくりました。


大澤正典ビジネスエンジニアリング
代表取締役社長 大澤正典

「日本のGDPを500兆円から600兆円に拡大するためには、戦略的に第4次産業革命に取り組むことが重要です。B-EN-GはERPを中核に製造業の基幹システムを構築するとともに、IoTにも積極的に取り組んでいきます」



白坂成功氏慶応義塾大学大学院
システムデザイン・マネジメント研究科 白坂成功氏

「日本がものづくりの分野で負けるのはもったいないことです。そこで全体を俯瞰したり、抽象度を上げたりという訓練や、さらにモデルベースシステムズエンジニアリングやデザイン思考などの知識によって、より一層の効果が期待できます」

西垣淳子氏経済産業省
クリエイティブ産業課長 西垣淳子氏

「自社の強みを生かすために、どのようなビジネスモデルに取り組むかが重要です。日本の製造業は製造現場におけるQCD(品質、コスト、納期)に注力しがちですが、バリューチェーンを通じたIoTやデジタル化に取り組むことでより強くなれます」

平林裕司氏

デンソーアイティーラボラトリ
代表取締役社長 平林裕司氏

「日本の強みは生産現場にあり、現場の要望を生かしたIoTでなければ、日本にはなじまないでしょう。また設計から製造までをつなぐために、何をすべきかが重要で、そのときにスピード感が必要となります」

 

羽田雅一

ビジネスエンジニアリング
常務取締役 CMO/CTO 羽田雅一

「製造業のIoT化にはハードウェアとソフトウェアの観点があります。日本の製造業はハードウェアが強みで、ソフトウェアが弱点と言われますが、汎用的なIoTソフトウェアを生かすことで武器にできます」

 

八子知礼氏ウフル
専務執行役員 IoTイノベーションセンター所長 八子知礼氏

「日本の製造業はIoTなどのデジタル化の強みを加えることで、グローバルでも競争力を発揮できます。バリューチェーン全体の視点で考えることで、かつてないほどの隆盛を取り戻せると信じています」

 

B-EN-G 製造業向けIoTソリューション
ビジネスエンジニアリング株式会社
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