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コラム

3分で紐解く!設計と製造を繋ぐプロセスの作り方

第7回:「PLM損益」を把握して、どんぶり勘定から脱却する

必ず知っておきたい「PLM損益」

製造業では「製品ライフサイクル損益(PLM損益)」の考え方が極めて重要です。「損益の把握」と聞くと、財務会計を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、PLM損益管理は財務会計と大きく異なります。

根本的な違いとしては、財務会計は制度会計の1つであり対外的に行うものである一方、PLM損益は、いわゆる管理会計として自社の経営戦略のために行うものです。これに取り組むか否かは自社ビジネスの強さ、つまり企業競争力に大きな影響を与えます。

両者の違いとして、もう1つ言及すべき点は「期間」の捉え方です。財務会計は年度(単年)という一定の期間に閉じて数値の集計を行いますが、PLM損益は会計年度をまたぎ、製品が出荷されてから廃棄されるまでの全期間で算出がなされます。製品に対する投資およびその回収は単年度で完結することはまれであるため、年度をまたいだ評価が必要です。

「コト売り」のビジネスで重要になるPLM損益

では、なぜこのPLM損益に目を向けることが重要になるのでしょうか。その理由の1つに、製造業のビジネスモデルの変化が挙げられます。

昨今では多くの製造業が従来の「モノ売り」だけでなく「コト売り」のビジネスを取り入れていこうとしています。製品を販売するイニシャルの利益ではなく、製品販売後の保守サービスを契約し、サブスクリプションで定期的かつ継続的な利益を得ようという考え方です。

見方を変えれば、こうしたビジネスモデルでは投資の回収はよりロングテール化することになります。そのため、製品によっては、会計年度単位での集計では製品やサービスの正確な損益は把握できなくなります。

製造業において個別受注生産の場合、一度顧客に納品したら10年どころか20年以上使用される製品は珍しくありません。こうしたビジネスの中で先述したコト売りのビジネスモデルが取り入れられたとき、当然ながら投資の回収はロングテール化します。製品がライフサイクルを通して利益を生み出せているかどうか、あるいは損をしていないかを正確に評価するためには、このPLM損益の算出が必要なのです。

販売力をさらに強化するために

PLMは、ある製品の設計、製造、出荷、保守、廃棄といった、製品の誕生から役目を果たし終わるまでの全過程を管理するシステムとして、図面や3Dモデルなどの設計情報や部品表(BOM:Bill Of Material)を統合管理します。財務会計にはしばしばERP(Enterprise Resource Planning)システムが用いられますが、PLMはこのERPと連携することで必要なデータをタイムリーかつセキュアに収集でき、製品戦略に欠かせない仕組みです。もちろんPLM損益の把握には、PLMのようなシステムが欠かせません。

PLM損益を把握することで、例えば製品の投資回収の実態も把握しやすくなります。まだ投資が回収されていない案件であれば、回収見込み時期を統計的予測によってシミュレーションすることも可能になります。こうしたPLM損益のもたらす大きな効果として、プロダクトポートフォリオマネジメント(PPM)を推進しやすくなるという点が挙げられます。

製品ごとのPLM損益を見える化することによって、市場の中で自社のどの製品が利益を生み出しているか、例えばロングテールでの「花形製品」と「負け犬製品」が明らかになります。

どの製品バリエーションを強化すべきか否か、あるいは新サービスが成功しているかどうかの判断を、「どんぶり勘定」ではなく利益実績に基づく合理的な判断に変えられることは、さらなる利益獲得(販売力強化)に直結するはずです。

個別受注生産における収益性の改善や、提案型営業や新ビジネスを成功に導くために、PLM損益の把握は不可欠といえます。もっとも、今後のビジネスでは把握するべきデータはこれだけにとどまりません。財務データはもちろん、CO2排出、案件見込み、顧客の声(VOC)など「非財務データ」を正しく集計、分析して可視化することが、成長を続ける強い企業を作り上げる1つのカギとなるでしょう。

「第8回:見積もり業務を効率化する方法はあるか」に続く

https://info.mcframe.com/078
若林 賢
若林 賢
ビジネスエンジニアリング株式会社 デジタルソリューション推進部 副部長
2019年にB-EN-G入社。製造業一筋30年。20代はCADエンジニアとして活動、その後、部品表やBOMに関する知識を活かし設計・生産管理システムの導入コンサルを経験。現在は、mcframe PLMのお客様提案、セミナー講師などプロモーションを中心に精力的に活動中。経営と現場・設計と製造など、簡単には交わらない関係を繋ぐことに喜びとやりがいを感じている。