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コラム

安全教育における効果測定の方法

【第2回】効果測定の具体的方法 カークパトリックの4レベル

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※参考:【ebook版ダウンロード】安全教育における効果測定の方法

前回記事はこちら

さあ、これで経営者、あるいは安全教育担当者に効果測定の大切さが理解されたと思いますので、実際にどう進めていけばいいのかを解説しましょう。

教育効果の測定には色々な方法がありますが、今回はもっとも有名なカークパトリックの4レベルを使って説明していきます。図にあるとおり4つのレベルは下から、反応、学習、行動、成果、となっていて、上に行くほど測定が難しいといわれています。

レベル1は受講者の反応です。うわの空で聞いているとか、ひどい場合には寝ている、など見た目でわかる反応です。次の学習、ラーニングというレベルはテストなど点数で測定可能です。次はその人の行動を見ます。その行動がどのように習慣づけられているかを見てレベルを把握します。最後に習慣づいた行動が結果にどうつながっているのかを見るレベルが成果です。ではひとつひとつのレベルを少し詳しく見ていきましょう。

anzen-hyouka2-img1カークパトリックの4 レベル

反応レベルをどう測定し、そこから何が得られるか?

反応レベルの測定方法としては、これまで行われてきたリアルな集合教育では受講者の顔や態度があげられます。講師が感じたものが反応のひとつですね。これをある程度形にしようとしたのがアンケートですが、アンケートには設問によって、果たしてその教育が有効だったかどうかまでをちゃんと測定できるか、という問題があることには注意が必要です。

その点、最近増えてきたオンラインでの講習であれば、この問題点を解決できると私は考えています。なぜなら、オンラインは50人いてもそれぞれの顔を個別で見ることができます。サブ画面を置いてランダムに画面を大きくしたりすると表情も分るし、場合によってはため息やアクビもわかるからです。

ほかにオンラインの強いところは、今話している内容に反応してもらう、「いいね」や「グッド」などのボタンが設置できることです。10秒15秒ごとくらいに押してもらって点数を付させます。これをあとで集計すると、この単元のココの反応が良かったね、と振り返ることができます。

また、別の講義で同じところに「いいね」があれば自分は同じ話し方ができてるな、散らばっていれば話し方がばらばらなんだな、と講師は気づきが得られます。講師に限らず、Eラーニングでも、動画を流すにしても、資料にしてもそれぞれを細かく点数化すればいいのではないでしょうか。

アンケートも一元的な5段階評価などでなく、縦にも展開して3×5の15通りくらいの回答を得ることができればクロスして統計が取れるので評価の精度をあげることができます。

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学習レベルをどう測定し、そこから何が得られるか?

学習レベルではテストやレポートで効果測定を行います。しかし、ここで注意しなければならないのは、学校教育と安全教育では測定結果の見方が異なるという点です。学校のテストでは100点満点取れば最高ですが、社会人の教育である安全教育ではそれでは不十分なのです。

たとえば、階段の角度は「45度」が正解(最低限の安全)ですが、でも実際の現場を知っている人は「40度」だと答えるかもしれない。もちろんこれは、45度でも40度でも正解なわけです。むしろ、傾斜をゆるくして、より慎重に安全対策を行うということですから、40度と答えた方が点数が高いというのが、安全教育なのです。

しかし、「45度」を正解とする学校教育にとっては、「40度」は不正解となってしまいます。一方安全教育では、より踏み込んだ回答である「40度」の人には、100点を超える正解となり、110点をあげるということになります。経営者や安全教育の講師は、この点をちゃんと見抜けなければいけません。そして経営者は120点、130点取る人に投資することが重要です。

そこを理解せず、投資しないで「あなたは100点満点超えているのだから、その以上無駄に投資しなくていいでしょ?」とそれ以上の120点、130点と評価もせず、投資もしない。そうすると会社には必ず80点、70点の人がいますから、上限を100点と決めてしまうと全員の平均では100点に届かなくなってしまいます。

安全というのはその集団全体で100点を取れて初めて最低限度の安全を確保されるものですので、100点を下回るということは、不安全な状況が生まれ、不安全な行動をする人が必ず出てくるということです。このように、社会人における学習レベルの測定では、100点満点を超える評価も必要であり、平均で100点満点をとることも必要だということになります。これを経営者も理解することが大切です。

※参考:【ebook版ダウンロード】安全教育における効果測定の方法

行動レベルをどう測定し、そこから何が得られるか?

次に行動レベルになりますが、ここからの効果測定は少し難しくなります。それは、安全や技術に対して“見る目がある人”が測定しないと解らないからです。これは現地しか知らない作業者や、逆に現地を知らない講師が見るというよりも、第三者である株主やユーザー、現場に精通している安全管理者や安全コンサルタントなどの専門家が測定することになります。

一般的にカークパトリックの4段階評価では「インタビュー」や「他者評価」となっていますが、安全教育の効果測定でいうと「他者評価」が重要になってくるのです。そして、見る目がある人の基準が重要です。例えば安全パトロールの際、安全管理者が自分の知識と経験で点数をつけていきます。手すりを持って階段を上がっているか、その時扉の向こうに人がいることを想定して1歩下がることができるか、という非常に基本的なことかもしれませんが、やる人はやっていることです。さらに滑り止めの靴を履くだけではなく、そのすべり止めは効くか、靴ひもは結べているか、とどんどん細かくなっていきますが、建設現場や工場などのパトローラーや安全コンサルタントなどは実際にそこまでやっています。そういう行動をちゃんとやってるな、と気づける人間でないと、点数をつけることができないのです。

成果レベルをどう測定し、そこから何が得られるか?

成果レベルを安全教育に限っていうと「ケガをしたか、しないか」が成果の測定ということになります。そしてここには偶然や他の人との連携という要素も含まれてきます。

野球だったらアウトを取る、サッカーなら点数を入れる、吹奏楽ならいいハーモニーを奏でる、これらは団体としての成果でもありますが、実は個人も輝いていますね。アスリートなら心技体が一致していれば、やろうとしていること、やっていること、評価されること、の全てがマッチしている、美しい演技、美しい競技ができている。これが成果ということになります。

一方でどんなに心技体が一致していても、ボールがイレギュラーしてしまったりなどといった偶然的な何かがあって、すべてが成果に結びつくわけでもない、というところが4番目の成果レベルの難しいところです。

安全に例えると、ルールも解っていて、経験もしていて、機械の癖までも熟知しているのに、たまたまケガをしてしまった。偶発的なケガであっても結果として安全成績は下がるし、会社の評判も落とすことになってしまう。

しかしながら、少なくともレベル3の「行動」までをちゃんとできていなければ、レベル4の「成果」を得ることはできません。学習して100点取れるようになったチームが、行動の面でも100点を取り続ける、その成果が100点となるためには、当然ながら教育と測定を継続しないといけないということです。

安全は一つの災害ですべてがゼロになってしまいます。成果は、それを防ぐための努力を評価したものともいえます。連続無災害記録を続けているか、それが何人の体制であったか、何業種であったか、1業種だけでなく多業種の場合何業種で達成したか、世代交代のようなイベントがあっても継続しているかなどが成果の測り方です。

そして安全の成果は業績に直結することを経営者が理解すれば安全教育への投資や環境の整備に、より力を入れていくのではないでしょうか。そして今後は、経営者としては安全教育を受けて効果測定で点数が高い人についての評価を高くして、人事考課に直結するような影響をあたえるようになっていくと考えられます。

【第3回】安全教育にVR教材を活用すれば効果測定はより効率的になる に続く

野間 義広
野間 義広
CSP労働安全コンサルタント(化−第591号) 製造業や建設業における危険有害作業経験と安全衛生管理経験を併せ持ち、リアルな歯に衣着せぬコンサルティングで国内外の多方面から信頼を得ている安全衛生専門家。ファインケミカル、バイオテック、救急救命を得意とし、安全診断、安全衛生教育講師、化学物質管理支援、労働安全衛生マネジメントシステム構築、VR教育など多岐にわたり活動中。 登録:作業環境管理専門家。産業保健法務主任者。ISO45001審査員補。第一種衛生管理者。