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需要予測編

第1回 『当たらない需要予測は意味がない? 』

需要予測編

皆さんはじめまして。キヤノンITソリューションズの淺田です。業務に役立つコラム「需要予測編」を担当させていただくことになりました。よろしくお願いいたします。
在庫削減は企業における非常に重要な課題のひとつです。少ない在庫でも欠品を起こさないようにするには、どうすればよいでしょうか?答えは簡単です。将来の需要を正確に予測して、必要なときに必要なだけ生産すればよいのです。しかし、一昨年後半からの世界同時不況による需要の激減を予測できた人がどれだけいたでしょうか?来月発売される新製品の需要を完璧に予測することは可能でしょうか?残念ながら「需要予測とは当たらないもの」と言わざるを得ません。
本コラムでは、とても重要だけれどとても難しい「需要予測」について考えていきたいと思います。

需要予測に対する誤解

これまで沢山の企業の方と需要予測システムについてお話させていただく機会がありましたが、需要予測システムに対する考え方はだいたい次の2パターンに分類することができます。

  • 考え方1
    需要予測システムを導入すれば予測精度が向上し、在庫削減・欠品削減など非常に大きな効果が得られる。
  • 考え方2
    需要予測なんて当たるわけがない。だから、需要予測システムなんて導入しても無駄だ。

一見すると全く正反対の考え方のように思います。しかし、よくよく考えてみると根本的な考え方は同じだということに気づきます。「需要予測は当たってこそ意味がある」という考え方です。違うのは、当たると思っているか、当たらないと思っているかだけです。当たらない需要予測はする意味がないのでしょうか?私はそんなことはないと思っています。

なくなる外れとなくせない外れ

需要予測の外れ(誤差)は2つに分類することができます。1つは努力次第で「なくせる外れ」、もう1つはいくら努力してもどうしても「なくせない外れ」です。考え方①は「なくせない外れ」などないという考え方、考え方②は「なくせない外れ」が大きすぎるなら予測する意味がないという考え方ということになります。

なくなる外れとなくせない外れ

「なくせない外れ」があったとしても、それがどの程度の大きさか(外れ度合い)を見積もることができれば、外れても問題が発生しないように(最小限に抑えるように)事前に手を打っておくことができます。これが、たとえ当たらなくても需要予測が必要な理由の1つめです。
販売予算を立案し、販売実績と比較評価し、未達の場合はその原因を究明し対策を打つ。どこの企業でも当たり前に行われていることです。販売予算通りに売れないからといって販売予算を立てないということはありません。需要予測も同様です。予測を立て、実績と比較評価し、予測が外れた場合はその原因を究明し対策を打つことによって、より精度の高い需要予測が得られるようになります。これが、たとえ当たらなくても需要予測が必要な理由の2つめです。

A社はなぜ失敗したのか?

需要予測の必要性はご理解いただけたと思います。実際、製造業をはじめとして多くの企業で需要予測システムの導入が進んでいます。しかし、全ての需要予測システム導入が成功しているわけではありません。期待したような効果が得られず、活用されなくなってしまったシステムも少なからずあります。ある食品メーカーA社の事例を見てみましょう。
A社は、全社的プロジェクトとしてSCMシステムの導入を計画していました。新システムの売りは、B社の最新パッケージソフトを活用した需要予測システムでした。高精度予測エンジンが搭載されており、欠品の撲滅と在庫の30%削減が期待されていました。
万全の体制で本番稼動を迎えましたが、1週間後ある製品の急激な需要の伸びを予測し切れずに、欠品を起こしてしまいました。お客様からはクレームの嵐です。プロジェクト開始当初から需要予測システム導入に反対していた営業部長が言いました。
「だから言ったんだ、当たるはずがないって。もうシステムは使わないよ。昔のやり方の方がよっぽどましだ。」
結局A社のSCMシステム導入は失敗に終わりました。
何がいけなかったのでしょうか?B社のパッケージの性能に問題があったのでしょうか?
そうではありません。最大の失敗原因は、システムを導入すれば予測が当たるようになる(なくせない外れはない)と思い込んでいたこと、そのため予測が外れたときの対応をきちんと考えていなかったことです。

A社のような失敗を防ぐには「需給マネジメントシステム」の構築が不可欠です。次回は、「需給マネジメントシステム」とは何か、についてお話したいと思います。

第2回コラム「需要予測システム導入を成功に導く『需給マネジメントシステム』」に続く

世界で戦う準備はあるか
淺田 克暢 氏
淺田 克暢 氏
キヤノンITソリューションズ株式会社 R&D センター 数理技術部 コンサルティングプロフェッショナル 「需要予測による在庫管理」の普及を目指し、需給計画システム導入のコンサルティング業務に従事。 中小企業診断士、流通科学大学非常勤講師(2003~2006年)。 著書に「在庫管理のための需要予測入門」(共著)東洋経済新報社 「なぜあなたの会社はIT で儲からないのか」(共著)同友館。