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コラム

需要予測編

第4回 『これだけは検討しておきたい「需要予測システム導入時の検討ポイント」』

需要予測編

情報システム導入時の検討ポイントは、様々な書籍などで紹介されています。需要予測システムの導入においても基本的には変わりませんが、需要予測システムならではのポイントも存在します。前回まで詳しくお話してきた『需給マネジメントシステム』の検討が最も重要であることは言うまでもありませんが、今回はそれ以外のポイントをいくつか紹介しましょう。

需要予測の目的は?

どのような情報システムでも導入の目的を明確にすることは重要です。では、需要予測システム導入の目的は何でしょうか?
「予測精度向上に決まっている」と思われた方は要注意です。確かに導入により予測精度は向上するかも知れませんが、これは最終目的ではないはずです。何のために精度を向上させたいのかを明確にしておくことが大切です。製品在庫の削減、部品在庫の削減、2ヶ月先のパート要員調達、来年度の予算策定など様々な目的があるはずです。目的が何かによって、需要予測のやり方が変わってきます(表1)。

表1 目的別の予測方法

目的別の予測方法

需要予測に必要なデータは?

需要予測システムには予測のインプットとなるデータが必要となります。基本となるデータは需要実績(販売実績や出荷実績など)です。予測モデルの多くは過去の需要実績をモデル化して未来に延長していく方式のため、需要実績がないと予測ができません。では、どのくらいの期間の需要実績が必要でしょうか? 
短すぎるとノイズ(たまたま発生した異常なデータ)の影響を受けやすくなりますし、長すぎると需要の特性が変わってしまいます。対象製品の特性によって適切な期間を設定することが必要となります。また、導入決定時点で必要な期間の需要実績が蓄積されていない場合は、すぐに蓄積に着手しなければなりません。
需要は様々な事象(外部要因)の影響を受けて増減します。たいていの商品は値引きなどの販促を実施すれば需要が増加します。ビールは暑いとよく売れます。住宅の販売は景気の影響を受けるでしょう。このような場合には、外部要因に関するデータもシステムに取り込んで予測のインプットとすれば精度が向上すると考えられます。しかし、影響があるからといって全ての外部要因データを取り込むべきではありません。
例えば、スーパーでの特売はお菓子の需要に影響を与えますが、全国のお店一軒一軒での特売情報を収集してシステムにインプットするのは大変な労力が必要となります。これによって得られる精度改善が数%であれば、無視する方が得策かもしれません。

どんな単位で予測すべきか?

ある商品の需要を予測する場合に、どの単位(全国合計、地域別、営業所別、得意先別など)で予測すればよいでしょうか? 前回ご紹介したお財布マネジメントを例に考えてみましょう。
 1週間に使うお金を予測するためには、過去にどれだけお金を使ったか(需要実績)を分析する必要があります。このとき次の3つの予測方法を考えてみます。

  1. 合計金額で予測
  2. 使途別(食費、交際費、交通費、服飾費など)に予測して合計
  3. 購入商品別(米、豆腐、ビール......)に予測して合計

情報量としては「3.購入商品別」が最も多いのですが、めったに買わない商品も数多く存在し、かえって予測精度を損なう可能性があります。また、予測の手間もかかります。一方「1.合計金額」では、様々な要素が重なりあっているため、トレンドや規則性を見出すことが難しくなります。
例えば、先週たまたまスーツを購入して週の使用量が増えたからといって、今週も大金が必要ということにはなりません。このように、どの単位で予測するかは予測精度や手間に大きく影響するため、対象商品の需要特性に合わせて適切に設定する必要があります。

すべての商品を対象にするべきか?

需要予測システムを導入したいというお客様に「予測の対象製品は?」と質問すると、「もちろん全商品です」という答えが返ってくることがしばしばあります。せっかくお金をかけてシステムを導入するのですから、できるだけ多くの商品を予測したいと思われるのは当然かも知れません。しかし、中にはどんなにがんばっても一定の精度が得られない商品や、そもそも予測が必要のない商品も存在するのです。
商品の特性や予測精度を基準に予測対象を絞り込んだ例を表2に示しています。例えば単価が低くて多少在庫を抱えても問題ないような商品は需要予測は行わずに固定発注点管理のような単純な在庫管理でも全く問題ありません。また、予測精度が極端に低い商品は自動予測を行わず営業担当者に予測してもらう方が良い結果が得られるでしょう。しかし、重要性の低い商品は受注生産に切り替えることも検討する必要があります。
このように考えると、必ずしも全ての商品に対してモデル予測を行う必要はないことがおわかりいただけると思います。

表2 需要予測対象商品絞り込みの例

需要予測対象商品絞り込みの例

需要予測パッケージの選び方

需要予測システムの要件が決まれば、どのようにシステムを実現するかの検討に入ります。ハンドメイドでシステムを開発することも可能ですが、高度な数学モデルを活用した予測プログラムを一から作るのは効率的ではありません。需要予測パッケージを活用するのも選択肢の一つだと思います。需要予測パッケージ選定時のポイントを2つだけ挙げておきましょう。

1.パッケージを選ばず、ベンダーを選ぶ

ほとんどの需要予測パッケージは、機能に大差がありません。いくらよいソフトでも実際に導入を行うベンダーによって成否が分かれることも珍しくありません。需要予測や関連業務についての知識や経験が豊富なベンダーを選ぶことをお勧めします。

2.予測モデルだけで選ばない

導入検討中のお客様のパッケージ選定評価項目を見せていただくことがあるのですが、「予測モデル数」「予測精度」などの項目が挙がっていることがよくあります。もちろん「需要予測システム」ですので、どんな予測モデルが搭載されているか、どの程度の精度が出るのかが重要なポイントであることには違いありません。
しかし、予測モデルが沢山あっても実際に使用するものはごく一部だったり、精度を比較しても微妙な違い(誤差の範囲)しかなかったりすることも多いものです。需給マネジメントシステムをサポートする機能があるか、使い勝手はどうか、要件や環境の変化に対応できるか、など総合的に判断することが必要です。


需要予測システム導入の目的で最も多いのは在庫削減(在庫適正化)です。次回は、需要予測を活用した在庫管理についてお話したいと思います。

第5回コラム「在庫削減に効く『需要予測による在庫管理』」に続く

世界で戦う準備はあるか
淺田 克暢 氏
淺田 克暢 氏
キヤノンITソリューションズ株式会社 R&D センター 数理技術部 コンサルティングプロフェッショナル 「需要予測による在庫管理」の普及を目指し、需給計画システム導入のコンサルティング業務に従事。 中小企業診断士、流通科学大学非常勤講師(2003~2006年)。 著書に「在庫管理のための需要予測入門」(共著)東洋経済新報社 「なぜあなたの会社はIT で儲からないのか」(共著)同友館。