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環境経営編

第2回 『RoHS指令とREACH規則、何が違うの?』 (製品含有化学物質規制対応への課題)

環境経営編

皆様こんにちは、沖電気工業(OKI)の緒形です。
前回は、製品含有化学物質規制の概要と目前に迫っている企業の対応についてご紹介しました。本稿では、複雑化する規制の内容と対応への課題について、RoHS指令とREACH規則の比較を中心にご紹介をさせていただきます。

有害物質管理から未然予防へ

過去に、職場の宴席で、ある先輩から、「ISO14001とISO9001って5000違うと何が違うの?」と数字の差の根拠を聞かれて答えに困った経験があります。また、ある先輩からは、「CSRってコンプライアンスのことでしょ?」と問われ、これも、ほろ酔い状態の先輩にご理解いただくのに、こちらの酔いが覚めてしまったことを思い出します。
このように、業務の関係者以外の間では、大雑把なイメージで理解している言葉が企業内を流れていることが多いと思います。RoHS指令とREACH規則についても、同様に、その違いを短い言葉で表現するのは難しいと思います。個人的には、「ハザード対応」と「リスク管理」という表現が基本的な概念だと考えます。ご存知のとおり、ハザードは、顕在している有害物質を管理することを意味しています。RoHS指令は、6物質を対象に規定の濃度以上の混入を禁止する法令で、ハザード対応と言えます。一方、リスク管理は、未然予防を意味しています。REACH規則は、輸入される化学物質の登録を義務付け、有害性を評価した結果から、その物質を認可したり制限を加えます。これは、リスク管理視点の法令と考えられます。
したがって、有害性が疑わしき化学物質まで管理対象となるため、膨大な種類の化学物質に法令対応が必要になっています。

白黒がハッキリしている含有規制のRoHS指令

多くの皆様がご存知だと思いますが、RoHS指令は、電機電子機器を構成する均一質材料中に含まれる6物質を規定以上の濃度で含有することを禁じています。具体的な規制濃度は、鉛、水銀、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)は、1000ppm、カドミウムは、100ppmとなっています。
対象の6物質の内、金属物質については、蛍光エックス線や簡易分析により、社内工程で確認することが可能です。また、欧州連合以外でもこの6物質を対象として法制化が進んでおり、企業としても管理を共通化することができ、適用除外など規制内容も整備されており、適合性を評価することが明確でシステム化にも適していると考えられます。 

含有量の情報管理(登録/届出)が必要なREACH規則

さて、一方のREACH規則ですが、前述のようにリスク管理視点の法令であることから、含有を禁止するものではなく、総量を管理し届出を要求しています。言い換えれば、含有しても良いということになり、管理を複雑化させる要因のひとつになります。セットメーカの対応が必要となる「使用量が多く有害性が懸念される化学物質」すなわち"高懸念物質(SVHC:Substances of Very High Concerns)"は、当初15物質が指定されましたが、現在は38物質まで短時間に拡大され、その候補物質は、約1500物質がリストアップされています。また、簡易確認が可能なRoHS指令対象物質とは異なり、確認が困難で専門的な分析が必要となり、かつ、対象物質が拡大することにより、企業内で網羅的に検証することは現実的ではないと言えます。
REACH規則では、「サプライチェーン上の情報伝達」と、「輸入した企業の化学品庁への届出」、「消費者からの情報開示要求にも45日以内に回答する」義務を課しています。その届出要件は、「SVHC38物質が0.1質量%以上含有した製品について、欧州連合域内への年間輸入量が1トン(SVHCの量)を超える場合、事前に届出が必要になる」、というものです。
このため、自社が製品を直接欧州に輸出していなくても、部品として組み込まれている最終製品が何らかの形で輸出される場合、納品先からSVHCの含有量の報告を求められる、場合によっては、取引にも影響してくるといったことが、今、現実に起こり始めています。そして、対象となる年間数量の初回届出期限が2011年6月に迫っていることも加味すれば、今後、この流れは急加速していくことが考えられます。

新規制のREACH規制では、RoHS指令と比較しさらに高度な管理が必要

サプライチェーン全体を管理対象としたREACH運用の概要

複雑化する規制対応への課題

このように、膨大な化学物質と製品含有情報を管理し、その出荷量と報告の体制を管理・維持するためには、多くの課題が生じています。

1.複数のフォーマットによるサプライヤへの調査
2.頻繁な法令改正(対象物質の追加など)による調査工数の増加
3.出荷単位における製品/梱包材の構成管理
4.自社加工品の含有化学物質量管理
5.輸出先ごとの数量予測/実績管理
6.サプライチェーン上の顧客要求への対応
7.その他(方針/運用管理基準/管理体制の構築など)

これらの課題に対応するため、OKIグループでは本社主導による運用管理基準と管理体制を構築し、その要件に基づいた社内情報システムを開発し運用しています。概要としては、社内の業務である化学物質情報収集、設計評価、製品情報管理/報告の3つのプロセスに対するREACH規則への対応業務要件を定義し、具体な運用をシステム化しています。
また、電機電子を含む製造業を中心とした取組みでは、サプライヤへの調査の効率化を目的としたポータルサイトを構築し、インターネット上での情報交換を開始しました。この取組みへの対応もシステム導入への重要な機能要件になると推測されます。
次回は、これらに対応する情報システムの概要とOKIグループの運用ノウハウに基づく特徴的な機能をご紹介致します。

業務概要

第3回コラム「含有化学物質情報を「見える化」するためには?」に続く

世界で戦う準備はあるか
緒形 博 氏
緒形 博 氏
OKI(沖電気工業株式会社)
CSR部 地球環境室 室長
OKI(沖電気工業株式会社)では、化学分析技術を基礎に環境関連施設の運用管理、機器設計、生産拠点の構築、国内外拠点への技術支援と多岐に亘る業務を経験。現在、OKIグループ統合環境マネジメントシステムの統括管理責任者に加え、製品含有化学物質管理に関する運用ルールの構築や情報システム開発/運用責任者を担務。