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原価管理導入編

第6回『原価管理の導入 その3 その他のトピック』

原価管理導入編

原価計算の教科書通りではうまくいかない...?

前回、前々回と、原価管理導入時のポイントをお話してきました。教科書的な話は、そちらに譲り、このコラムでは実際に原価管理の導入時に迷いそうなところや、教科書通りに行うと手間になるところなどを中心に取り上げています。

そもそも原価計算の教科書には、製品も材料も3つぐらいしか出てきませんし、工程も2つだったりします。実際には、製品も材料もごく普通に1,000を超えているはずです。これだけ大量のデータを処理するには、教科書から一歩踏み込んで一工夫必要になります。 今回は、これまでにお話できなかった仕掛や段取り替えなどについて触れます。

仕掛品の加工進捗度は50%で

製品1個当たりの原価の計算の仕方を覚えているでしょうか。材料費、労務費、経費を全部足して完成した製品の数で割るのでした。月末に製品が完成していなかったら、仕掛品として翌月に繰り越します。仕掛という言葉は、製造の現場だけではなく経理でも使います。

さて、受注生産・コンピュータソフト・工事などのようにプロジェクト別に原価を管理する場合、つまり個別原価計算の場合、仕掛品は何もせず合計金額をそのまま帳簿にあげてしまって構いません。明らかに失敗作が混じっているのであれば別ですが。大量生産をしていて総合原価計算をしている会社の場合、加工進捗度が問題になります。 かかった労務費を、加工進捗度をもとにした完成品換算量で評価する、ということをします。加工進捗度を出すのが面倒な場合は、一律50%としてしまうのも手です。工程の途中で材料を追加で加えるような場合は、その前後で工程を分けて管理すると計算が楽になります。

有償支給で買い上げた部品の単価は、購入単価とは違う

部品を無償支給して加工してもらった場合、戻ってきた部品の単価には外注加工費をそのまま足すだけでOKです。ところが、有償支給の場合は異なります。有償支給した時、在庫単価に伝票代などの名目で利益を乗せて支給していると思いますが、買い上げた部品が帰ってきたときの在庫単価は購入単価から乗せた利益を差し引く必要があります。


たとえば、8,500円の部品を9,000円で支給し10,000円で買いあげたとしましょう。買い上げた部品の在庫金額は10,000円ではなく、9,500円になります。9,000円-8,500円の500円(材料交付差益といいます)を引いた金額になるのです。有償支給すると売上が増えたように見えるので決算書の見栄えがいいのですが、その代わりに社内の手間が増えます。

仕損品の原価はどうするか

仕損品の原価だけを計算するということは、まずありません。製品の原価を計算するときに一緒に計算します。製品なりプロジェクトなりに、かかった原価を積み上げていき、完成した製品量で割ると製品1個の原価が出ます。この時に、完成量に仕損品を含める場合と含めない場合の2つの選択肢があります(前々回お話ししました)。仕損品を含めない量で割れば仕損で失敗した費用も製品の原価に加算されることになります。


一方、仕損品を含めた量で割ると、製品の原価に仕損品の原価が加算されないので、仕損品の原価が別に計算されることになります。手直しをして良品に直したりしない限り、完成量に仕損品を含めない方が、管理が楽になります。

段取り替えの労務費は、次に作る製品に乗せる

段取り替えには、工程の人が行うにせよ、専門の技術者が行うにせよ、何らかの作業が発生します。この労務費の扱いはどうしたらよいのでしょうか。多品種少量生産で日に何回も段取り替えがあるような場合、段取り替えの費用だけでバカにならない金額になります。
直前に作った製品の後片付けと、次に作る製品の準備と、それぞれにかかった時間を記録すればいいのですが、難しいときは段取り替えの総時間だけ記録して、次の製品の原価にしてしまうという方法があります。床屋さんなどのように準備より後片付けの方が大変なら前の製品に乗せた方が良いでしょう。もちろん、後でカイゼンができなくなるので、正味の加工時間とは別に記録しておきます。

販売促進や試作で使った物は、きちんと在庫から減らす

営業マンがサンプルとして得意先にあげるとか、試作に使うので技術者が材料をつかったりとか、製品を売ったり作ったりする目的以外で使った場合も、かならず記録して帳簿と在庫を合わせておきます。月一回の棚卸の時になれば、どれだけ減っているかは分かるのですが、使った時点で記録するようにします。理由は、

  • 在庫金額が正しく計算されなくなる。
  • 帳簿と在庫があっていれば、材料発注時に数を間違えて余計に買わなくて済む。

というものです。
特に在庫金額については重要で、評価方法を月次総平均などにしてある場合、公認会計士や税理士の先生から「正しく経理処理してください」と指摘を受けることになります。これまで、3回にわたって原価管理導入のポイントについてお話してきました。実際の導入に当たっては、業種・業態や生産管理の仕方によって、アレンジを加えていく訳です。次回からは、コストダウンについてお話していこうと思います。

第7回コラム『コストダウン その1 どこから手を付けるか』に続く

原価管理導入編
中畑 慎博 氏
中畑 慎博 氏
原価の道場 代表 1996年 東京工業大学 大学院 中退。中小企業診断士。株式会社マクニカ、加賀ソルネット株式会社、加賀電子株式会社を経て、2015年4月より独立開業。 会社員時代は、グループ会社60社に対する業務改善、情報システムの企画・構築・運用の支援に従事。 独立後は、生産管理・販売管理・原価計算を中心に、業務改善・見える化の支援を行っている。 http://ka-consul.jimdo.com/