Chinese | English

03-3510-1616 受付時間 9:00〜17:00(土日除く)

お問い合わせ 資料請求

 

  • HOME
  • コラム
  • 第8回『コストダウン その2 損益分岐点』

コラム

原価管理導入編

第8回『コストダウン その2 損益分岐点』

原価管理導入編

コストダウンと費用構造

前回は、コストダウンにどこから手を付けるかというお話をいたしました。このことは業種によっても変わってきます。今回は損益分岐点図を見ながら、効果の高い収益改善の方法の探り方についてお話しいたします。似たような業種の会社でも、費用の構造が違えば、コストダウンで重点的に取り組む点も違ってくるのです。

損益分岐点は黒字と赤字の境目

損益分岐点とは、読んで字のごとし「利益が出るか損失が出るか境目となる売上」のことです。損益分岐点図を描くには、まず決算書からすべての費用を拾って固定費と変動費に分類する必要があります。

固定費:売上が増減しても金額が変わらない費用。正社員の給与、減価償却費、賃借料。
変動費:売上の増減に比例して金額が変わる費用。材料費、外注費、運送費。

固定費だか変動費だかはっきりしないモノ、たとえば電気代のように基本料があったり増え方が直線ではなかったりするときは、とりあえず固定費として分類しておいてください。より厳密に行いたいのであれば、基本料部分を固定費、従量制部分を変動費、とするやり方もあります。

固定費、変動費が分類できたら、次の計算式で損益分岐点が計算できます。

変動費率=変動費/売上金額
損益分岐点=固定費/(1-変動費率)

図を見ると一目瞭然で、横軸の売上に対して、縦軸に売上・固定費・変動費・総費用を取ってグラフを書くと、常に一定の固定費と売上に比例する変動費を足した総費用が、売上に追い抜かれる点が損益分岐点に当たります。

原価管理導入編

損益分岐点図から重点的に着手するところがわかる

損益分岐点がコストダウンとどう関係するのかと考えられた方もいらっしゃるかと思います。それには、典型的な2パターンの損益分岐点図を見ていただくのが速いでしょう。まず、物品販売の図から。物品販売のビジネスは、卸売業・小売業など基本的に仕入れたものを売るのがメインになります。小分けなど物流加工が入る場合もありますが、おおむね大規模な加工は行わないと思います。このようなビジネスの場合、売価に比べて仕入単価は高めになります。また機械設備が少なくて済むため、運用コストがかさみません。そのため、変動費線の傾きは急に(つまり売上線に近く)、固定費線は低い位置に引かれます。売上線と変動費線が近いので、景気の影響などで売上が多少増減しても利益に大きな影響は出にくい体質です。

次は、装置産業の図です。装置産業は、製造業のように大型、高価な機械設備が必要な業種です。製造業以外では、金融機関、ホテル・旅館なども当てはまります。このようなビジネスの場合、仕入れたものをそのまま販売するのではなく、人手や機械を使って付加価値をつけたものを販売するため、売価に比べて仕入は低めになります。また機械設備の減価償却費や運用コストが大きくなります。そのため、変動費線の傾きは緩やかに(つまり売上線から離れて)、固定費線は高い位置に引かれます。売上線と変動費線が離れているので、多少の売上の増減でも利益が急に大きく出たり赤字に転落したりします。

これまで見てきたように、物品販売の場合は変動費を抑えることが、装置産業の場合は固定費を抑えると同時に売上を増やすことが、財務体質の改善にきわめて有効に効いてきます。もちろん、物品販売でも固定費を削減すること、装置産業でも変動費を削減することは並行して進めるべきことです。複数の事業を手掛けている場合や違うカテゴリーの商品・サービスを扱っている場合は、それぞれ別の損益分岐点図を描くようにします。各々の事業・商品ごとに打つべき次の手は異なるはずですから。

原価管理導入編原価管理導入編

収益を改善するには

収益構造を変えるには、大きく3つの方法があります。売上を増やすこと、固定費を減らすこと、変動費を減らすこと、の3つです。

売上は売価×数量で表すことができますから、売上を増やすには売価を上げるか数量を増やす手を打つことになります。売価アップは、得意先との交渉という方法もありますが、一番の手としては商品やサービスの質を上げて高い売価でも納得のいくモノを販売することになります。一方、数量アップには、新しい商品・サービスを開発する、新しい得意先・市場に売り込む、既存の得意先からの注文を増やすという手があります。さらに既存の得意先からの注文を増やす方法として、買ってもらう回数を増やしたり、一回に買ってもらう商品・サービスの点数を増やしたり、という形に分解できますので、それぞれについて対策を打っていくことになります。

固定費の削減は、「多能工化」「変動費化」が中心になります。工程や店舗の従業員が、いろいろな業務に対応できれば、人員構成を見直すことができます。総務経理など間接部門の業務なら、多能工化して間接費を抑えられます。変動費化では、パートさんを活用したり、レンタル設備に切り替えたり、業務を外注したりという対策を行います。動費は、相見積をとって仕入単価を交渉することによって下げることができます。そもそも同じ品質なら、別メーカーのモノを検討することも可能です。作業のやり方を見直すことで、不良品を減らしたり(飲食店ならオーダーミス)作業時間を減らしたりすることで原価を抑えることも可能です。

次回は、設計段階から原価を作りこむ原価企画についてお話しします。

第9回コラム『コストダウン その3 原価企画』に続く

原価管理導入編
中畑 慎博 氏
中畑 慎博 氏
原価の道場 代表 1996年 東京工業大学 大学院 中退。中小企業診断士。株式会社マクニカ、加賀ソルネット株式会社、加賀電子株式会社を経て、2015年4月より独立開業。 会社員時代は、グループ会社60社に対する業務改善、情報システムの企画・構築・運用の支援に従事。 独立後は、生産管理・販売管理・原価計算を中心に、業務改善・見える化の支援を行っている。 http://ka-consul.jimdo.com/