Chinese | English

03-3510-1616 受付時間 9:00〜17:00(土日除く)

お問い合わせ 資料請求

 

  • HOME
  • コラム
  • 第1回『チップをくれる人は良い人?』

コラム

グローバル・オペレーションの基本編

第1回『チップをくれる人は良い人?』

グローバル・オペレーションの基本編

今回からグローバル視点で現場密着型の実践コンサルティングで定評のある株式会社ジェムコ日本経営のコンサルタントの方に様々なトピックでコラムを執筆していただくことになりました。
様々な国で、腕をまくりながら製造現場で改善改革を実行している現場で、見てきたことをベースに、グローバルオペレーションを巧みに行うちょっとしたコツや秘訣等を紹介いたします。堅苦しい内容ではなく、気軽に読めるコラムです。是非ご一読ください。


最近、各社の海外進出が加速し、海外に支援に行く機会も増えている。各国でお国事情も異なり、それぞれの国で文化や風土、宗教は異なり、これを理解せずに行動や発言をすると、「非常識」人間の扱いを受けることになる。
タイで飲み屋に行った時の話しである。付いてくれた女の子にチップを渡すことは、ある意味では常識であるが、チップをくれる人とくれない人がいると話しになった。そこのママさんの話しでは、「チップをくれる人は良い人」だと言う。チップは無いよりある方がうれしいことに違いはないので、これは当然の話しであると思ったが、単純にそういう意味だけではないようだ。解説は以下の通りである。すなわち、「チップをくれる人は慈悲の心がある人であり、だから良い人」なのだという。まさか、飲み屋に来て、慈悲の心云々の話しを聞くとは思いもよらなかったが、仏教国のタイであれば、ある意味、当然の解釈なのかもしれない。
タイで、ローカルの皆さんと食事に行くと、一番偉い人がお金を支払うのが常識である。誰もが当然のことと思っている。日本のような割り勘という考え方は無い。その場でご馳走様という言葉はあっても、日本のように、翌日になって、昨日は有難うございましたというようなこともない。これは、タイでの上下関係は絶対的なものになっている表れでもある。

img_global_new_01.jpgタイの古来のご飯の炊き方(タイのかまど)

会社では、社長が一番偉く、社長の言うことは絶対であり、皆、素直に社長の指示に従うことが多い。目上の人を尊敬するという教えは、日本ではほとんど無くなってきているきらいもあるが、タイでは生きている。微笑みの国と言われるタイでは、お客様に対しても、目上の人に対しても、この教えが徹底されていることから、初めて訪問した人は、誰もが良い国だと感じる。

しかし、この側面だけを見てオペレーションをしていると、とんでもないことになるということがある。タイの人も、誰もが感情を持っている。おもしろくなくても、表面ではにこやかに「チャイカップ(はい)」と答えているが、内心はそうでもないということが多い。

img_global_new_02.jpg(左)タイの地方には、地の神様を祀った神殿のようなものがある
(右)タイの地方では、このような民芸品が
家庭でも製作されている

 

ニューイヤーパーティ等で酒が入ると、あれほど従順だった人物が、日ごろの不満をぶちまけたり、喧嘩がおこることもある。これは、日頃抑えていた不満の表れということである。やはり、目上の人を尊敬して従うという教えが徹底されている国でも、本音を聞き出し、それを踏まえて対応しなければ、オペレーションはうまくいかないということである。
このような事情もふくめて、出向前の教育では、いかに現地のローカルメンバーに理解してもらい実行してもらうかが極めて重要であり、そのベースは徹底してコミュニケーションをとることであるという話しは、どの企業でもしている。しかし、言うは易し行うは難し。意外にそれができていない現場が多い。いつのまにか、自分は社長として(製造責任者として)きており、偉いのだという感覚ばかりが中心となっているように見える。
私は、いつも、海外拠点の支援で訪問した時は、昼食は従業員の食堂でとることにしているが、中国のある拠点では、そちらではなく、こちらへと、特別食堂に案内されたことがある。どうも日本人は、いつもこの特別食堂で食事をしているようである。昼食は従業員の楽しみの時間であり、この時は、従業員と色々と現場での仕事のことを聞ける絶好の機会であるが、このような特別食堂があるような拠点では、大抵、コミュニケーションはとれていない。
その国の文化・風土・歴史・宗教を理解することで、現地のローカルメンバーの言動の背景を理解し、「チャイカップ(はい)」と言ってくれているから、それでよしとせず、ローカルメンバーとコミュニケーションをとることで、現地に根ざしたオペレーションを心がけることが大切ということである。

img_global_new_03.jpg(左)タイの暁の寺(ワット・アルン)
(右)タイの地方には、大きな瓶に雨水をためて飲用に使用

グローバルで、うまくオペレーションをするポイントは、「日本人の現地化」に尽きる。つまり、これまでの、考え、やり方を変えることがまず前提となる。タイであれば、チップを上げる人はなぜ良い人なのか、常に慈悲の心を持ち、それを踏まえて、日頃からのコミュニケーション・言動をすると共感がえられ、従業員が納得してくれ、結果、ストライキ等に見舞われることもなく、オペレーションもできるということである。自ら、変わる事で、現地生産や市場が見えてくる。Change is チャンス!の時代だ。
(工場管理(日刊工業新聞社)2012.5月号Change is チャンス!『改善改革仕掛け人風雲記』 より)

第2回コラム『「没問題! No Problem!」大丈夫!?』に続く

漫画_世界で闘う準備はあるか
高橋 功吉 氏
高橋 功吉 氏
ジェムコ日本経営 取締役 グローバル事業担当 大手家電メーカーにて、海外経営責任者などの要職を歴任後、ジェムコ日本経営に入社。2007年執行役員、2011年6月より取締役。上場企業経営トップおよびボードメンバーへの顧問型経営支援をはじめ、グローバル戦略の構築から、製造現場の現場力向上、品質革新など、経営全般にわたり幅広く活躍している。実践に裏打ちされた「わかりやすい」コンサルティングが身上。
株式会社ジェムコ日本経営